『日本一社員が辞めない会社』

さる2月27日ヒューマンキャピタル研究所主催の、公開講演会を開催致しました。
講師には、株式会社リハプライムの代表取締役小池修氏に登壇頂きました。
小池社長は2010年偶然ご両親が共に病に倒れ、特にお父さんが要看護の状況となりました。

これをきっかけにご自身で一念発起、従来の介護とは違うデイサービスのコンセプトのもと大宮で事業をスタートされました。出版した「日本一社員が辞めない会社」ぱる出版が話題となり、介護業界だけでなく各界の経営者からもその理念経営が注目されています。大変お忙しい中当社の公開講演会で、社員が辞めない理念経営の神髄を熱くお話し頂きました。当日の要約レポートをお届け致します。

株式会社リハプライム 代表取締役 小池修氏

■ 講 演

【会社設立】

スポーツクラブの役員として充実して仕事をしていた2010年、大宮に夫婦で住む両親が同時期に病に倒れ、特に父親の方は介護が必要になってしまいました。
やむを得ず会社を休みながら、大宮界隈の介護施設を徹底的に調べて回りました。
当初仕事していた元気なスポーツジムと違って、介護は福祉の仕事なので、
優しい天使のような施設サービスだと思い見学に行くんです。でも、びっくりな光景を目にしました。それは、利用者さんであるお爺さんを、「XXXちゃん」なんて呼び方をする所や、入浴準備でお爺さんお婆さんを一列に裸のまま並ばせる所、認知症の方を「ニンちゃん」なんて呼んでいる所。私の父は大変厳格な人間で、私にとって家では怖くて、尊敬する存在でした。そんな父を見学した酷い介護施設には預けることは出来ない。
でも、見当たらないんです。もう最後の方は私、どの施設もどこが悪いのかっていう視点でしか見てないから、ドア開けた瞬間に「ああ、ここ挨拶ないな」とか、見るもの見るものすべて駄目に見えてきて、もう自分でやるしかないって起業したのが、1店舗目の歩行訓練のデイサービスでした。
 私が絶対外さないって決めていること。それは、介護の仕事をするんじゃなくて誇りビジネスをするんだということ。自分の親をちゃんと親として扱うところ。素人の私がプロの介護事業者と戦うことなんてありえない、うまくいかないんじゃないかっていう恐怖はすごくあった。だけど、うちの理念であるお年寄りを介助して護る介護じゃなくて、人生の大先輩を敬って護る「敬護」サービス。この「敬護」サービスを通して、日本をちょっとでも良くしていきたいという話を社員たちとしているうちに、だんだん勇気が十倍百倍になってきたんです。我々は他社と比べるんじゃなくて、敬って護る「敬護」サービスを日本中に広めていく唯一の会社になろうよ、というのが理念になっていきました。

【新人からの一言に愕然となる】

ただ、ここだけ聞くと上手くいってるんじゃないですかって思われますが、全然そんなことはありません。
2011年から事業を始めてその2年後、ちょうど1店舗目がそこそこ上手くいって新入社員を採ろうっていうことで2013年の春にひとりだけ新入社員を採用しました。従業員満足度調査っていうのを毎年やっていたんです。

それまで4、5人しかいなかったときはみんな良いことしか書かなかったんですけど、2013年の秋にこの新入社員に「こんなブラックな会社では働けません」って書かれたんです、突然。
ホスピタリティを中心に売ってきた私に。「今の状態で私はこの会社で働くことがとても不安です。現在私がこの会社に抱いているものは簡潔に述べるならば不信、そう言う言葉が適切です」っていうようなこと。

で、勇気を振り絞ってその新入社員を呼んで聞いてみました。これって何?と。
最初に言われたのは、「この会社は有給取れません。みんな苦しんでます。この間〇〇さんは有給取れなくて欠勤って言ってました。
求人にはいいこと書いてありました。敬護だなんだって書いてあったけど、結局お休みも取らせない会社ってどうなんです?」もう辞める気だから好き放題なんです。

トップとして本当に悩みましたが、ギリギリの人数でやってるのでその子に辞められると本当に困る。
今回は会社潰れるかもしれない、この子の言うことをとりあえず受けよう。有給をなんとか取れる仕組みを作ろうと、本気で取り組みました。
結果、この2店舗目を設立するタイミングでの仕組み改革をきっかけに、2014年には、社員からも満足をしてもらえる会社に向けて舵を切ることができました。

【どこに向かう会社なのか】

今、会社のトップとして私が一番大切にしていることがあります。
「敬護」という理念を具体的に進める目的で、徹底的に社員と会話しています。社長として今私の一番の仕事は、リーダーを中心に極力会話する時間を取ることです。社員数は200名を超えましたが、全体会議の場でもじっくり「敬護」が浸透しているか、具体的にできているかを全員に伝えます。

私の原点は、自分の親に真剣にリハビリしてもらい、健康でいてもらうための施設運営です。
自分の親と親の世代への恩返しができるよう、自分が亡くなった後も自分のパートナーと自分の息子娘たちが幸せに過ごしている、そんな絵面をイメージできれば、この敬護ってすごく意味があるよねっていうことを、しつこく、しつこく社員と話をしています。
この会社がこういう風に変わるとハッピーじゃない?そのために今みんなの仕事があるよねっていうこと、会社の価値観と社員の価値観をくっつける作業を、めちゃめちゃしつこくやるようにしています。

社内では、当社はひまわり型経営と呼んでいます。
ひまわりって大きさも形も全部違って、太陽の方を見ているっていうことだけが統一されている。その太陽はもちろん社長じゃなくて理念です。要するにこの理想に向けてやっているから、やり方は千差万別でいいので自己判断していきましょうと。
一から十まで社長とか部長が細かく説明するんじゃなくて、ここにいくための手段は何万通りもあるから、ひとりひとりが自分の価値観の中で作っていきましょうっていうことです。

理念は、現場で起こるすべてのことの判断基準かつ今後起こることへの行動の規範だって常に私は言っています。この物差しがなかったら、ひとつひとつマニュアルに則って仕事をしなくてはいけなくなる、それではつまらない。

【リーダーとしての伝え方】

私が社員と話す時に大切にしている価値観があります。それは他人と自分は絶望的に違うということです。
例えば、自分が部下だったら絶対上司にこんなこと言わないし、こういう約束をしたら絶対にやる、って思うことを全然やらない部下っているんです。そこで以前の私ならイライラしてましたが、今は全然イライラしません。この人の理解の仕方は自分とは違うとわかっているので、どう伝えるかを工夫します。結果、自分を成長させる方向にもっていけました。
10年近く会社やってますけど、私が怒鳴ったり怒ったりって、社員は一人も見ていないはずです。もちろん感情はあるから、怒りもわきます。ただ、そもそも相手と自分とは絶望的に違うもんね、っていう考え方をすると自分を抑えられるんです。無理なく自分を抑えられると、行動量が減らない。不安になったり相手に対して怒りがあったりすると行動量が減ります。仕事へのプラスにはなりません。

「部下はなんでこんなことができないのか?」と自分がイライラしはじめたら、そこからは、部下ではなく、自分自身の成長のチャンスです。部下と自分が見ているものが違うから指示が伝わっていない。
ですから、指示を伝えるスキルが足りないのは自分。そこに気が付くと、そもそも部下は皆ダイヤの原石、自分がちょっと伝え方が下手だった、じゃあどうやって伝えようかなって考えることにしました。

では、具体例でお話します。
上司が「これやっといて」っていうのに対しての部下の「わかりました」っていうのは全く繋がってなかったりするわけです。「隣のスーパーで白いクレヨン買ってきて」「わかりました!」と言って、いつまでたっても買ってこない。
この「わかった」っていう部下の返事って、これほどいい加減なものはありません。「あなたの言っていることはわかりました」っていうだけであって、実は自分がやるというイメージが出来ていないことが多いということがいろんな研究で明らかになっています。

そこで、確実に部下に伝わる魔法の言葉があります。それは、「これ、お願い」に続けて言う、「できる?」です。
ただこの3文字です。これ是非やってみてください。
私は、はじめて試してみたとき衝撃を受けました。私が仕事を頼んで、部下が「わかりました」と即座に返事したのに、私が続けて「できる?」と聞いたら、「はい?えーと、もう一度いいですか?」って聞き返されたんです。
最初、やる気なかったの?っていう衝撃です。「できる?」って聞くだけで相手の理解度がめちゃくちゃ上がるので、これはお勧めのスキルなんです。

あと、自分が説明したことを「どう理解したの?」と部下の理解したことを説明させる。
説明できなかったら理解するまで話ができるっていうのは大きなポイントです。
逆に、今度は自分が部下の言っていることを理解できていない可能性もあるから、「この理解で合ってる?」って確認すると具体的な行動がとりやすい。
「(今の)できる?」「(これで)合ってる?」という質問は、相手と自分が絶望的に違うと分かれば分かるほど必要なスキルだったんです。

それもこれも、いろんな意味で相手に関心をもっていないとできない。相手の信頼感を勝ちとるには、様々なタイプの社員がいる事を理解して、全員に関心を持ち徹底的にコミュニケーションを取ることが必要だとわかりました。

【ゴールを明確にして支援する】

最後のお話は、部下を「支援」するスタンス。
これはシンプルなんですけど、中国などの故事成語で有名な「こどもを一日生き長らえさそうとすれば魚を捕ってあげろ、一生生き長らえさそうとすれば魚の釣り方を教えろ」とありますけど、確かに魚の釣り方を教えてあげたほうが自分でできるようになるから会社の仕事としてもいいなって思います。

しかし、魚の釣り方を教えるのでもなくて、その目的と手段を教えた方が更にいいのかなと最近はずっと思っています。
どういうことかというと、無人島でお父さんと子供がいて、子供に魚の釣り方を教えてあげようって思っても子供はやる気がない。
なぜなら子供は魚なんて食べたいと思ってないから。お父さんが一生懸命教えてくれるから、何のためにやってるんだろうって思いながら言われるままやっている。これが会社の中で起こってるんじゃないかと。

部下の「何のためにこれやってるんですか、意味あるんですか」というような雰囲気は、結局目的を教えていないから、言われるままやるしかないということ。お父さんが子供に、これはお前が食べていくためにやっているんだよって先に話していれば、「だったら魚じゃなくてヤシの実をとりたいから木の登り方を教えて」っていう発案があるかもしれない。
目的をしっかり教えて、その目的だったらこんな手段もある、あんな手段もあるという部下の発案を取り上げながら進めていけます。

目標設定の前に目的設定。手段はいくらでもある。だから理念や目的が最初に明確にあると、そこに向けて、手段としていろんな目標の設定がしやすくなっていく。だから「これとこれをやっておいてね」ではなくて「こういう理由があるから、この目的や理念のために、このゴールのために、これをやっていきましょう」っていうような流れで目標を設定するようにしています。

理念やゴールを明確にしないと自立自走の社員は現れない。ゴールも明確にしていないのに、「お前言われたことしかやらないな」と部下に言っていた創業当時の自分が恥ずかしいです。
言われたことしかやれないのは、ゴールが明確でなくて、やることだけ指示されていたから。言われたこと以外やったら怒られる。
ゴールがわからないから、本当の意味でやっていることがうまくいっているのかどうかも分からない。
だから言われたことしかやらないのは当たり前です。

そして、そのゴールに向かって、リーダーが本気で模範を示し、体現していくっていうこともすごく重要です。
さらに、チームを作っていくから、基本的にはチームの言葉が伝わる土壌がないといけない。あなたに言われたくないよっていうのは困る。それにはしっかりと社員の味方になるとか、リーダーが一貫性を持って動いているっていうのがすごく重要で、それが信頼を創ります。

そして、部下にやりがいを持たせるには、部下の主体性と挑戦を引き出すこと(手段を考えさせること)が大切で、リーダーが遠回りでも、その主体性と挑戦を引き出す支援をするということを意識してチームを創っています。

ゼロから始めて、社員にブラック企業だとか言われながらも、起業して9年が経ちました。なんとか今は社員も定着して毎年毎年売り上げも堅調に上がっていく状態になっています。今日は、今私が信じていることを率直にお伝えいたしました。ご清聴ありがとうございました。


2020年6月1日

人材開発・育成経営戦略に関連する記事