稼ぐビジネスから、成長する仕事道へ 〜中島流“仕事道稼ぐビジネスから、成長する仕事道へ 〜中島流“仕事道の極意”次なる時代に通用するリーダーづくり〜

株式会社クォーターバック 代表取締役 中島 セイジ氏

 さる9月3日開催しました勉強会では、株式会社クォーターバックの中島セイジ社長を講師に招き「稼ぐビジネスから、成長する仕事道へ」とのタイトルで講演頂きました。中島氏は、アチーブメント出版より『儲けないがいい』(2009年12月)を出版、企業を独特の視点で指導する、マーケティングや広告戦略の会社を率いていらっしゃいます。ラジオのパーソナリティもされており、番組は毎週日曜朝6時から(インターFM76.1MHz)、『ビジネスラボ』というタイトルで、今注目される経営者をゲストに招き、対談するといった内容です。
 勉強会当日は、ラジオの語り口のような、ユーモア溢れる軽妙なトークで、参加の皆様も楽しく、和やかに聞いて頂きました。当日の抜粋をレポート致します。

■ 講 演

【はじめに】

 いいでしょ、私とそっくりなこの人形。(※中島氏の前に座っている人形を指して)セイジ君って言うんです。結構お金かかってます。以前こちらでも講演されたとお聞きしましたホスピタルクラウンの大棟耕介さんの会社で作ってもらいました。もちろん世界で1体だけです。セイジ君は、実は結構活躍してくれます。先日、経営者を募ってロンドンに視察旅行に行った際も、連れて行きました。僕が一人で海外に行っても、通りすがりのお姉さんは声を掛けてくれないけど(笑)、セイジ君と一緒だと声掛けてくれるし、写真まで撮ってくれる。勉強になるだけではなく、思い出も残るんですね。みなさんにもお薦めします。(笑)
 もう一人、ヒューマンさんの講師繋がりで言いますと日本理化学工業の大山会長さんとも何度かお会いしています。凄くいい会社ですよね。以前お邪魔した際、お茶を入れてくれた60歳ぐらいの事務の女性が、何と知的障害者採用の最初の方だったんです。大山さんが「今の子が45年前、15歳で採用した1期生です」って。45年勤務されたんですね、凄い。

【私の姿勢】

 当社は、丁度先日の9月1日(講演は9月3日に行われました)に創業して32年を迎え、私は計画通り社長を退任しました。32歳の社長を指名し、先日社長披露パーティーを開いたんです。でも、サプライズで私への慰労の画像が、急に会場に流れました。うちの会社はクリエイティブな会社なんで映像や広告とか制作するのは日常茶飯事なんです。私の社長退任、会長就任の為に25、6人の社員全員のメッセージが入った映像です。いやー、目頭が熱くなりました。こういうの嬉しいです。こういう事をやってくれる人が集まったんだって。今更なんですが、自分の会社の仕事に感動しました。いいものです。

 あと、私の会社は飯田橋駅近くの新目白通り沿いにあります。私一人でなんですが、会社から駅周辺まで毎朝30分掃除しています。大体レジ袋2ついっぱいになりますね。基本的に雨が降らない限り10年続けました。残念ながら、続けていても一緒にやってくれる社員はまだ居ないんです。それを交流のある、イエローハット創業者の鍵山さんに言うと「まずは10年続けて1人手伝ってくれたらそれで十分じゃないですか」って言われました。ご存知だと思いますが、鍵山さんは「日本を美しくする会」の相談役です。鍵山さん曰く、「誰でもができることを誰にもできないほど徹底して行い、継続することにより周りの人の心が変わる」。うちの社員の心が変わるのも、もう少しですかね。僕も日本を美しくする会の本部世話人を10年間させてもらってます。

【紹介したい会社】

 経営コンサルもしていますので、ここで今日参加の皆様に見本となるような会社を紹介します。長野県伊那市にある産直市場「グリーンファーム」です。この会社は駅から離れて畑のど真ん中にあるのに10億売り上げる。「道の駅」の様なものを展開している会社。
 東京から近いですが、埼玉種畜牧場のサイボクハム。カンブリア宮殿にも出ました那須塩原のパンの缶詰で有名になったパン・アキモト。先日、ヒューマンの甲野さんも一緒にベンチマークに出かけた、福生の酒造メーカー石川酒造。石川酒造は400年の歴史があり、現在の石川社長は18代目です。あと、日本の耕作放棄地を変えるマッチングビジネスを展開しているマイファーム。将来の地球的規模の食料危機を救うかもしれない、ミドリムシの大量培養に成功したユーグレナ。出雲社長は、子供たちの栄養不足を補う目的で、「マンガドラゴンボール」の「仙豆」を見つけるんだって言ってミドリムシを見い出した。今やジェット燃料にまでなるっていう期待もあります。私は取材や社長インタビュー等でこれらの会社に縁を作ってきましたが、みんな中小企業です。ある意味隙間産業。でも、それぞれの社長の志は高く、「世界を変えてやる」ぐらいの使命感がある。本当に尊敬します。
 要するに、今回の講演のテーマになりますが、社長の高い志を理解した社員は強い。もちろん教育も必要ですが、社長の意をくんで自ら成長している。こんな会社が私は理想だと考えます。給料ではない。

【パラダイムシフト75】

 日本の歴史をずっと見ると、何か75年周期で大きな転換点があるとみています。例えば、太平洋戦争はほぼ75年前。その75年前、明治維新。また75年前は寛政の改革。松平定信です。またその前75年、享保の改革ですから吉宗ですよ。だいたい75年周期で大きな価値観の転換が起ている。戦争が終わってから2011年そんなことが起こるとは思わなかった東日本大震災。今2005年から2012年がちょうど過渡期なんです。私は転換期を「パラダイムシフト75」って名付けてます。作家の五木寛之さんが、今から2~3年前に本を出していて、日本の成長を登山に例えて下山することの大切さを説く「下山の思想」です。この山を降りましょうよって話は、まさに私の説と近いと思います。という事で、私達は次にどんな山に登るかっていう発想を今しなきゃいけないと思っています。今が過渡期っていうのを、私達は認識しないといけない。どこぞとは言いませんよ、某世界戦略するようなある意味大手成長企業。小利口な人間が机上の論理で人を集めてのビジネスモデルで全国展開して。そんなことで儲けられて、たまったもんじゃないですか。マニュアルがあるからですよ。マニュアルがあるために人間考えなくなる。私は、賛否はあると思いますが、マニュアルの弊害って、そうやって人を使うから本来センスのあった人もセンスを失うと思うんです。「これでいいんだろうか」って思わずに給料貰えちゃうんですから。でも違いますよ。相手の事が分からずに、本当にいい商品なんて作れないし、いいサービスだって出来ないんですよ。もうメニューが全部決まってて、今度は機械の使い方も決まってて、言う事も決まってる。それでは何も面白くないし、学べないですね。だから、誰もやりたがらない。つまらない上に大変なのが分かってるから、人手不足になっているんですよ。あの牛丼チェーンが駄目にするんですよ。だから僕は「チェーン店は駄目だぞ」と。今の人材不足は来るべくして来てるし、マニュアルでがんじがらめのところでは何も勉強できない。そういうことを考えると、これからのビジネスは変わっていきますよ。なんで変わっていくのかという1つの根拠は、75年も経つと必ず都合のいい人と悪い人が明確になってきて、都合の悪い人が多くなってくる。都合のいい人はそのままでいようと思って色んな事をしようとしてくるんです。自分のところに来る事ばっかり考えて。そうすると、そうじゃない人が増えてくる。だから価値観は変わるんです。75年っていうのは誰も何もしなくても新しい価値観が必ず起こってくる年数です。だからって、それが良いか悪いかは別。でも転換点無しに、そのまま150年とかはいかないと思います。

【義と利】

 この40~50年、特に経営者は規模とか競争とかシェア争いに明け暮れている。それを僕は企業家中毒と呼んでます。今だけ、自分だけ、お金だけ、とずっと考えていると、夢や志が欠如していく。で、もう結果ご存
知の様に、マナーの無いモラルの無い、電車の中や、下請け会社いじめ、ストレス社会で地域社会に貢献しない。格差、不平等、これが今の現実社会じゃないですか。原因は、経済優先型の争いをしてるって事。日本
列島紙幣(疲弊)論。
 では、これからの社会、会社はどうすべきか?私の1つの結論っていうのは、日本の文化に根ざした鍛錬・修行をビジネスに生かすこと。そう「仕事道」って事なんですよ。結果で数字を上げる為だけではなくて、自分自身も社員も人間性を向上させるっていう仕事の仕方。結果も大事なのですが、プロセスがもっと大事。そしてプロとしての成長も勿論、組織の成長も。その仕事で社会に貢献できるかどうか。仕事を通して会社
は、人財をきちっと育てていかないと駄目なんです。基本でいうと、掃除、整理整頓、鍛練。鍛練って挨拶とかも全部含まれると思います。効率は「利」を生む。でも人間性の「義」と「利」。このバランスですが、土壇場で大事なのが「義」を優先できるかどうか。道徳を忘れた経済は罪悪である。しかし、経済を無視した道徳は寝言でしかない。「先義後利」という思想は一見古いかもしれないんですが、最終的に私の中の価値観では「徳」なんです。「義」を重んじれば、この過程で人に徳がつく。私は今日お話したことを、これからの日本の75年パラダイムシフトの中で言い続けていきます。ご清聴ありがとうございました。
 

インサイト No.40
2014年12月22日

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