アカルイオタクの採り方育て方

株式会社集英社 人事部人事課課長代理 高野 秀明 氏

 今回の勉強会では、ゲスト講師に株式会社集英社人事課課長代理の高野秀明氏をお迎えしました。
 狭き門ながらも、就活中の学生にたいへん人気があり、最近7年間に入社した社員の離職率は0%という集英社の「おもしろキビシイ」採用・研修について、思う存分タカノ節を語っていただきました。

■ 講 演

はじめに

■第1部『アカルイオタクの採り方育て方』

 まずは開口一番、「今日は皆さん、寝かせませんよ!もしもあくびを見かけたら、そういう新人に対して私がどんな注意の仕方をしているか、その場で実例をお見せしましょう!」ー効果できめん(!?)、該当者はいなかった模様です。講演中、3分間テストがあったり、お隣さんとの答え合わせがあったり、手を挙げる回数は小学校並み、確かに眠るヒマもない盛りだくさんの内容でした。以下、エッセンスです。

【採用担当の心待ち】
 受験者はみな愛読者なのに、大多数を落としてしまうのは忍びない、せめて「歯が立たなかったけど、あの試験は面白かったな!」と就活を振り返る際に思い出になるような作りにしたい。「おもしろキビシイ」というコンセプトは、出版の仕事そのものを表しているつもりだ。

【採用ホームページ】
 ①動き(=FLASH)を取り入れる。②新人にコンセプトを作らせる。③新人全員を紹介する。④かくれステージに過去問を入れる。その結果、就職情報会社で実施の「採用HP人気ランキング」に毎年ベストテン入りしている。

【エントリーシート】
 手書きでA4判6ページ分にわたり、ボリュームは他企業と比べても群を抜く。
 ここ数年の例では、「人生の3大ニュース」「インタビューしたい著名人への3つ質問」「こだわりのベストテン」「入社して手がけたい企画(A4判1ページ分)」など。提出締め切りは2月9日の消印まで。「必着」だと地域差が出るが、「消印」ならば公平感を保てる。
 10日以降の分は認めず、断りのメールを送っている。「そのまま受け取って黙って落とせばよいのにと皆さんお思いでしょうが、このあたりは毅然とした対応を取っています」とのこと。

【筆記試験】
 純オリジナル問題で、冊子の見開きページごとに写真・イラストなどビジュアル要素があって楽しめる。英語問題はまず初めに日本語でストーリーと設問を作り、そこから英訳作業に移っていく。
 無味乾燥気味な「マークシートの記入方法」にリョウツやピッコロなど、ジャンプのなじみ深いキャラ名を用いて、試験直前にリラックスさせる。意外に受験者はこういうことに有難味を感じている。
 漢字問題は時事ネタ・出版ネタをまじえて出題する。作文問題は、落語の”三題噺”をアレンジした形式を取っている。前回「大人買い・ストーン・数字の入った四字熟語」だった。
 ......ここで突然、3分間テストが始まり、どういうタイプが筆記試験に通るのか、教えていただきました。大学での出版業界説明会で、高野氏が延べ6千人に出してきた”お題”に取り組みましたが、残念ながら参加者全員が基準に逹しませんでした(笑)。
 テストの内容は”人物関心度”をはかるものです。ご関心のある方は、小社営業担当・鎌田にご連絡ください。
実際にチャレンジされる方にのみ公開OKと高野氏から許可をいただいております!

【面接試験】
 1対1、グループワーク、商品セールスなど、手を変え品を変え都合8回。
 3次面接のみ限定で「リクルートスーツ不可」にして、受験者のオフタイムの雰囲気を引き出した。
 面接待ちのあいだに4コマ漫画にセリフを入れたり、自社宣伝物の感想を書かせたりして、発想力やコピーセンスをチェック。

【内定通知】
 本人の自宅に内定通知書を直接持参する。家族にもご挨拶、他社に行かせたがっている親御さんを説得しにいくことも。遠距離に住む家族が上京した折には、社内見学の案内人も務める。

【ナッティ(=内定者)研修】
 「ナッティサイト」と称した人事部員との交流サイトを作る。そこでは、「本屋大賞の予想大会」「ナミダもの作品紹介」「手紙の添え紙論争」など、テーマを決めて書き込んでいる。
 月イチの課題は、就活レポート・自分史・読書史など自分を見つめ直す内容から始まる。
 秋口からは書籍・雑誌の各ジャンルに即した課題となる。男性漫画=新連載提案、女性漫画=付録作成、男性誌=コラム連載案、女性誌=絵コンテ作り、芸能誌=テレビ番組レポート、文芸誌=文学賞の書評・表紙デザイン作成など多岐にわたる。こうして総合出版社のたたずまいを知り、オタクたちは志望ジャンル以外の魅力を知ることになる。5回におよぶ全体会合では先輩社員から課題の講評を受けたり、優秀作品選びの投票をするので、自ずと頑張らざるをえない。
 いまの世の中、情報過多になっていて、インプットしたつもりが実はうまくアウトプットできない若者が多い。守備範囲が「浅く広く」の受験者が多い。一方、オタクたちは好きなジャルを思いっきり深くほじくっていくパワーを持っている。最初に彼らの拠り所にスポットライトを当てて称賛したうえで、そのほじくるテクニックを別の面(課題)に向けさせるのが肝心だ。

【新人研修】
 書店での現場実習、製紙工場・印刷会社・製本会社・取次会社の見学、2泊3日の合宿などがある。さらに芸能誌=アイドルへのインタビュー、漫画誌=新人賞作品のモニター、男性誌=グラビアアイドル撮影の立会いなどをまじえてトータル2か月半、「どっちの水も甘辛だ!」と叩き込む、。質・量ともに出版界随一の内容と自負している。

■第2部 HCi-AS対談「甲野さん、こんなことお願いするのは集英社の高野ぞみ?」

 当社取締役 甲野文彦と高野氏で HCi-AS検査を導入したきっかけや改善してほしい点等を対談形式でお話しさせていただきました。
 高野氏の冒頭挨拶、「いまから高野さんに訴えかけるのは、組合交渉のようなもんです。我われユーザーが”団交”の席で高野さんに理想論をふりかざす。今日はゼロ回答かもしれないけど、一度みんなの声を結集してみたいです!
 各社の担当者1人1人がわめいても放っぽっとかれるけど、ここにいる皆さんの声を結集できれば甲野さんも少しは気が変わってくれるかも(笑)。」
 参加者の皆様とも活発な論議になって、当社にとっては耳の痛いこともありましたが、ナマの声をいちどきに伺う貴重な機会になりました。以下、参加企業さんも加わり会話形式で記します。
 
【導入のいきさつ】
 高野氏「面接試験の待ち時間に短時間で出来る検査が欲しくて、なおかつすぐに結果が出て、合否会議に間に合うもの、さらにストレスチェックが見やすいもの。ごちゃごちゃ書いてあって、結局何を言いたいかわからない他社の診断結果より、この大胆に言い切る診断が気に入りました。皆さんも経験あるでしょうか、このようなテストを新たに導入するとき、テスト会社の営業さんにさんざん突っ込むわけですが、それは何故かといえば、人事部内を説得するときに、今度は自分がHCIの営業マンの立場になるわけですからね。私が考えたセールストークは、他社の問題には、あなたは神経質ですか?はい、いいえ、のような聞き方があるが、これでは受検者が回答を調整できてしまう。HCIの設問は、例えていうなら、あなたは握り寿司1人前を食べるとき、好きなものを食べるのは最初ですが、最後ですか、というようなどっちの回答の方が良いとか悪いとか判断がつかないような内容になっている、ということでした。」

【まずはモニターテスト】
 高野氏「導入するかどうか、まずは人事部員と内定者で受検しました。そのうち「ストレス特記事項」が記載されているケースがいくつかあったけど、いずれも納得いくものでした。また、ある人事部員がめちゃくちゃな回答をしてみたところ、重要ファクターに『一貫性のなさ』と出て、これまた納得できたわけです。」

【問題冊子・回答用紙について】
 高野氏「最初に見たときから感じてたんですけど、この問題冊子のレイアウトって、時代がかっていますよね。私としては、ウチ流れに作り変えてみたい。さらにオリジナル問題を入れたいんです。正規の問題の後ろにオリジナル問題5問をね。例えば漫画を読むとき、週刊誌の連載で読みたいか、単行本になるのを待ちたいかとか、先輩受けするか後輩受けするかとかね。その集計はこちらでしますので。」
 甲野「オリジナル問題を含めて、自社で問題冊子をアレンジなさる場合はこちらで内容を確認させていただれば問題ありません。ただし、回答用紙を作り変えるときに、回答の並べ方はくずさないでくださいね。キーパンチャーが混乱してしまいますので。」

【結果の一覧表について】
 高野「せめて内定者の結果が1枚の表にまとまっていればなあ、と思います。いまウチでは自前で作っているんですが、同じような方はいらっしゃいますか?」(7名の挙手あり)
 A社「1面が終わってから作り出して、2面のときに使っています。」
 B社「配属を考えるときに、過去の若手のデータと比較するためにも作っています。」
 甲野「データペースはバターン毎にしか管理していないので一覧表形式は難しいです。あと、個人情報の管理が厳格になっておりますので、当社では現在、氏名・生年月日を原則、削除して保管しています。受検番号など数字、記号でしたら問題ありませんが。ユーザーさんによっては重要ファクターとメンヘル特記事項さえわかればいいという方もいらっしゃるだろうし、これは個々のお客様から依頼があれば営業マンベースで作らせてもらう、ということで対処させてください。」

【重要ファクターについて】
 高野「ファクター1よりもファクター2の方がより強い特徴だと考えていいですか?項目はどのくらいあるんですか?」
 甲野「いえ、そうはなく、あくまでも2つの組み合わせが大事なんです。項目は一千種類ありますよ。」
【メンヘル特記事項について】
 高野「85年のスタート時点では、出現率が約7%だったのが、最近は約15%に増えているそうですね。この特記事項をこれまでの受検者の結果で数パターンは見かけたんですが、実際にはどのくらいあるんですか?内容を全部教えてもらえないんでしょうか?」
 甲野「全てはご勘弁いただきたい。全部で60パターンありますね。主だった例では<被害者意識が強く周囲の目を気にする><防衛的な傾向><自己内に閉じこもりがち><暗い印象><交流の障害><非社会性><ひがみ><他人を信用しない>というコメントが入るケースなどでしょうか。
とりわけ気をつけていただきたいのは<自閉化><情緒障害><ノイローゼの心配><内向化>、内向性よりも強いのが内向化ですね、このようなキーワードを参考にしていただければよろしいんじゃないかと思います。
 C社「その受検者はどういうシチュエーションだとストレスが強まるかとか、私たちはどのように接したらよいのか、というところまで踏み込んで表に書いてもらえるとありがたいんですが!?」
 甲野「そこまでシステム化して表わすことは難しいですね、ケースバイケースなので。気になる受検者についてはお問い合わせください。私なり研究員が対応させていただきます。その際には具体的なエピソードを詳細に伺いながらということになります。」

 終了時間になったところで、残るご意見ご質問はアンケート用紙にご記入いただきました。
 以下、その抜粋です。
◆普段の疑問やこんな風にならないと思っていたことが話題に出て良かった。
◆歯に衣着せぬ意見のやり取りで良かった。
◆検査を使っての面接の「例題」を検討願います。
◆ネットで結果を配信してもらいたいです。
◆セミカスタマイズについてリクエストしたかった点がクリアーになった。
◆メンヘル特記事項の注意すべき点、結論の出し方などを詳しく聞けて良かった。
◆メンヘル特記事項の有無と離職率の相関関係を調べてもらえればとても参考になります。
◆メンヘル特記事項にもレベル判定が欲しいです。
◆デザイナー職採用のときに、確かにこの問題冊子のデザインセンスはつらいです。
◆甲野さんがわざわざ突っ込まれ役をやるなんて....。
◆今回のような勉強会の回数をもっと増やしてほしい。

 今後もヒューマンキャピタル研究所は、人事部ご担当者の交流の機会を積極的にお作りしていく所存です。皆様のご参加をお待ち申し上げます!

インサイト No.12
2007年4月5日

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