教育で会社は変わるだろうか?

株式会社ジェイック代表取締役社長 佐藤剛志 氏

 定期開催をしていますヒューマンキャピタル勉強会を、6月10日(木)に開催いたしました。
 講師に、人材の教育・研修会社 株式会社ジェイック代表取締役社長 佐藤剛志氏をお招きしご講演いただきました。株式会社ジェイックさんはフリーターを戦力化する「営業カレッジ」がマスコミ等で取り上げられ有名ですが、社員への研修もどこよりも多く実施されており、専門家の立場から、効果のあがる教育研修のお話をしていただきました。
以下講演の要約です。

■ 講 演

 皆さん、こんにちは。今日は、私の誕生日でございまして、そんな日に素晴らしいプレゼントとして、この様な皆さんにお話をする機会を頂きましたヒューマンさんに感謝致します。
 我が社(株式会社ジェイック)は、教育事業をしている会社です。社員一人一人が自ら学び、自分の可能性を開拓していく社員のマインドが重要だと考えております。ですから社員教育漬けの会社です。今日はその事例を織り交ぜながら三つのテーマに分けてお話をします。その三つとは「会社のミッション」「教育及び組織運営」「リーダーのあり方」についてです。教育でかなり会社も変わりますが、もちろん教育が全てではありません。組み合わせということで、この三つが大切になります。

1・「会社のミッション」

 そもそも、家とか地域とか小さい単位で働いてきた人類が、組織で働くようになってから、たかだか100~150年しか経っておりません。単に人を集めただけでは、烏合の衆の「あっち向いたり、こっち向いたり」になってしまいます。組織を形成するに当たって一番大事なのは「人の力を結集できるような何かを持つ事」です。目標であったり、企業であればミッションということになります。「社員一人一人がコミットできるようなミッションを持つ」ということが重要です。社員が会社の目指すべきところに共感することが大事です。ミッションの設定で、集まってくる人材も変ります。人材が変れば社風も変ります。P.F.ドラッカーの言葉に『知識労働者は仕事に人生を求める』とあります。単なる生活のための糧だけでなく、仕事自体に人生を求めるという非常に深い言葉です。教育の前に、我が社の存在理由を明確にする事が大切だろうと思います。ミッションは社員を鼓舞し情熱とエネルギーを与えるものである。そして社員が「自分の努力は無駄にならない」と信じるようになる。またドラッカーは『ミッションは、世の中に違いをもたらすものでなくてはならない』とも言っています。ミッションが日常的に使われる言葉となれば、浸透してきたと言えるでしょう。

2・「教育及び組織運営」

 教育は成果が分かりづらい。だけれでも継続をしていくと、どこかで必ず成果が出る。ただ、どのくらい続けたら成果が出るかが人によって、チームによって、会社によって違うんです。2~3ヶ月で成果の芽が出る組織もあれば1年間やってもどうにも変化の兆しが出なくて、何か無駄なことをしているのではないかと思ってしまうケースもある。私は多くの企業を見てきて思うのは、教育は普通に継続すると能力の蓄積がある程度は出ます。競合他社よりもずっと続けていくと、必ず明らかな成果が出るものなんです。更に、どの会社もやっていないくらい徹底して続けると、明らかな差別化要因になると強く思います。
①「組織運営で重要な事はコミュニケーション」~ただ、コミュニケーションというのは、上から「コミュニケーションを良くしなさい。」と口酸っぱく言っても駄目で、お互いの人生や人間的側面をよく理解し合う=信頼関係が出来てくると、おのずとコミュニケーションは活発になります。信頼関係という土台を強固にしておくことです。
②「強みを生かす」~組織の目的は『人のエネルギーの解放と動因である』これもドラッカーの言葉です。先ほども言いましたが、組織で働く、組織で仕事をすることに我々はまだ慣れていないんです。オフィスに無理やり詰め込まれると、大自然に慣れている人間には窮屈に感じてしまう、と勝手に私は思っています。自分を100%発揮できていないビジネスマンがいかに多いか。私は「強みを生かす」という事と「処を得る」ことが重要だと考えます。一人一人にはそれぞれの強みがある。それと今の業務内容が本当に合致しているか。なかなか合致していないものです。将棋の名人の言葉で「銀が泣いている」という言葉があります。私も会社の幹部会で「我が社に泣いている銀はいないか?」とよく聞きます。配置の工夫で人は結構変ります。
③「知識労働者は自らが自らをマネジメントする必要がある」~一人一人が主体的に自発的に工夫して考えて動くような組織を作ることができると、競合他社との目に見えない圧倒的差別化になると思います。それには、継続的に教育を施して道具とかツールを与えていく必要があるということです。
④「不況下こそ人への投資が差別化になる」~厳しい時に革新が起こり飛躍となる。好調時は後で落とし穴になるような慢心や傲慢が出ます。辛く厳しい時こそ社内教育をすると後々に差が出ます

⑤「刃を研ぐ」~自分が飛躍するために何かを勉強したり、何かを研究したり、自己啓発に当てる事が非常に大事です。また健康を維持するとか、人間関係を維持することもこれに通じると思います。私は人が成長するというのは、何かに感じて、感動して、感激して、自分を変えて成長させていきたいという決意が、そこに生まれるものだと考えます。心の問題というのはもの凄く大事で、そこに対して働きかける、考える材料を与えるというのが教育だと思います。「感じて、感激して、決意した人は強い」のですから。

3・「リーダーのあり方」

 組織はリーダー次第である。「リーダーは部下に同情されるくらいでちょうど良い。」これは稲盛さんの言葉ですが、ともかくリーダーが率先して取り組むと、必ず部下に伝わります。
 ドラッカーの言葉に『リーダーと一般社員の距離は常に一定である』とあります。中小企業の社長に社員のレベルについて尋ねると、「幹部やマネージャーが成長しない。」とおっしゃる場合が多いですけど、結局大事なのはリーダーが成長すること。リーダーが成長して伸びれば伸びるほど、下のメンバーも一緒になってついてくる。リーダーが誰よりも働き、リーダーが誰よりも勉強して学んでいるか?リーダーは「良い時は窓を見て、悪い時は鏡を見ているか?」(窓を見る=周りのお陰、鏡を見る=自分自身を省みる。)エクセレントな企業にはこういう考え方があるはずです。リーダーが自分の手柄をひけらかすことなく、謙虚でいれば、部下はついてくるものなのです。
 以上です。本日はありがとうございました。

インサイト No.24
2010年9月9日

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