多様な働き方改革最前線 〜障がい者雇用をダイバシティ経営の切り札に〜
NPO法人FDA理事長 成澤 俊輔 氏
昨年12月14日に弊社お客様向け勉強会を開催致しました。
講師に、「世界一明るい視覚障がい者」というニックネームをお持ちのNPO法人FDA理事長、成澤俊輔氏をお招きしました。
成澤さんは、先天的難病とされる網膜色素変性症で現在ではほぼ失明状態にあります。
ご自身が障がいをお持ちにも関わらず、通常就労が困難だとされる「引きこもり」「精神障がい」「過去に犯罪を起こす」等々の方々をFDAの事務所で訓練して、就労可能なレベルまで教育するお仕事をされています。この活動が注目を浴び、昨年10月17日(月)NHKハートネットTV「ブレイクスルー」で放映がありました。
当日は、お話だけでなく参加のみなさんに協力していただくワークも交えて大いに盛り上がりました。当日のダイジェストをお伝えします。
■ 講 演
みなさん、こんにちは。ただいまご紹介に預かりました成澤でございます。私は決して成功者でも有識者でもございません。でもただ1つ誰よりも行動し、いわゆる就労困難な方々と試行錯誤をしている自信はあります。私はちょっと変わったキャリアを持っています。父親が世界的に有名な皮膚科医で、お姉ちゃんが癌で死んで、私自身3歳で目の病気にかかり、幼稚園は海外で過ごして、小中高はむりやり普通の学校に行って、東京に出てきて大学に7年通い、そのうち2年間は引きこもりをし、10代から会社の経営をやって、そのなかで経営パートナーに全てのお金を持ち逃げされたり、3年前に髄膜脳炎で3日間重篤になったりとか。私には30歳までにいろんな社会課題が降ってきました。
【~世界一明るい視覚障がい者といわれて~】
目が見えなくて困ることって、特にないんです。良いことばっかりなんです。でも、たった1個だけ困るのが、自分の存在を自分でわからなくなってしまったこと。失明をして、1つ癖が増えました。手をかく癖が。血が出るくらい毎日かいてました。自分を探してるんです。「俺どこいった?」って。目の障がいを持ってから、負けず嫌いで必死で勉強した。クラスで一番になるという支えがあった。自分は価値ある人間なんだって。でも、売り上げも偏差値も、自分の存在にはならなかったんです。「俺の存在ってなんだろう」って失明して思いました。でも、これって私だけでしょうか?多分、世界中の人が自分の存在って何だろうって思っているはずです。でもわかったんです。1個だけ。私は世界一明るい視覚障がい者というニックネームを持っています。yahooやgoogleで「障がい者世界一」って調べてもらうと1番最初に出てきます。今仕事をしていて、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病、HIV、覚せい剤、アル中、いろんな人達が私の周りにいる。そして、私は幸せなんです。何でそこまで破天荒な人生を送って、今でもそんなチャレンジをして、その笑顔の原点はなんですか?ってよく聞かれます。それはたった1つ。今あなたが「笑顔」って言ってくれたことです。相手がいるから自分がいるんだなってわかったんです。じゃあ、その相手に役に立てる仕事をしようって思いました。それから、手の傷はもうなくなりました。みなさんがいるおかげでもう手をかかないですから。私は経営者と3000万人の就労困難者の相手になりたいと思っているんです。
【3つの仕事~経営者と就労困難者への支援~】
私は、大きくいうと3つの仕事をしています。
1つ目、経営者や企業のコンサルティングをしています。今31歳です。この仕事を12年やらせていただいています。私が何故この仕事をするかというと、経営者が1番最初に私を救ってくれたからです。18歳まで暗黒時代でした。誰も自分なんか必要としてくれないとずっと思っていました。そんな中、経営者のみなさんが私に会って、喜んでくれたんです。それは私の能力ではなく生き方に。目が見えなくなってどうしようって揺らいでる孤独感と、経営者や人事の方の孤独感が一緒だったんです。経営者は私を必要としてくれました。人生で最初に私を必要としてくれたのは経営者なので、恩返しをしたいと思って、経営コンサルティングという仕事を始めました。
2つ目、年間1500人くらいの就労困難な方と面談をさせてもらってます。我々、訓練所を経営していますが、理事長としてこの面談数は日本で最も多いと思います。企業によっては、社員に通院するようにとか障がい者手帳を取ってもらうように、とかアドバイスする契約を結んでる会社もあります。では、何故そんなことをやっているか?実はそんな人が私も欲しかったのです。小中高は普通の学校に行きました、目が見えないのに。辛かったです。お医者さん達は、点字や音声の読み上げソフトや白い杖を勧めてくれます。「こいつらなんもわかってねぇな」と思いました。点字を覚えてやり取りする相手がいなくて、白い杖をついて出かける先がなくて、音声の読み上げソフトを使って何の情報を取っていいかわからなくて、困っている。だからこそ今、就労困難な攻めあぐねている人に大丈夫だぜって、コミットメントするような取組をしたいと思って、当事者に寄り添うことをしています。
3つ目、講演・研修をしています。多様な働き方の改革と、労働の生産性をあげていくこと。この2つのテーマで主に経営者向けの講演・研修です。これは使命感でやっています。今日我々のことを知れば、無理心中する人や鬱病で死のうっていう人が減るかもしれない。1秒でも早く我々の取組みを広めたい。人の人生や命を支えるために。だからやりたいのは、経営者や人事担当者のお手伝いと当事者に寄り添う事。そして、それをなるべく早くみなさんに広めること。この3つです。
【「大丈夫だよ。」と伝えたい】
今日ですね、私は1つのことを言いに参りました。「大丈夫だよ」その1言です。みなさんが経営者・人事担当者だとして、例えば社員が鬱病になったり空気が読めなかったり、依存症になってしまったりして困っているとします。このような就労困難と言われている人は、近い将来労働人口が8000万人を割り込むと言われる時代において3000万人もいます。また、みなさんがプライベートな関わりの中で、こういった課題はそんなに遠い話ではないと思います。全国に障害者手帳を持つ方は今800万人います。統計学的にいうと、3家族に1人いる計算です。みなさんが、この課題にぶつかったり、周りにこの課題に困っている方がいた時に、私は「大丈夫だよ」とお伝えしたくてまいりました。
【障がい者雇用とは~ワークショップを通じて~】
以下ワークショップの内容です。
[4人1組のチームで、A4のコピー紙を五重の塔のように積んでいく。紙の積み方はどのようなものでも可。道具の使用は禁止。4ラウンド行い、1ラウンドごとに1分間の作戦会議を行う。第2ラウンドからはメンバーの中の1人が目をつぶって参加する。第3・第4ラウンドは、目をつぶった人だけが紙を積む役となる]
みなさんどうでしたか?随分盛り上がっていましたね。障がい者雇用ってこのワークショップみたいなもんじゃないかなって思うんです。第1ラウンド。世の中ってだいたい健常者でできてます。第2ラウンド、目をつぶった方が障がい者役となり、職場であれば配属されてきた、という設定です。多分第2ラウンドが1番盛り上がらなかったと思います。目をつぶった役の人も周りの人もドキドキしたと思います。第3ラウンドは、作戦タイムの効果で1番盛り上がったと思います。チームとしてまとまりがあって、目をつぶった役の人を主人公にしようとしました。第3ラウンドより第4ラウンドでより良い成果が出るためには4つのポイントがありました。1つ目、目標。まず目をつぶった人とそれ以外の人で一緒に目標を設定します。2つ目。役割分担。説明する人は1人とか、紙を折ってあげる人は1人とか、そういう1人1役役割を決めます。3つ目。相手に合ったコミュニケーション。人を指導する時には、どう説明すればわかりやすいですかって聞いてください。4つ目、ほめること。前より上手く進んでるよとか状況を説明しながらほめてあげてください。この4つが、人をマネジメントしたり、よりよい会社を作るうえで大事なことだと私は思います。ですから、みなさんには、それを実感して頂きたくてこのワークの時間を取りました。
【~就労困難者が会社をより良くする~】
多くの社員が思ってることって3つあると思います。1つ目、給料上げてくれよ。2つ目、自分の負荷下げてよ。3つ目、やりたい仕事もっとやらせてくれよ。この3つを実現したい時に、私共の事業所FDAを思い出してください。我々にアウトソースしてみませんか?直近1年だけでも100種類くらいの仕事を就労困難な人がやっています。それは、翻訳の仕事、清掃の仕事、なんぼでもできます。仕事を、社外で受けることも、みなさんの現場ですることもできます。24時間365日なんぼでも対応ができます。依頼があれば私成澤が説明に伺います。例えば、毎月1日だけ、毎週金曜日の夕方だけ仕事をして欲しいとか。派遣でも、バイトでも、使い勝手が悪かった。そこにこの3000万人の人たちが教育訓練されながら、関わるチャンスがあると思っています。また、予算は極論なんぼでもいいです。時給950円~1500円の間でお客さんと相談しています。交通費は一切必要ありません。だからコストは、私共の方が圧倒的に安いです。また、我々みたいなメンバーが入ることによって、社員が変わっていきます。例えば、私がここで書類作成をやろうかなと思った時、向いで知的障がいの人が仕事を一生懸命やっていたら、早く仕事終わらせて手伝ってやろうと思うとか。そして、ちゃんと会社はこうやって自分たちの負荷を下げたり、やりたい仕事を応援してくれるんだなってことが社員に伝わります。いろんなメリットがみなさんの職場に生まれてくると思ってます。私は1業界に1社しかコンサルティングをしないと決めています。そこから広がりができればいいと思ってます。なので、私共とご一緒していただくことで、業界に新しいブランドだったり、ポジションを築いていくことができるはずです。応募者が来ないって叫ばれるこんな時代に、私共と関わっていただき良い会社づくりをみなさんとずっとずっとやっていけたらなと思っています。ご清聴ありがとうございました。
インサイト No.49
2017年3月10日