NPOの現場から見る、生き生き働けるチーム作り 〜結果を出し続けるための5つの方法とは〜

認定NPO法人テラルネッサンス 創設者・理事 鬼丸 昌也氏

 昨年12月11日にお客様向け勉強会を開催しました。講師に認定NPO法人テラ・ルネッサンスの創設者であります、鬼丸昌也氏をお招き致しました。
鬼丸氏は、立命館大学4年の時にカンボジアを訪れ、地雷被害の現状に接し、帰国後すぐにNPO法人テラ・ルネッサンスを設立しました。現在は、アフリカの元こども兵の社会復帰支援を中心に活動をされております。講演回数は年間120回を越え、昨年5月には扶桑社より「僕が学んだゼロから始める世界の変え方」を出版されました。今回の勉強会では、活動内容だけでなく、外国のスタッフも巻き込むリーダーとしての鬼丸氏の考え方をお話頂きました。当日のレポートです。

■ 講 演

2004年当時の海外退避勧告

【はじめに】

 皆さんこんにちは。NPO法人テラ・ルネッサンスの理事をしております鬼丸と申します。この苗字は出身の福岡に多い名字ですが、覚えてもらいやすいので先祖に感謝しています。立命館大学4年時に一人でテラ・ルネッサンスという団体を立ち上げ、現在私を含め日本人の有給職員が10名、海外に3支部を構え40名の現地職員総勢50名の仲間で「全ての生命が安心して生活できる社会の実現」というビジョンを掲げ、活動をさせて頂いています。今日は私のチーム作り、働きやすい環境作りを個人的な経験をベースにお話し致します。

16歳の元こども兵

【活動のきっかけ】

 まず自己紹介を兼ねて、今の仕事をするまで自分の歩んだ道を振り返ります。九州の片田舎で育った僕が、高校3年の夏季スタディツアーで訪れたスリランカで、社会活動家アリヤラトネ博士に出会い、僕の人生が動き出しました。平和活動家の彼から頂いた言葉が僕の魂を揺さぶりました。帰国後、福岡の実家が貧乏だったため、新聞配達をしながら京都の立命館大学に通いました。そして2001年2月に地雷の現状を知りたくて、カンボジアに行きました。そのカンボジアの現状を伝える活動として大学4年の秋、今のテラ・ルネッサンスを設立しました。現在一番力を入れている活動は、アフリカのコンゴ、ウガンダで元こども兵の社会復帰を支援する仕事です。2004年に外務省から退避勧告が出ているウガンダ北部の町グルに入りました。何故退避勧告が出ている危険地域にあえて行ったのか。正確な現状を知りたかったからです。本やネットだけの情報でなく、現場に入り僕のこの目で確認したかったのです。もちろん正直怖かったです。そこで、一人の元こども兵に出会い、話を聞くことができました。彼は16歳の元こども兵だったのですが、12歳の時に抵抗軍の兵士に誘拐されすぐに、彼が住んでいた村に連れてこられ、実の母親の腕を斧で切り落とす命令を実行させられたのです。何故そんな酷いことをさせられるかというと、脱走を防ぐためなんです。身内を傷つけたら、彼はもう帰る場所がないわけです。そんな仕打ちを受ける子供たちが、当時現地に3万8千人いると聞かされました。では、何故こども兵を使った紛争がコンゴで起こるのでしょうか?原因は、我々の生活に大いに関係があります。それは、レアメタルやダイヤモンド、石油といった先進国が贅沢に使っている資源の取り合いによる戦争なのです。この事実を知って、僕も衝撃を受けました。自分が使っている携帯電話やPCに必ず使われているコンデンサー等の希少価値鉱物に原因があるのですから。支援をする自分自身が欺瞞だと思いました。でも、よく考えたのです。やはり私の仕事は、こども兵の現状を知ってもらう事だと。「携帯などを使ってはダメではなく」、「どこの国の鉱物資源なのか?」戦闘地域でない物もよく調べるとあるんです。あと、むやみに買い換えない。少し我慢をする、といった一人一人の小さな行動が、世界を変えることにつながると考えたのです。私たちの行動は、「微力ではありますが、無力ではない」のです。「微力」と「無力」の違いは大きい。諦めない心が大切なんだと。アフリカの大地で思いを強くしました。

【アリヤラトネ博士の言葉】

 アリヤラトネ博士から「何かをしたい、何かを変えたいと思った時に特別な知識や特別な体験は必要ない。どんな人にでも全ての人に未来をつくる力がある。そして大切なことは、その力がなんであるか人と比べなくていい。極端なことを言えば、自分の中で探さなくてもいい。ただ全ての人に未来を作る力があると信じなさい。期待をするんじゃなく。結果、目の前で一生懸命やってきた事が駄目になっても、信じてた人に裏切られても、自分も含めて人は変化をする。未来をつくる力、変化をする力があるのだから。人は変わることができる、そのことさえ信じていなさい。そしたら君はきっと社会を変えることができる」この言葉を頂きました。自分の可能性、未来をつくる力を諦めず、自分の心の中で、自分の出来ないだろうと思うことを1つ1つ潰していくと、最後に1つだけ見つかるもの、残るものがあるのです。それは自分にしかできない事です。言葉を言いかえて申し上げます。自分だからこそ出来ること。自分たちの組織だからこそ出来ることが必ずあるんだと。
 悩みって可視化されないと課題に変わらない。思っているだけで周りに伝わっていなければそれは問題ではない。「これが会社の問題だ」と思ってもそれを社員に伝えなければ、それは社長の悩みや妄想に過ぎません。2人以上に共有された悩みはその時、解決すべき課題に生まれ変わる。だから伝えることが大事なんですが、社員は言いにくい。組織はどうしてもヒエラルキーができます。だから言いやすい環境を作ってあげるっていうのも大事です。みんなで合意し、全員合意の目標に向かってそれぞれが使命を持ち寄って、自分の組織を変えていくという手法。日本語で内発的発展。外発的、つまり外から誰かコンサルを入れて変えていくのではなく、自分の内側に持っている使命、やる気を引き出し、自分の組織や社会を変えていくっていう手法が望ましい。

【グローバル人材の育て方】

 お子さんが「何か欲しい」って言ってきた時に2つだけ聞いて欲しい言葉があるんです。1つは「それほんとに欲しいの?」物を買う時に理由を考えさせて欲しいんです。感情にプラスして理由を考える癖をつける。物を大切に使うようにもなります。本当に欲しいなら理由をきちんと言ってきます。そしてもう1つ「じゃあ、その商品を誰が作ってくれたのか、誰が運んできてくれたのか、それに思いを馳せ考えてみよう。調べてみよう」です。僕はこれが世界で活躍するグローバルな人材を育てる唯一の方法だと思っています。グローバルな活躍ができる人材とは、語学に長けた人ではない。最も大事なことは、自分の身に着けている物、口にするもの、自分の仕事の前に関わってくれた人、自分に関わる全ての人に思いを馳せることが出来る人です。能力の不足は思いやりでカバー出来ますが、思いやりの不足は能力では絶対にカバーすることは出来ません。思いやりはしなやかで強く、強さとは優しさです。強さとは関心を持つ勇気。思いやりって愛ですよね。マザーテレサが言いました。愛の反対は無関心だ。恨むことでも憎むことでも嫌いになることでもない、嫌いならまだ認めてる訳だから。

【使命・理念】

 未来をつくる力。変革への希望だって原因を変えれば、時間はかかっても結果は必ず変わるはず。生きている限り、一生懸命働いている限り、大切な社員さんや部下を抱えている限り、家族を抱えている限り、そこに起こる問題の原因が私の中に含まれていると引き受ける覚悟を持った時、私たちの内側に生まれてくるものは変革への希望。つまり選択する勇気。それは本当のモチベーション。だから上がったり下がったりすることはありません。テンションは上がったり下がったりすることはありますが自分の中の力を確認さえしていれば、必ず一定のモチベーションは出続けるはず。自分の原点に返る、自分の中の使命や、会社の中でいう理念に返ることです。

【人を動かす】

 大切な人に伝えるためには、必ず2つのものが必要です。1つは「確かな知識」。色んな事を色んな所から見れるだけの大量の知識が必要なんです。もう1つ大事なものは、確かな「熱」です。数字もエビデンスも大事
です。でもそれじゃ人って動かないんです。数字に熱があると、人は心を震わせ動いてくれるんです。熱や知識は人に触れ、ベンチマークに行く。本物に触れるんです。希望に触れるんです。そして希望で心を満たしていく。

【リーダーの仕事、源泉】

 あらゆる機会を通じ伝え続ける。どんな場所でもどんな時でも伝え続けることが、リーダーの最大でたった1つの仕事だと学ばせて頂きました。伝える為にとても大事なのが、実績。特に日本人は、何を言うかで
はなく、誰が言うかで判断をする。正しいこと言われても尊敬できない。やってない人の話は聞きたくないんですよ。だから目の前の事をコツコツやる。リーダーシップって5つしかない。1つは恐怖。1つはお金。1つは権限。1つは尊敬。そして共感。リーダーシップとは、不確定な中で、ある一定方向を示し皆と一緒に歩いて行くことです。尊敬と共感をみんなで繋ぐ為に、ちゃんとやるべきことをやり、大切なものに時間をか
け、1つ1つチームやグループやコミュニティをつくっていく。言っている事とやっている事の整合性を出来るだけとること。部下や周囲が何を見ているかというと、言っている事じゃなくて、やっていることですから。僕も自分の言っている事とやっている事を1つ1つ整理しています。自分の時間を使い、組織をより良く運営していく為に覚悟を持つ。そんな風に思っています。皆さん最後までお聞き頂き有難うございました。

インサイト No.41
2015年3月16日

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