専業主婦から日中の架け橋になる

Mywayプラス株式会社 宮本ゆかり氏

定期開催をしていますヒューマンキャピタル勉強会を、さる9月28日(水)に実施しました。
講師にMywayプラス株式会社の宮本ゆかり氏をお招きしました。
宮本氏は中国人のご主人と力を合わせて、電気エネルギー関連の会社を起業されました。
中国上海に住まわれた経験や、ベンチャー企業設立の苦労話など、女性独自の視点からの
大変興味深い講演となりました。当日の内容をまとめましたので、報告致します。

■ 講 演

~はじめに~

 皆さん、こんにちは。只今ご紹介に預かりました宮本ゆかりと申します。今回この講演をお引き受けした時に、ヒューマンキャピタル研究所の甲野取締役から過去20数回の素晴らしい講師の方々のリストを見せて頂き「どれも素晴らしいお話でしたよ」とお聞きして、「私は義理でお声掛け頂いたんだな」と思いましたが(笑)、本日は『専業主婦から日中の架け橋になる』と題しまして、私の今まで生きてきた中から一生懸命お話させて頂きます。 
 まず、自己紹介をします。私は現在中国人の夫と小・中・高の3人の娘がおります。本業はMywayプラスという会社の経営。主に電気自動車などのモーターを開発・製造しており、夢は「アジア発のマイクロソフト社になること」、売り上げ1000億企業を目指しています。現在はNPO活動にも力を注いでいます。

~生い立ちから~

 私は富山県で生まれ育ちました。父は起業したものの、会社を潰し借金を背負いました。母が働きながら何とかお金の工面をしつつ、私達を育ててくれました。そんな母が、私の高校卒業前に弟を連れて家を出て、私と祖母は父をかばい残りましたが、今度はその父が蒸発。電気、ガスが止まり真っ暗で寒い中、私は寒々と泣きました。私の人生が大きく変ってしまったのです。

~会社設立~

 卒業後上京し、24歳で中国人の留学生だった楊仲慶(ヤンツォンチン)と結婚。私は、本当は専業主婦になりたかったんです。3年ほどして、夫が「独立したい」と言い出しました。周りや恩師も職場の上司も全員反対。起業する夫に「迷惑を掛けないでね」とだけお願いしました。18年前といえば、中国人が日本で銀行口座を開設しようとしても門前払い。夫の風貌からマフィアだと思われたんでしょうか?不動産も借りられず、仕方なく私が登場することに。
 私のスキルと言えば「日本人であること」だけですが、日本人であれば口座開設も出来ますし、不動産も借りられます。夫には商材開発だけに全力を注いでもらい、それ以外の仕事の人事や経理などは全て私がやりました。専業主婦だった私は、余りにも無知でしたから「もっと勉強してから来なさい」と役所の方に六法全書を投げつけられたこともありました。ただ、このあたりから各種の経営セミナーに通ったり、経営者の話を聞いたりして、会社経営にハマっていきました。この経験が後で本当に生きました。

~3つのエピソード~

 1つ目は第一号の製品を買ってくれた私立大学の先生。日本の大学では納入実績がないと製品を買ってくれません。実績の無いベンチャーは無理です。この先生は、なんとご自分のポケットマネーで買ってくれたんです。それが実績となり他に広げることが出来ました。
 2つ目は隣の奥さん。会社設立当初、ボロアパートに住んでいました。公園で娘を遊ばせていた時に、隣の奥さんに何気なく「増資をしようと思うんだけど」と言うと「私が出資するわ」と言ってくれたのです。「出資の意味分かってる??一口5万円だもん、主婦には難しいでしょ」と言ったら、なんと「700万円出資する」と。「ちょっと待って、うちの会社のこと何も知らないでしょ」と言ったら「お宅の夫婦の会話は、全部薄い壁通して筒抜けだから!毎晩熱く語っているのは聞いているから」と(笑)。その後、社債も合わせて1100万も出資してくれました。それからは、毎年奥さんの為にも5%配当しようと決め、ほぼ元金以上はもうお返ししていると思います(笑)。
 3つ目は不動産屋さんと大家さん。不動産屋さんには、無謀にもマンション一棟を借りるなんて条件を伝えていました。普通は、まず難しいです。それが仲介料も取らずに紹介してくれました。その上大家さんに「うちの夫は、日中の架け橋になるために死ぬ気で働きます」と夢を語ったら、更地に5階建てを建設して賃貸してくれたのです。これからは今までに頂いた、ご縁、愛情をお返ししていきたいです。

~会社の仕組み~

 「社内掃除」=愛と勇気を実践する為に徹底しています。一般的な大卒の中国人は、普通掃除はしません。ホワイトカラーの自分達ではなく、身分の低い人がやるものだと思っています。でも会社への愛情だということで教育していますので、今では中国人社員も率先してやってくれます。基本は「ゴールデンプライス」=感動・関心・感謝の3つです。技術者の会社ですから、繋がりが自分と機械になりがちです。人とのコミュニケーションや自分の知識を伝えることが出来なくなりがちです。お互いの良い所を褒めてサンクスカードとして、ポストインする取り組みを定着させました。沢山サンクスカードが集まった社員を表彰します。
 また「社内通貨」(表彰制度に伴って貰える通貨)を流通させ、社長にちなんで「楊(ヤン)」と名付け、換金できるようにしています。まあ、遊び心も半分ありますが。
 全社員が参加する「経営発表会」(年1回開催)には、社員のご家族も参加してもらっています。こういった取り組みもあって、当社は神奈川県から(松沢知事時代)、経営者表彰を受けました。

~環境・日中というキーワード~

 ある時、環境と平和のNPO団体「ネットワーク地球村」高木代表の講演を聞いて衝撃を受けました。中国ではゴミを分別せずにポイポイ捨てます。ゴミは山積み、川は汚染され、山は荒れています。私は未来の子供達のことを考えると、大きな危機感を持っています。縁があって夫が中国人で、クリーンエネルギーの事業をやっているのだから、日中・環境というキーワードで私にも何かできないか、と考えました。目覚しい経済発展で環境破壊も凄い中国に一石を投じたいと、主人に「中国進出」を提案しましたが「難しい」と返事。そこで、私が決断して子供3人と中国に行くとに決めました。40歳過ぎて話せる中国語は「ニイハオ・シェイシェイ・ザイチェン」の3つだけ。知り合いも主人の弟が一人。住む所、職場は全部自分で探しました。中国にインパクトを与えたいと強く思い、実際に勇気を持って行動に移せるのは、「必ず実現させるんだ」という大きな夢があるからです。

~思考と選択、中国話から~

 そんな上海で、子供たちとお風呂に入っていたら、何とガス漏れ警報。中国ではガス漏れで結構亡くなっている方がいます。また夜、中国の蚊取り線香を点けて寝たら、朝付属のトレイが溶けて燃えていました。家の天井に備え付けの重い照明器具が、手抜き工事で落下する、なんていう事件も起こりました。それこそ、下敷きになっていたら大怪我もんです。日本ではありえない怖いことが、中国では日常茶飯事に起こります。電化製品は新品を一通り揃えましたが、全部半年で壊れました。梱包されている新品は、付属品も含めお金を払う前に、レジで中身を確認するのが、中国では常識です。信用せず、危機管理能力がないとやっていけません。私は多くの経営者の考えに触れていたので、これで諦めるのではなく、まだまだ中国も発展途上と思うようにしました。すると、この国の可能性にも気付けました。要は、思考の転換、何でも受け入れる大きな心が大事だと、学びました。

~マザーハート:お母さん力~

 最後に、私は「お母さん」とう立場から、「日中の架け橋になる」と決めています。具体的には「日中お母さんサミット」の開催を企画しました。サブテーマは「お母さんも夢を描こう」です。「お母さんの心」(違いを受け入れ包み込む広さ。最高に良いものを他に与えたい心)があれば国や文化、年齢性別を超えて一つになることができるのです。そんな思いを世界中に実現したいと考えています。「お母さん」だからできるのです。
 本日はご清聴有難うございました。

インサイト No.28
2011年12月15日

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