人事担当者のための講座〜採用諸資料と「OJT」について(1)〜
株式会社 ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進
■ 連載 人事担当者のための講座
第18回 採用諸資料と「OJT」について(1) ーそのリンケージが決め手ー
採用は必ず研修を前提にしていることはいうまでもない。新入社員研修(OJT)の質を高めるためには、「採用面接の諸資料」と、「面接者の所見」をリンケージすることがテーマとなる。
もともと「全会社的基準」によって採用されたわけで、その直後の研修とは一体のものであるはずだ。
その構造を次の図に表示してみた。
上部の円形は、「採用面接の諸資料」を整理したもので、全体構造の核となる。(この具体的内容は次回提示したい。)下図は研修のスタイルを「OJT」を中心として、それに「off-JT」を据えた。
もともと「OJT」の目標は、当面の仕事の修得が中心となる。しかし、「助走期間」としての「OJT」としては、採用資料をベースとして、仕事を通しての再評価という視点を重視することが重要だ。また、初期の
「OJT」は「個別対応」が絶対要件となることも当然のことながら念頭におきたい。
「off-JT」を入れたのは、個々人の評価を更に集団の中で押さえることを意図したからである。研修のスタイルとしては、チーム編成による体験的なプログラムが効果的である。
こうした研修のプロセスで、特に次の点に配慮したい。第一は、仕事のさまざまな実行を通して、その結果を「迅速」に新入社員にフィードバックしてやるということだ。再評価のチェックということもあるが、何よりも個々人の「モチベーション」の低下を防ぐことが基本になるからだ。早期離職の原因の一つに「仕事とのミスマッチ」がよく上げられる。しかし、その真の原因は、上司、コーチャーなどの「フィードバック」のミスや低下が隠されているのではないか-。応募学生が就活の中で、「自分にとって重要なものは何か、何ができるか」といった自覚的テーマほど難しいものはない。仕事の実体験もないから一層困難となるはずだ。
とても短期間で「ミスマッチ」等と言うことを離職原因に上げるのは根拠に乏しいのではないか。「適材、適所」は人材開発の正に命題とすべきことである。中長期的とはなるが、助走期の「OJT」の再評価の中心となるであろう。
ここで先に示した「採用̶研修」の図を、その後の人材育成の方向と目標を想定して、一つの結節点として次に示しておきたい。入社後のいくつかの「キャリアパス」を経て、企業のベクトルとの接点となる形である。
全体として「仕事をするのは人である」という当然の命題を中心としてみた。左の円では「個々人」が企業社会の中で、自分の個性̶適性との折合いをつけながら、やがて自分のポジションを確保していくことを、「アイデンティファイ」としてまとめてみた。
一方企業の側は「適材、適所」を中心としつつキャリア形成と、「自己認知」のための支援を据えることによって、アウトプットの極大化を「企業のベクトル」としてまとめてみた。
もちろん経営としては、もっとマクロの視点があるが、敢えて人材力の蓄積を中心としてその極大化ということに結びつけた。
さて、助走期としての段階で「キャリア指向」をある程度予測できれば、その後のキャリアパスは効率的に伸展していくであろう。それはケースにもよるが、採用評価がその能力のクオリティに迫ることができて、この「OJT」段階での再評価との一致が得られれば可能である。試行錯誤的な、「ジョブローテーション」による人材育成から抜け出すこともできるであろう。この具体的なケースは次回に提出してみたい。
いずれにしてもより質の高い初期の「OJT」こそ、個々人の満足度と企業のアウトプットの極大化を結ぶ源となることは明らかだ。
社員の夢と企業のベクトルの一致がここに生まれてくるであろう。
インサイト No.19
2009年3月3日