筆跡心理学を生かす〜文字からパーソナリティを見抜く方法〜

日本筆跡心理学協会会長・近代経営研究所代表 根本 寛 氏

 季節も本格的な秋を迎え、高卒予定者の新規採用も終わりほぼ本年度の採用は最終段階に入っています。今年から高卒応募者の年代が「昭和」から「平成」へと変わり、時代の移り変わりを目の当たりにする機会が増えてきました。では、時代が変わったからといって応募者の人間性などが見極めやすくなったかというと現実は違うようです。むしろ、逆に難しくなったというご意見ばかりが目立ちます。
 今回「ヒューマンキャピタル勉強会」の本年第三回目として筆跡心理学協会会長でもあり、任天堂DS「脳トレ」シリーズの筆跡鑑定を監修されている根本寛氏をお迎えし、筆跡心理学を用いてパーソナリティーを見抜く方法をお話ししていただきました。

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■筆跡心理学を生かす

第1部 筆跡心理学を生かす〜文字からパーソナリティを見抜く方法〜

【筆跡から性格や深層心理が読めるのはなぜか?】
人が無意識に行っている行動にはよく性格が表れると言われています。筆跡も全く一緒で何気なく書かれた文字にも性格が表れるからです。

【筆跡が変われば性格も変わる】
ご自身の筆跡を変えれば性格を変えることができます。これは文字も考え方もそうですが、型から入って行動になっていきますから、筆跡を矯正すれば性格も行動傾向も変えることが出来ます。

【筆跡からわかること】(右の「大同団結」の字を用いてご説明します。)
①リーダー気質か協調気質か
 矢印で指した部分が長いか短いかで判ります。長ければ、リーダー気質。短ければ、協調気質の方と言えます。

②目立ちたがりやか入れこみ型か
 矢印で指した払いが左払いの大きい人は目立ちたがりや。右払いの大きい人は入れこみ型と言えます。

③粘り強いタイプが軽快型か
 ハネをしっかりしている方は、粘り強い方と言えます。逆に小さかったりすると軽快型と言えます。

④生真面目型が融通型か
 矢印部分をしっかりつけ、隙間なく書く方は生真面目型です。逆に少々隙間の開いた書き方をする方は融通型です。お金の貯まりやすい方は、後者の融通型ですが、矢印下のつくりに隙間があるとお金は入るけど、出るのも多いという方ですので気をつけましょう。

⑤包容力があるか無いか
 矢印の間隔が広いか狭いかで包容力がわかります。広い方は、ゆとりがあり包容力のある方。狭い方は、悪い言えば頑固職人型ですが名人と呼ばれる方に多いです。

⑥才気煥発型か執着型か
 才気煥発とは「一を聞いて十を知る」という方を指します。この判断をする場合は、「木」という字を書いてみてください。そのつくりで、横線が左側に突出している方は、才気煥発型です。逆に縦線が下に突出している方は、執着型の方です。

⑦コツコツ型が波乱型か
 「大同団結」と書いた時にその文字の大きさが同じであればコツコツ型の方で、字の大きさが大小乱れている方は波乱型の方です。

⑧行動力があるか無いか
 この判断は、与えられたマスに文字を書いたとき、その文字の大きさがマスいっぱいの大きさであれば行動範囲の広い方、行動力のある方と言えます。逆に小さい方は、行動範囲、行動力の狭い方と言えます。

【レイアウトから見える性格】
葉書に宛先を書いたときに字が右に寄る方は心配性の方で、字が中央に寄る方は明るくて陽気な方と言えます。また、郵便番号の枠下から隙間を空けずすぐ字を書く人はモチベーションの高い人であることを表しております。

【性格を表す字は何歳くらいから出て来るのか?】
自分の性格を表す字は、だいたい小学校後半ぐらいから出てきます。そして、20歳前後で性格を表す字のバターンが一通りできてきます。一生貫く筆跡個性が確定するのは、34歳〜35歳ぐらいのときです。

【運命を悪化させる書いてはいけない文字】

1.右傾文字(うけいもじ)
門構え、国構えに限りますが、右に傾いた字を書くことです。
この右傾文字は縦書きの場合のみ該当しますが、見るからに倒れそうな不安な心理が感じられる文字です。こういう不安な心理を書いているという人は、深層心理に不安定なものを求めるというものを持っている。倒産運とも呼ばれている文字です。

2.下狭文字(かきょうもじ)
文字の下が狭くなる書き方です。こちらの文字も不安定であることは一緒です。
右傾文字もそうですが、このような書き方をしていると心にフィットしますから、それは深層心理に持っていることを表しており、いつかは行動に出てきてしまいます。

3.交差文字(こうさもじ)
交差文字を書く方は、本来ぶつからない所をぶつけていく訳ですから普通の方とは、ちょっと違う感覚をもっている。普通の方は、文字がぶつかりそうになると避けようとしますが、交差文字を書く方は、避けずにぶつけた方が気分が良い感覚を持っており、現実的にトラブルメーカーになりやすい。採用側の立場としたら、このような字が書かれた履歴書を応募者が持ってこられたら避けられた方がよろしいでしょうか。

4.刃物運(はものうん)
交差型の文字ですが、社会的に許容されるタイプの文字です。「様」や「木偏」だけに特徴が出てきます。この文字を書かれる方の気質は、「気が強く」、「細かい事にうるさい」、「本質を見破る鋭さがある」。ですから、社会的に問題視される文字ではありません。

■第2部 筆跡診断の実践!

 第二部は、当日勉強会に出席された方の中から4名の方にご協力をいただき、事前に書いていただいた文字を基に根本先生に筆跡診断をしていただきました。また、日頃いただいているAS適性検査回答用紙から特徴的な字を書かれた方の2例を取り上げ、勉強会では初の試みとして、筆跡診断とAS適性診断報告書がどれだけ合致するのか参加者の皆様の前で立証してみました。

【筆跡診断とAS適性診断報告書は合致するのか?】
今回、受験者の文字を取り上げるにあたり事前にご承諾を得ております。

《根本先生による筆跡診断》
●名前が枠いっぱい、枠を少し出るほど大きく書かれており、行動力があり、行動範囲の広い方。但し、枠を少しはみ出しておりますので、組織のルールなどを破る傾向のある方です。
●「朗」の「月」の部分を見ると縦線が曲っている。このように線がくねくね曲っている事を線湾曲型と言います。線湾曲型の特徴は、テクニシャン、技巧者気質のであることです。
●同じく「朗」の「月」を見てみると右上の角が突き出た書き方をしている。これは、白黒をはっきりさせて、妥協しにくいタイプである。
●「藤」の偏と作りの間を見ると広くはない、故に自分の考え方、価値観に固執して周囲の意見を聞かない傾向がある。
★まとめとして、行動力があって組織の制約からはみ出る可能性が高い。周囲と協調して物事を進めることは苦手なタイプで組織人としてやや問題がある。自分なりの価値観や独特の美意識などがある様子でそれに拘り、周囲からのアドバイスや働きかけは拒否する傾向がありそう。しかし、一方強い拘りがあるのでそれに合致することには、普通のレベルを超えた行動力や頑張りを示すと思われる。

《AS適性検査の結果》
●合致していた部分
・AS診断結果報告書の「6.もち味としての行動」に「発想力に優れており、広い関心と興味をもっている」という記述があり、根本先生の「技巧者気質」という部分と合致していた。
・同じく「2.決定にあたっての重要ファクター」に「孤立化が予測される」という記述があり、根本先生の「組織の制約からはみ出る。周囲と協調することが苦手。」という部分と合致していた。

●合致していなかった部分
・AS診断結果書では、「行動力」の評価が普通程度、または「行動しにくい」といった評価がなされているのに対して、根本先生の評価では、字の大きさから行動力がある、行動範囲が広いとしており若干のずれも見られた。

【ご参加くださった皆様からの質問】
Q.走り書きや手紙を書く時など場合によって多少字が変わってくると思います。どういう場合に書く文字が信憑性が高いとかありますか?
 根本先生:筆跡心理学上、何気なく書いてある文字が一番良いです。また、走り書きの時ときちんと書いた時の字体は違いますが、その文字に現れる筆跡個性はあまり違いはない。

Q.右傾文字があまり良くないといわれておりましたが、左利きの方は右傾文字になりやすいように思えますがいかがでしょうか?
 根本先生:肉体の条件によって書きにくいということで出てくる側面と内面にあって心にフィットしてから出てくる側面と両方あることはあるが、左利きの人はちょっと判断は難しい。ただ、左利きの方が書く文字が必ずしも右傾文字とであるとは言い難い。

インサイト No.14
2007年11月20日

採用の失敗を防ぐ 適性検査HCi-AS

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