新卒採用2019年度スタート最新情報

日本女子大学リカレント教育課程 講師 尾方 僚 氏

 さる3月14日(水)、本年第1回目のお客様向け講演会が開催されました。
講師は、日本女子大学や日本工業大学で外部講師を勤められている尾方僚氏に講演頂きました。尾方氏は、上智大学を卒業後大手就職情報会社に入社、企業の採用コンサル業務を担当。独立後も、企業の人事全般アドバイザーや講演・研修活動で多くの実績をあげてこられました。近年「超」がつく人手不足の中、いかに応募者を確保するのか?学生とどう接したらいいのか?2019年度新卒採用シーズンの中、みなさんの切なる課題に具体的な対策も踏まえお話頂きました。レポートいたします。

■ 講 演

 みなさん、こんにちは尾方と申します。私は現在、日本女子大学や日本工業大学、デジタルハリウッド大学で授業を持っています。私の経歴もありますが、大学側から学生の就職相談等に積極的に関わって欲しいという要請があります。なので、本日はご参加の人事の皆さんが参考になるよう、学生の最新情報等も含めお話させて頂きます。

【採用活動の全体の流れ】

 私の大学では、業界セミナーと言う名目の合同企業説明会を、昨年の11/19、11/26、12/3に行いました。このときには上場・非上場含めて65社くらい来ていまして、学生はすでにスーツを着て回っています。これは私の大学だけでなく、各大学で同時期に業界セミナーと言う名の合同説明会を行っています。就職情報会社側は、12月にインターンシップ企業フォーラムというものを開催し、インターンという名目で学生を集めています。夏のインターンシップと違って冬のインターンシップは採用直結型になっている傾向はあります。大学内の合同説明会はこの後3月の初めにも行っておりますが、そこからは上場企業は参加していません。つまり上場企業は3月になると自社の選考にシフトするため、合同企業説明会には参加しないんです。3月の次は4/17に大学内の合同企業説明会があるのですが、こちらはJASDAQや未上場の企業がほとんどになります。11月・12月は上場企業がたくさん参加しているのですが、3月・4月は自社の選考に入るので参加しないという流れになっています。過去の12月解禁のスケジュールと違うのは、今の学生にほとんど焦りがないことです。どちらかというと企業さんの方が、学生が集まるのかどうかということでやきもきしているのが現状だと思います。全体の流れは以上です。

【大学側の取り組みと企業側の動き】

 現在、私の学校では2月に就職活動合宿というのをやっています。上位の学校はやってないかもしれないですけれど、割と新しい大学ですとか、偏差値の高くない大学とかは、就職課はとにかく就職させなければいけないということもあるので、こういった就職活動合宿みたいなものを始めているところが多いです。就職活動合宿では、泊まり込みで面接の練習をしたりエントリーシートを書いたり、スーツを着て挨拶の練習をやったりしています。
 3年生から4年生に上がる春休み中に何があるかと言うと、冬のインターンに行っていた企業からの呼び出しがあります。冬のインターンではグループディスカッションやワークショップをしたり、面接をしているところもあります。そういった企業から説明会に来てくださいと呼び出しがあります。ITベンチャーは動きが早くて、説明会に行ってその場で面談会という名の面接をやったり、すぐに一次選考、二次選考と実施していくケースが多いです。大学が始まるのは4月9日ごろからで、履修登録などがありますのでその時期は大学に行かなければいけません。また企業側も新入社員の受け入れなどがありますので、平日の呼び出しが難しくなります。ですから今の時期(3月)は平日に学生をよんでも大丈夫です。私が手伝っている埼玉の銀行さんなんですが、そこは家に帰る途中に立ち寄ることができる中継地点で夜7時ごろから説明会を行っており、実はこれが結構人数が集まっています。
 一方、6人来るはずの説明会に2人しか来なかったという企業さんがあって、その企業さんはどうしたかというと、説明会ではなく質問会に変えて、最後に2人のうち1人を残してインターンに来ない?と誘ったそうです。意外に学生が集まっていなくても、実際のところこうしたピックアップするやり方の方が効果的なのではないかと思いました。以前はできるだけたくさんの学生を集めて、そこから採用しないと採用の質が上がらないと言われていました。つまり量が質をつくると。でもこれは、元就職情報会社の人間が言うのも何ですが、学生をできるだけ多く集めさせるという就職情報会社のワナです(笑)。人数が足りていないという状況は、就職情報会社はいろいろと手を打てますから。私は量が質をつくるという時代は基本的に終わったかなと思っています。なぜかと言うと、先ほどの説明会でインターンに誘われた学生は、その会社のインターンに参加しようと決めました。当初の説明会という形であればそのまま帰っていたはずです。どういうことかと言うと、もう数人でもいいからとにかくピンポイントで学生を追っていく。最近の傾向は、大手ナビに頼るのではなく、少し手間はかかりますがいくつかの方法を融合して工夫しながら実施していく方法がいいと、私の周りの学生を見ていて思います。

【今どきの学生について】

 この間ちょうど銀行さんから若い世代の話をしてくれと言われて、「若手の能力を引き出すマネジメント」という講座を担当しました。何よりも違うのが、例えば元気があってやる気のある学生が欲しいといったイメージがあると思うんですが、それはもう取っ払った方がいいかもしれません。もちろん一般的な常識は必要なんですが、元気に挨拶が出来ないからといって悪い学生ではないということです。一般的に押しの強い学生の方がいいなと思われがちです。でもそればっかりではないなと私は感じています。
 「バズる」って言葉わかりますか?「バズる」っていうのは流行っているという意味です。あと「り」ってわかりますか?これは「了解」です。というように今の学生が使う言葉は変わっています。例えば、今急に日本語が通じない留学生が入ってきたとして、挨拶がきちんとできないからといって怒りますか?たぶん、挨拶っていうのはこうやるんだよとか、仕事の手順っていうのはこういうもんだよとか、皆さんちゃんと教えると思うんです。それはその人が海外から来て日本語が通じないから。今の若者もそれと同じと思ってください。海外から来た人と思ってください。そうすれば皆さんたぶん怒りもなくなって一から教えないといけないと考えます。決して若者を甘やかしていいと言っているのではなく、異文化の人と思ったほうがストンと上手くいくのではないかと思います。
 それから彼らはデジタルネイティブという世代です。今度の大学4年生に聞きましたら携帯は最初からスマホだそうです。ガラケーの存在は知っていても使ったことがない。学内の合同企業説明会で企業の方に名刺をもらったという学生がいたので、すぐに挨拶のメールを送りなさいと言ったら、スマホでメールをバババと打ちます。メールに署名もちゃんと入るそうです。今はパソコンよりもスマホを使い慣れている学生が多いということは認識しておく必要があります。
 それと今「社会貢献」という言葉ってうんざりするほど学生から出てきて、「社会貢献」ってなんだよみたいな感じがあります。でも彼らは良い人間とみてもらおうと「社会貢献」って言っているのではなくて、本気で「社会貢献」というのを考えています。「社会貢献」というものがデフォルトで身についている世代なんだなと、私は思っています。

【面接の留意点1】

 まず面接に入るそもそも論ですが、企業さんにとって必要な人材はどういう人材ですかというときに、コミュニケーション力がある人だとか、こういうことが出来る人だとか皆さん仰られると思います。それがまず明確になっていないといけないんですが、企業さん側の面接官がそもそもコミュニケーション力がないといったようなことがあるんです。そうすると学生の方がはっきり言って引きます。ご自分たちが面接をしているという立場なんですが、学生からも見られているという認識をまず持たなければなりません。きっちりとこういう学生が獲りたいというものがあるのであれば、まずご自分たちがどうなのかを振り返ってみる。あるいは面接をする面接官が本当にその社員でいいのかを振り返ってください。それと決裁権のある方が最終的に物事をひっくり返すのであれば、決裁権のある方は、1次面接は難しいと思いますので、2次面接くらいに出てきてください。最終面接には出て来ないで頂きたい。若手の面接官が良いと思って最終まで進めた学生を決裁権のある方にひっくり返されてしまうと、若手のモチベーションが下がります。

【面接の留意点2】

 次に、面接の最中には合否の判断は学生に伝えないということです。つまらなそうな顔をする、もちろんそれとわかる行動もやってはいけませんけれども、ノンバーバルコミュニケーションという表情にも気を付けていただくということが重要です。
 それから個人的な好き嫌いによる誤差というものがあります。これは面接官の好みに合った人を良く、合わない人を悪く評価しがちな傾向です。基本的に人が人を採用するものなのでこういうことはあって当たり前なんです。あって当たり前だと分かったうえで、自分に線を引くことが重要です。自分の好みで決めていないかを一瞬考えるということです。
 それと、固定観念による誤差というものがあります。口数が少ない人は思考的な性格であるとか、血液型がB型だとどうだとか根拠のはっきりしない思い込みによって物事を判断する傾向。これにも気を付けなければなりません。
 ハロー効果による誤差。これは全体的な印象や特定の印象などに影響されてその印象に合うように評価してしまうことです。例えば、海外生活が長いのでコミュニケーション力があるだろうとか、体育会で部長を務めたことがあるから責任感があるだろうといったようなものです。実際に体育会の部長で責任感があるのかもしれませんが、面接で聞くときには学生がやってきた行動と経緯をしっかり聞いていただいて、本当にリーダーシップを発揮していたのかを確認しないといけません。

インサイト No.54
2018年6月20日

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