三代目ホッピーミーナの波乱万丈採用戦略物語

ホッピービバレッジ株式会社 取締役副社長 石渡 美奈氏

本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
 さて、毎回高いご評価をいただいておりますヒューマンキャピタル勉強会。昨年は、集英社の高野氏から始まり計4回開催することができました。これも皆様からいただくご評価や次回開催への強い要望のおかげです。
 今回は、昨年12月にホッピービバレッジ株式会社の石渡美奈氏をお迎えしました。ホッピービバレッジ様は、HCI-AS適性検査のユーザーでいらっしゃいます。また、ご講演いただいた石渡氏は、9月に「社長が変われば会社は変わる!」を出版され、ラジオDJもされるなど多方面でご活躍されております。終始軽快なトークで進んだ勉強会のエッセンスをお読みください!

■ 講 演

■第1部「三代目ホッピーミーナの波乱万丈採用戦略物語」

【創業97年老舗メーカーを改革!しかし・・・】
 私は、会社を良くしようと思い、環境整備や朝礼など新しい仕組みを取り入れていきました。しかし、その結果、管理職はじめ多くの社員が「辞めたい!」と言い始めてしまったんです。最初は、なぜ?と思いました。でも、社員の意見に耳を傾けると、説明もなくどんどん取り入れていってしまった結果、社員に戸惑いが生まれていることが分ったんです。そして、私自身それに気付くことが出来なかった故に起きてしまったことだったんです。

【改革・改善とは捨てること!】
 改革・改善という言葉を使いますと難しく聞こえます。しかし、経営の師匠である小山昇氏から「まずゴミを捨てることから始めろ」と言われました。改革や改善と言われると何をして良いのか分りませんが、「捨てろ」と言われれば考えなくてもできることです。私たちは、製造工場に全社員集まって机から椅子から書類からキャビネットから必要でないものは全部捨てました。

【なぜ新卒採用を始めたのか?】
 はじめ、新卒採用には後ろ向きでした。その理由は「受け入れる体制が整っていないから」。しかし、そんな思いのなかで新卒採用を始めた切っ掛けは、周囲の中小企業経営者仲間が口々に言った「会社を変えたかったら、新卒採用をやるしかないよ」「三代目として、三代創業を起こしたいのなら新卒採用しかないよ!」という一言でした。

【新卒採用を始めたことで変わったこと】
①会社が変わる。
今年度、7人の新卒社員が入社しました。その結果として、半年後、旧態依然とした会社の体質が変りはじめました。
②幹部が変わる。
新卒を採る前までは、事務的に仕事をしていました。しかし、新卒採用を始めてから幹部社員がおしゃれになり、メキメキ仕事をするようになりました。なぜか?自分の子供と同世代の新卒が入ってきたことで、「かっこいい所を見せたい。」「しっかり仕事を教えてあげたい」などの張りあいができたからです。
③社長が変わる。

【ホッピービバレッジの採用の流れ】
 ①説明会(一次選考会とHCI適性検査を実施)→②懇親会・・最終面接に行く間に懇親会を挟んでいます。懇親会では、会社近くのホッピーを置いてあるお店で私と社員と学生たち(応募者)で飲むんです。学生には「合否は関係ない」と伝えています。その上で普段の会話、お酒を交えることで出てくる本音などからお互い価値観が合うか合わないかを判断しています。→③最終選考へ。

【内定者のご両親には必ず挨拶に行く!】
私は必ず毎年2~3月に内定者のご両親に挨拶に行っています。また、今の会社の状況などを記載した内定者通信を作成し、内定者本人とご家族に送付しています。私は、挨拶の場で会社の過去のこともありのまま話し、最後に「息子さん(娘さん)を預からさせてください」とまさに結婚の挨拶をするようにご両親に思いを伝えるようにしています。そうするとご両親からは「本当は預けたくなかった。なぜ、小さい会社に入れさせなければならないのか」と言われたことも多々ありました。でも、最後には必ず言われます「子供が決めた結論だから、送り出します。どうか、これからは石渡さんが育ててやってください」と。
 私は、挨拶に行くたびに新卒を採用するっていうことは、ご家族の思いも含めて、若い人生を預かることなんだなと改めて「預かります」「育てます」という口先だけではなく、責務を感じています。その時に私自身変わりました。この子達と約束をした「つぶれない会社を作る」「次の100年、200年続く会社にするんだ」を守らなければならないという覚悟を持てました。

【内定者教育は私がしています!】
 内定出しから入社前までの内定者教育は私がしています。内容は、ミーナ・イズム教育ですね。経営者である私がどういう考えで、どういう方針で、どういう価値観で会社を200年続く会社にしたいかを伝えています。
 また、「仕事が出来る人の心得」(小山昇著)を教科書にして、毎週、その中から好きな言葉を選んで感想を書かせて、その内容に対して私が返信をしています。
 その他、ボイスメールを利用して、内定者と毎日会話をするようにしたり、月一回集まって研修を行ったり、その研修後、飲みに行ったりすることでコミュニケーション、接触する回数を増やすようにしています。
 そうすると内定者の段階から価値観が合うようになっていきます。ちなみに一人の研修費は150万円程度です。
 また、毎日のようにコミュニケーションを取っていると、内定者がどの方向性を向いているのか、内定を辞退したいなども分かるようになります。ですから、次の説明会では一次から二次にあげる人数を多くするなど調整しています。その結果、7人、11人と採用ノウハウがなくても確保できるようになっています。

【私と内定者・応募者との約束】
 採用するときに私と彼らは約束をしています。それは「共育」産業であるということです。
 この会社は経営者と共に社員と会社が育つ会社ですよ。だから、受け入れ態勢も整っていないし、教育体制も整っていないから苦労しますよ。苦労するけれども私と共に育つことに喜びを見出せるのであれば喜んで会社に来て欲しいと。ですから、説明会ではありのままを見せるようにしていますし、懇親会で飲み会などもしているんです。

【私は、利益の出る会社にしたい!】
 利益があるから人を採るのではなく、人を採りたいから、会社を良くしたい。新しい血(新卒社員)が入ってこなければまた会社が腐っていってしまうから、利益が取れる仕組みにしようと私も頑張っています。

【ホッピービバレッジの2008年新卒採用のコンセプト!】
とにかく見せる!伝える!です。ちなみに採用コンセプトは毎年変えています。
見せる⇒「魅せる」・・細部までこだわった採用活動。どうしたらもっとホッピーを見せられるのか考え抜く。魅せるコトで、他社との差別化を図る。

伝える⇒「伝わる」・・現状を赤裸々に語る。学生の心に響く。一方通行ではなく、学生と双方向でお互いが「伝わる」コトを意識して話す内容や資料を組み立てる。

単なる説明会では終わらせない!社員と学生が共に楽しむ説明会を!《*勉強会で配布された講演レジメ参照》

【内定者・新卒社員の声】
 今回の勉強会には、ホッピービバレッジ様の内定者、昨年4月に入社された新卒社員の方にお越しいただき、ホッピービバレッジ様に入社した理由、研修の感想などを話していただきました!

●石渡さんに惚れた!この会社に入ったら楽しく社会人になれるのではないかと思ったためです。実際入ってみて、研修は本当に厳しいです。でもそのたびに自分が成長していることを感じられています。
●様々な企業の説明会に参加しましたが、ホッピーさんの説明会に参加した後、「会社に入りたい」のではなく、「ホッピーで働く人々の仲間に入りたい、あの人たちと働きたい」と思いました。
●入社して半年。仕組みなど整っていないところも多々あります。ただ、ゼロから一緒に作れる喜びを感じています。

■第2部「石渡さん、これだけは質問させてください!」

第2部は、弊社取締役甲野文彦と当日ご参加された皆様からの質問に答えていただきました。
今回は、これまでになく多くの方々が質問され、また質問の内容もホッピービバレッジ様の採用や研修内容の核心に迫るものばかりで、途中石渡様がタジタジになられるほどでした。
今回は、その質疑応答の一部を掲載させていただきます。採用について真剣に考えられている皆様のやり取りをお読みください!

Q.全社員にAS検査を実施したとのお話ですが、社員から受検することの不安の声などは出てきませんでしたか?
 石渡「出てこなかったと思います。受検前に進退伺いのために使うものではないってことは伝えてましたし、「適材適所」ってあるじゃないですか。それを誤ってしまうとあなたたちを不幸のどん底に落としてしまうことになるから、そういう過ちを私が犯さないように強みを知りたいから私も含め受けようと伝えました。」

Q.良い社長、良い経営者になりたいと仰っていますが、要素や条件はありますか?
 石渡「社員とその家族が夢と希望をもって暮らしている。うやむやに会社を大きくすることではなく、夢や希望を共有している社員とその家族を守れるかどうか、お客様の夢を守れるかどうかだと思います。」

Q.採用現場において、優秀な方を絞り込む作業があると思いますが、その絞込みの基準などはありますか?
 石渡「明るく素直で元気な人ですね。これはAS適性検査にも出てきます。明るく素直で元気な人か、そうでないかが。特に適性配置予測を見てます。うちで求めている人材は、適性配置予測の下三つの項目(活動的業務、対人的業務、変化対応的業務)が高い人を求めています。あとは、面接の質問で明るく素直で元気な人かどうか分かる質問内容を入れています。これは、誰にも伝えていない秘密の内容です。」

Q.内定から入社までに一人150万円位のお金を掛けていると仰っていましたが、それは大きな金額だなと感じました。それはどんな内容になっているんでしょうか?ボイスメールとかでお金が掛かるとか・・・?
 石渡「ボイスメールもそうですし、実際に研修も受けたりとか、交通費・宿泊費も含めています。あとはいくつかの研修も受けさせてますので・・・」

Q.その「いくつか」の研修を教えてもらえないでしょうか?
 石渡「まぁ・・・まぁいろいろと!外部の研修も受けさせています・・・。」

Q.新入社員を採ることによって会社を変えるという考えのようですが、中の社員とギャップがでませんか。我々(人事)が携わっている時は比較的高いモチベーションで進められるんですが、配属先でガクッと下が
ってしまうことがあるんです。その辺りの対策、アドバイスがあれば教えてください。
 石渡「仰るとおりです。それが一番怖いんですね。ですから、我が社は幹部も一般社員も同じ教科書を使って勉強して価値観を共にしています。ですから、ボイスメールなどを使って内定者の声などを社内に飛ばしているので価値観が共有できたりしています。でも、それでも不安はありますので新卒1年生については、3ヶ月に1度私と1年生だけの懇親会を開いて、価値観のずれや不平不満を取り除くようにしています。あとは、部門懇親会を開くようにしまして、1ヶ月に1度部門ごとの懇親会を開くようにしています。
また、先ほどご両親に挨拶に行くと言いましたが、実はご両親が私の味方になってくれているんですね。ですから、新卒社員が辞めたいとか不安を感じ始めても、親御さんが応援してくれていたんです。だから、誰もこぼれずにいるという事実はあると思います。」
以上

インサイト No.15
2008年2月1日

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