『目からウロコの採用力アップセミナー』

株式会社求人 代表取締役 石塚 毅 氏

 さる6月19日(水)、お客様向け講演会2019年度第2回目を開催致しました。
講師には、採用求人の専門家株式会社求人の代表取締役石塚毅氏をお招き致しました。
会社名が物語るように、石塚社長は前職のリクルート時代2008年度年間MVP受賞をはじめ数々の採用成果の実績をあげ、独立されました。21年間で7,000社、2万件以上の求人担当実績を実現しておられ、当日の講演では参加した人事担当者が、明日からすぐできる実践的手法を惜しげもなく公開頂きました。講演の要約をレポート致します。

■ 講 演

【はじめに】

 募集をかけても応募者が来ないということを日本各地どこに行っても聞きます。その理由を人手不足という一言に押し付けて、具体的な対策をとっていないという方が多いのではないでしょうか。少しマクロの話をしますが、18歳以上の人口、就業が出来る人口というのはどんどん減っていきます。よく言われるのが2020年のオリンピックの前の年から急坂を転げ落ちるように減っていきますと。そうするといずれ若年人口は減ってとか、おきまりの話しになるわけです。でも、これはある要素を全く入れてないんです。それは何かというと、事業所の数自体が減っているということなんです。特に中小企業の事業承継が上手くいかないのが要因です。飲食業でも、いいお店なのに潰れてしまうとか多いんです。マクロな話っていうのはあまり気にしないでください。商売に関係ないですから。年間100人、200人を採用するというのを毎年続けなければならないとなると、また特別なことを考えなければならないですが、今日お集まりの皆さんの会社はそんなに採用人数多くないとお聞きしています。今どこに何人必要ですか?それが20人~30人だったら絶対に解決します。マクロでは確かに人口は減っていきますけれど、必ず二極化します。今でもそうです。人手不足だの、採用困難だの、そんなの全く無縁という会社、私はいくつも知っています。飲食業でも人手不足とは無縁の会社も私は知っていますし、いわゆる社会的地位が低いと言われているところでもちゃんと人集めをやっているところや、地方でも採用が成功しているところもたくさんあります。
 人手不足倒産とよく言われますが、倒産って資金が切れて倒産するので、人手不足廃業というのが正しい言い方です。実際、人が確保できていれば会社は続くんです。逆に、従業員数10人未満で平均年齢60歳という会社はすごく危ない。半年であっという間に廃業に追い込まれるケースを何度も見てきました。10人未満の小規模事業所って、採用の難易度が一番高いんです。小規模な事業所はほとんど人間関係が長い間固定しているので、そこに人を入れるってすごい難しいんです。それは地元の常連ばっかりがカウンターに座っている居酒屋に、一見で入るようなもんです。そういうところは長年人間関係ができているんで言葉にならなくてもコミュニケーションができる、それが当たり前になってしまう。ここに新人が入るって難しいんです。でもそれが分からない。自覚がないから。中小企業なので採用が難しいって言うんですけれでも、切り分けしないといけない。だからマクロな話をするのではなく、自分の会社がそのエリアや業界でどうやって残るのかっていうのを具体的に考えないといけません。その解決策は必ずあります。今からお話します。

【今までの常識が通用しない時代】

 資金がショートすることと人材がショートすることは同じレベルの経営リスクと考えてください。もし「3,000万ショートするんですけど」という電話がきたら飛び上がりますよね。私だったらすぐ帰ります。資金ショートって会社にとって死を意味するんで、必ず原因を究明するし、もしそれが事実だとしたらすぐ動かなければいけない。しかし人材がショートしていると、例えば本当は5人で回さなければいけないものを3人で回しているとか、そういう情報っていうのは上にあがってこないんです。次の3つの現象が起こっていれば、人材がショートしてやばい状態になっているかもしれないなと思ってください。①現場にいくと最近社員が目を合わせてくれない。②これはと思っていた部署のキーマン・キーパーソンが辞めると言い始める。③まとまって人が辞める。この3つ、もしくはこの3つが組み合わさった場合、相当何かが進行しています。日本人ってすごく耐えるところがあって「冗談じゃないですよ~、社長なんとかしてくださいよ~」なんて言う社員は、本当は孝行息子・孝行娘なんです。そんな社員は実際どこにもいませんけど。みんな我慢して飲み込んでいるんです。社長や上司にそんなこと言える人いないんです。みんな我慢して我慢して人材ショートしてそのしわ寄せが誰に行くかっていうと、一番大事にしないといけない孝行息子・孝行娘の社員なんです。兄弟がたくさんいて、できるお兄ちゃんやお姉ちゃんができない子の面倒を見る、そのしわ寄せを全部長男長女が受けている、という例えでしたらわかりやすいですか。皆さんその長男長女と最近ちゃんと話しましたか?ワンツーワンでミーティングして、君の役割こうなんだ、君の仕事ぶり見てるよ、ちゃんと評価してるよって言葉でわかりやすく説明していますか。ボーナス弾むよりも、そうやってコミュニケーションをとることがとても大事です。そういうことをずっと怠って我慢させて我慢させて誰から辞めていくかというと、辞めてほしくない人から辞めていくわけです。こうなると非常に深刻です。人材がショートしているというのは資金ショートと同じくらいのリスクです。ですのでこれからはぜひ採用のことを考える前に既存の社員、人的リソースがどうなっているのかというのをもう一度チェックしてみた方がいいと思います。
 人材採用は、普通のことをやっていてもだめで、思い切ったことをやらないと対策になりません。まじめで硬い考え方をしていると今の時代手遅れになります。採用の常識って言われていることは全部疑ってかかってください。新卒中心に採用します、あるいは日本人だけで会社組織を作ります、昇給やベースアップはし続けなくてはいけない…、これらは全てかつての常識です。時代は変わっています。社員だって昇給よりも欲しいものがある人もいます。第二新卒どころか「第三新卒」、つまり3社目の入社になる20代、これが実務レベルで結構いい戦略になったりするんです。「第三新卒」って私の造語なんですけれど、考え方やアプローチをどうするか、常識をリセットして考えないといけません。

【求人認知】

 採用とは会社や求人内容を、どう求職者に求人認知させるかの競争である。これが採用の定義です。採用しているんだ、募集かけているんだと求職者に知らせること、これを求人認知と言います。だから応募がないっていうことは気付いてほしい人に認知されていない、ということです。要は求人認知されていないか、認知のさせ方がまずいのかどちらかです。
 どこで求人認知するのか。求人認知する場所のことを採用ルートと言います。求職者が御社と出会う場所です。採用ルートはいっぱいあります。ネット広告、SNS、インディード、ホームページ、屋外広告、張り紙広告、フリーペーパー、ハローワーク、縁故採用…、これ全部採用ルートです。採用ルートって話になるとすぐリクナビやマイナビの営業マン呼んで、って話になるんですけれど、求職者が御社と出会う場っていうのはいっぱいあるんです。中小企業や小規模事業所って求人認知に時間がかかります。特に有料の求人業者では短期決戦用に作られているから。つまり大企業用なんです。大企業は知名度があるから短期決戦でも応募があるからいいんです。ところが中小企業はだいたい求人認知に6ヶ月くらい必要なんです。6ヶ月=24週かかるのに1週いくら2週いくらの掲載料金だったらお金が足りないんです。時間がかかるってことは、ランニングコストを限りなく0円にしなければいけないってことなんです。有料の採用ルートよりも無料の採用ルートをうまく活用した方がいい。

【ハローワークがお薦め】

 なぜ私がハローワークを活用するかというと、ハローワークは実は2つの「採用ルート」を作れるからです。ハローワークは日本で最大の無料のネット求人媒体です。よくインディードどうですかと聞かれるんですが、下手にインディードにお金を使うよりは、無料のハローワークを活用した方がいいです。ハローワークの方が検索して上位に上がりやすいですし、見られやすいからです。ハローワークは全国に拠点を持っています。ハローワークの事業所部門ではなく、求職者が相談に行く求職者部門に自分の会社の求人票を持って行って周知してもらったことはありますか?是非行ってみてください。壁一面に求人情報が張ってあって、毎日個別の企業説明会をやっているところもあります。そこに自社の求人の内容、採用ターゲット、会社のメリットを直接説明して、もしいい人がいたらうちの求人を紹介してもらえませんか、とお願いする。これが典型的なリアルな「採用ルート」です。
 ハローワークの求人票ってどのくらいの情報量があるかというと、文字数で約1,000字位使えます。求職者にとってどんな会社なのか、どんな特徴があるのかに各90字、仕事の内容にいたっては297字まで入れられる。情報量があるので具体的に書いていけば求職者にきちっと伝えられるという利点があります。
 求職者がどうやって求人を探すのかというと、今はスマホで探します。これは年齢とか地域とか関係ありません。50代、60代の方でも結構スマホで探してきます。どういうキーワードを入れたら認知されるのかというと、次の4つです。①「場所」どこで働きたいか。20代は転勤とか実家・地元を離れることを嫌がる人が増えました。②「働きたい業界・職種」③「勤務形態」正社員で働きたい人もいれば、週2日働きたい、午前パートなど、いろいろあるんです。④「自分のこだわり」一番多い例は、未経験者でも応募可能ということ。あなたは応募対象に入っています、ということを丁寧に書いていないと絶対に応募して来ません。

【求人票作成のノウハウ】

 さて、求人票にはどんな情報を記載すればいいのでしょうか?
この求人に応募するとその求職者にどんないいことがあるのか。今よりもプラスになる、今よりもポジティブになるといったことが分からなければ絶対に求職者は応募しません。結果が見えない採用情報というのは意味がないんです。結果って何かというと、求職者の心を動かすもの。採用ターゲットはどんな人なのかというのを、具体的に明示しなければなりません。採用ターゲットを明確に描いた求人票を紹介します。
 「〇〇会社は下記に該当した社員が何人も働いています。こんな方が〇〇会社に向いています。1、中学・高校と勉強もスポーツも頑張ってきたのに入った大学に納得がいかず早まって中退してしまった人 2、自分は何かができると思っているが、その何かが分からない人。その何かを一生懸命に探している人 3、頑張ったらちゃんと評価されたい人、自分の居場所が欲しい人、尊敬できるプロに仕事を教えてほしい人」
 求人票を見たときに採用ターゲットに対して、丁寧すぎるくらい「あなたです」ということをわかるように書いておかないといけないんです。具体的に明記しておけば、スマホでいろいろと求人を探しているときにキーワードからこの求人票に辿り着く可能性が高い。そしてこの求人票を見た人が「これは自分のためにある求人票じゃないだろうか」と思わせる。つまり心が動くということ。採用したいターゲットの心を動かして応募につなげるということが重要です。
 いろいろお話しましたが、人事の皆さんが多忙なことは充分理解しています。ただ、求人情報会社の営業マンに仕事を丸投げでは、皆さんの会社に応募しようとする求職者の心を動かす求人票は作成できません。今日話した中で一つでも参考にして頂き、皆さんが知恵を絞り求人認知に一歩踏み出して頂きたい。応援しています。
 もし、お手伝いが必要であれば、いつでもヒューマンキャピタル研究所を通して、お声をかけてください。本日はありがとうございました。

インサイト No.59
2019年9月11日

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