心療内科の現場レポート – メンタルヘルスの対策とは
葛西クリニック院長 葛西浩史 氏
1950年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、現在横浜と渋谷で気の医学と呼吸法を取り入れた心療内科クリニックを開業。「活」副編集長。
専門はストレス管理学、心身医学、東洋医学。
著書に、「医療心理のための心身医学」(共著、医薬ジャーナル社)、「心と体の健康ノート」(共著、フィスメック)、「心身症診療」(共著、六法出版)、「読む総合病院・働き盛り編」(共著、NHK出版)等がある。
■ 講 演
お客様勉強会 講演より
当社は定期的にお客様を招き、HCi-AS検査をよりご理解いただくための勉強会を開催しています。さる1月28日の会では、横浜で心療内科を開業されている葛西浩史先生から、「心療内科医の現場レポート―メンタルヘルスの対策とは」と題しまして講演をお願いいたしました。当日のレポートです。
「ユーザー勉強会」第二部講演:「心療内科の現場レポート」葛西浩史氏
うつ病と診断されるケースの人で、外来病院に行く割合は3割程度しかない。要するに日本社会では自覚していない人も含め、相当なうつ病の層を抱えていることになる。
うつ病の定義
「気分が重く沈みこむ」「何をやっても上手くいかない」という症状が2週間以上続いた場合は、うつ病の傾向があると判断出来る。よく見られる症状としては「食欲がない」「疲れやすい」「よく眠れない」等。
一般的に「うつ」の特徴は、朝一番の気分は落ち込んでいるが、日中になると徐々に元気になる傾向がある。
うつ病の診断~うつ病の治療には、まず複数の心理検査を試みる
① SDS(50点以上が危険領域)
② CES-D SCALE(16ポイント以上が気分障害の領域)
③ STAI(不安テスト60点満点~スコア、点数が低すぎても問題である)
※ 交通事故を多発させる人間はスピードを出しても、それを不安に思わないため(不安の麻痺)結果事故に繋がる。
④ TEGエゴグラム(一般的検査)
うつ病患者の特徴
うつ傾向の人は、どうしてもまじめで仕事熱心な面がある。且つ指示された仕事を断れないため、オーバーワークになってしまう。上司から見れば忠実に仕事をこなし、健康な時は生産性が高い。場合によっては自宅へも仕事を持ち帰るくらいの人である。ただ、車で言うと、泥沼や砂の中でエンジンを噴かしても車輪が空回りしているのと同じ状態で、自分ではどうしようも出来ないのが現状。やはり第三者の助けが必要となる。
対処法
①自分の好きなことを思いっきりやること。ストレス発散の一番の方法である。
②呼吸法。ストレスを防ぎ、神経伝達物質を増進させる効果がある。
お金もかからず、手軽であるのでお奨めする。
・丹田呼吸法(1分間呼吸法)
吸う(3秒)→止める(2秒)→吐く(15秒)の1セット20秒×3回(60秒)=1分間
1日の中で、ちょっとした時間をみつけてはやってみる。
③周囲の協力が必要。うつ病患者は、自分で仕事を抱え込み黙々と期待に応えるべく頑張ってしまうタイプなので、周囲は少し気を抜くようにアドバイスをするべき。自分ではのめり込んでいる事を自覚していない。勉強熱心が高じ、周囲の期待に応えよう、より成果を上げようと睡眠時間を削っても勉強してしまうので、あまり行き過ぎる場合は息抜きをすることを助言する。「うつ」になった人に「頑張れ!」は禁句である。うつ病の人は頑張り過ぎて限界まで来ているため、その上になお「頑張れ!」と声を掛ける事はよけい追い込むことになり危険である。逆に「頑張ったことを認めてあげる」、「少し休ませる方向にもっていく」事だ。
いずれにしても、心療内科の現場からみると、ますますこの状況は深刻化すると思われる。本人も気がつかない場合が往々にしてあるため、周囲の人の力が必要である。
インサイト No.3
2004年4月21日