個人情報保護法と採用担当者の知識

ネットビジネス事業部 HRビジネスグループマネジャー 横島 彰

★COMPANYプロフィール「ヒューグリーン株式会社」
(東京・江戸川区/社長 吉野健一郎/URL:http://www.hiugreen.jp)
企業の人財開発を支援するASPサイト「人は財(たから)ドットコム」を運営する課題解決型ITベンチャー。同サイトでは「e-素質」(人財アセスメントサービス)、「e-Staff」(人事給与システムASP)、「e-Brushup」(eラーニング)ならびに、人事マネジメント全般についての各種情報サービスを展開。ベンダーにとらわれない中立的な視点で、「よりベターな解決策」を顧客に提案・提供。情報セキュリティを中心としたIT分野だけでなく、人事分野の最新テーマについて積極的に情報を発信。同社が独自に主催する時宜を得た各種セミナーも好評。

採用の失敗を防ぐ 適性検査HCi-AS

■ 採用するにあたって、これだけは知っておきたい個人情報保護法と採用担当者の知識

 最近、企業の採用担当者から「個人情報保護法が施行されて、採用時に適性検査を実施するときに注意すべき点はあるか」とか「不採用になった応募者から採用時の選考基準や評価内容についての開示の請求があった場合はどう対応したらよいか」という質問をよく受けるようになりました。各企業の採用担当者は、今年4月の個人情報保護法の施行により、現場でいささか敏感すぎるくらいに対応に追われていることと思います。
 そこで、個人情報保護法と採用に関する基礎的なお話をしたいと思います。

経済産業省のガイドラインでは、「雇用管理情報」は、個人情報に該当するとしています。したがって、従業員の人事評価や採用予定者の評価なども個人情報に該当します。

◎募集するにあたり事前に対応する点

①あらかじめ利用目的を明示する
本人から直接取得した個人情報(履歴書・職務経歴書)や採用時に取得した個人情報(面接時の評価シート・適性検査や能力検査等の診断シート)は、あらかじめ利用目的を応募者に明示する。

②本人からの同意を得る
利用目的や面接時に行う内容をあらかじめ応募者本人に明示し、同意を得ることが望ましく、後日の予防のため書面で交わすことをお勧めします。
募集要項等に利用目的を事前に明示し、同意書を他の履歴書等の書類と一緒に送付させること等が考えられます。
例:記載いただいた個人情報や採用活動中に取得した個人情報は、採用の採否の決定や採用後の教育及び配属先の決定等の人事資料に利用します。不採用者の取得した個人情報は、採否の決定後、破棄・削除いたします。

◎開示しないことができる2つのケース

①「当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」に該当する場合
(法第25条第1項第2号)もし、採用試験における応募者の評価や選考基準の開示を求められたとき、これを開示するとすれば、応募企業は適切な評価ができなくなり採用業務の適正な実施に著しい支障をきたすおそれがある。この場合は、開示の請求があったとしても応じないことが認められています。

②「保有個人データ」に該当しない場合(法第2条第5項、政令第4条)
「保有個人データとは、個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データ」を言います。しかし、政令第4条に該当する「6ヶ月以内に消去することとなるもの」については、データの内容上、個人の権利利益に重大な影響を及ぼすものが少なく「保有個人データ」にならない情報となります。つまり、6ヶ月以内に消去するものとなる個人データは、「保有個人データ」に該当しないため開示請求に応じる義務が生じなくなります。
なお、以上の点においても応募者へ事前に明示することが必要となります。
例:○採用活動中の方の個人情報について
本人の要請に応じて合理的範囲内で開示、訂正、削除に応じます。ただし、採用判断に関わる情報の開示は、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるため応じておりません。
○採用された方の個人情報について
就業後は雇用管理の範囲内で管理・保管します。
○非採用となった方の個人情報について
採用活動終了後すみやかに適切な方法により破棄・削除を行います。

以上の点を参考に、法務担当者等と十分に相談するなど事前に対応することにより、無用なトラブルを避け、円滑な採用活動ができると思います。
各企業の採用責任者にあっては、採用時の個人情報取扱の窓口などの体制を整備しておくことをお勧めします。

インサイト No.7
2005年6月1日

採用の失敗を防ぐ 適性検査HCi-AS

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