採用難時代の新卒・若手社員採用の極意
株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング 代表パートナー 小川晴寿 氏
9月17日に定例の弊社お客様向け『ヒューマンキャピタル勉強会』を開催しました。本年は、新卒の採用スケジュールの変更や、売り手市場という環境から、多くの皆さんがご苦労されたようです。
そんな皆さんへのアドバイスにタイムリーな講演を、株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング(http://www.h-mbo.com/)の代表パートナー小川晴寿氏にお願い致しました。本稿では、当日の講演内容から新卒の採用活動におけるポイントについて、弊社猪俣が報告いたします。
■ 講 演
① 人材のこと・自社のことを知る
学生が考えていることと企業側の考えていることの間にはギャップが存在します。そのギャップを埋めることで学生を呼び込む基礎を作ります。
学生が企業選びの際に重視していたのが、企業の雰囲気や社風。JobWebの就職活動アンケート(図①参照)では、約71%の学生が重視していました。企業側は往々にして自社のサービスや商品の説明に重きを置いてしまいますが、こういった学生の志向を考えると自社の雰囲気や社風を上手く伝えていかなければならないことが分かります。
今の学生は売り手市場であり就職に有利であると言われていますが、多くの学生は就職することに漠然とした不安を抱えています。日本労働組合総連合会が2014年に発表した就職活動に関する調査(図②参照)によると、69%の学生が「どこにも就職できないかもしれない」と考えています。また、41.7%の学生は「ブラック企業に就職してしまうかも」という不安も。ブラック企業については昨今マスメディアで取り上げられることが多くなり、学生はブラック企業に対して過敏になっています。インターネット上の会社の評判や、先輩や知り合いからの噂などの「口コミ」からブラック企業であるかどうかを判断しているようです。ブラック
企業ではないということを上手くアピールしていくことも必要です。
最終的に就職先を決めるのは学生自身。優秀な学生は他の企業から見ても欲しい人材であり、複数の内定を獲得しているのが普通です。本当の意味でそういった学生を獲得するためには、他の企業との競争に勝たなければなりません。重要なのは、学生が「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」です。
② 選考しながら価値づける
採用ステップの中には企業が主導権を握れるステップと学生に主導権があるステップがあるため、力の入れどころを見極める必要があります。選考当初の就職サイトへのエントリーや説明会参加申し込みの段階は学生に主導権があるステップであり、このステップを出来るかぎり企業にとって望ましい状況にしなければいけません。
<各ステップの興味づけ・価値づけの例>
●母集団形成
・ホームページやブログ、SNS等に掲載された情報を通じて社風や社員同士の人間関係の良さ、就職後の働くイメージをわかりやすく伝える
・こまめに情報を更新し、こちらから学生に対して自社を知ってもらいたいという意欲を見せる(人事ブログの更新が月に数回というのは言語道断である)
・合説等のイベントでは参加する学生の特性を踏まえ、心理的距離を縮める
・自社らしさを感じてもらえる独自イベントやインターンシップを開催する
●応募者管理
・まめで、親しみのある連絡メールや電話で親近感を感じてもらう
・人事や採用担当以外の社員も感じよく接し、会社全体でウェルカムなムードを漂わせる
●会社説明会
・説明会に社長や経営幹部が出席する
・他では得られないような気づきや学びを得られるシナリオ設計が重要
※応募者の中に潜むマイナス要因の排除も忘れずに!
・パワーポイントを使う場合はビジュアルに配慮する
・同業他社とは異なる、わかりやすく、好感の持てる差別化ポイントが伝わるようにする
・質疑応答には丁寧に対処し、不満を残さない
●選考
・選考に参加してくれたことに対する感謝の気持ちを持つ
・学生がベストなパフォーマンスを発揮できるように心がけ、気を使う
・楽しさを感じられる選考も織り交ぜる
・できるだけ丁寧なフィードバックをして、学生にとっても参加してよかったと感じさせる
・合否に関わらず誠実に対応する
●クロージング
・あくまでも学生の意思を尊重する(=無理なオワハラは厳禁)
・譲れない部分は学生にキッパリと告げ、社会人としての責任ある態度を感じてもらう
●内定者管理
・釣った魚にもしっかりと餌を与え、ロイヤリティの向上に努める
・会社行事に参加させ、先輩社員と交流をさせる
③ 求人広告・ナビ・SNSを上手に活用するために、キャッチコピーを工夫する。
<自分に関係があると思ってもらう>
自分に関係があると思わなければ、人の心は動きません。日々の情報量が膨大に増えている現代社会では、自分に関係がないと思った情報は簡単にスルーされてしまいます。
大勢の人へ向けて伝えようとするよりも、特定の誰かに向けて語りかける意識を持つ必要があります。
<強い言葉を使う>
言葉には強い、弱いがあります。強い言葉とは「印象に残る」「心に刺さる」「行動したくなる」言葉です。一方、弱い言葉とは「手あかのついた」「ありきたりな」「心が動かない」言葉です。読み手の心をキャッチするには、思い切って強い言葉を使ってみましょう。
強い言葉にするポイントは、抽象的な表現ではなく具体的に書くことと、つい使ってしまう常套句を避けることです。
■まとめ
人材採用に特効薬というものはありません。ポイントは採用活動における「微差」を作り出すことです。多くの学生にエントリーしてもらうためには他社との違いを出さなければいけませんが、急に大きな違いを生み出すのは簡単ではありません。まずは、学生の心を理解し、小さな違い、「微差」を作っていくこと。その「微差」を積み重ねていくことで大きな違いになり、最後まで学生を惹きつける採用活動が可能になる、と小川氏は仰っていました。
インサイト No.44
2015年12月18日