人事担当者のための「面接講座」〜決め手となる絞り込む問いを!〜

株式会社ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進

■ 連載 人事担当者のための「面接講座」

第8回. 決めてとなる絞り込む問いを! ―「似て非なる」ものを弁別する―

 以前に「金太郎飴」のような採用という事がよく言われたことがある。採用人材がすべて似たような同質型ということだ。前にも述べたことがあるが、ある企業で「体育系」に所属していた人材を基準の一つとして採用していたが、採用後「暴走族」に参加していた事が分かった。「似て非なる」人材だ。
 そういえば最近の新聞紙上で、ある「人材紹介サービス会社」が、「体育部会」出身者を集めての採用推進会合を開催したとの報道があった。一瞬、昔のことが思い出された。
 「似て非なる者」の面接を誤らなければ、こうした会合も是としてよい。体育系に望むその行動力、積極性なかんずく、フェアなスポーツ精神をしっかり弁別する事が前提だ。
 真の「金太郎」の選別力が問われるからである。それにしても「体育系」といっても、その人材は千差万別である。それを単純に採用基準とすることには偏りもあり、慎重を要するところだ。さて05年度の秋口からの採用活動は過熱気味とのことだ。報道によると春の就活での内定者を含めての再挑戦ということもあって、高いレベルの人材が獲得できたということだ。果してそうであろうか。
 以前、「買い手市場と売り手市場」を対比して、人材レベルに差があるかどうか客観的資料を使って分析してみたことがある。結論は「差なし」ということであった。(この研究は前にもふれた事がある)
 大切なことは、真にレベルの高い者を如何に弁別するかの面接力(他の資料を含めて)にある。「好きも嫌いも紙一重」という言葉があるように、似て非なる者を見分けることは、面接時にそれを引き出す、絞り込んだ「いくつかの問い」にある。間接的な問いによってその深みを掘り出す質問だ。
 表面的な問いではなく、行動パターンの質そのものをインサイトする「問い」の絞り込みである。それによって多様な行動パターンの「仕組み」を押さえることである。言わば急所を突くということだ。
 被面接者は多数であり、又、その個性は多様であるはずだ。しかも「似て非なる者」を識別する急所を押さえることはむずかしい。
 様々なケースをここに書くことは不可能だ。ここでは代表的なケースとして、対照的な2例を抽出して表示してみることにした。
 これによって問いの絞り込み方のコツを、それなりに理解していただければ幸いである。

(1)は類似の特徴群。(2)はやや異なる行動を対照的に表示した。ここまでは予備的面接、資料などによって押さえられるであろう。(3)は「問いかける」ポイントを関連質問として示してみた。特にリーダーを目指している人だけに、その内容を、今までの失敗を問うことによって掘り下げることを重視した。(失敗のあることが予想される人だ-)
 特にその原因をどの程度内省しているかを把握することによって、独立自尊の程度などを知りたい。又、仲間とそれ以外の人々との交流の違いを掘り下げることで、フェアなスポーツマンタイプのリーダーか、ボス指向のタイプかを押さえてみたい。

 ケースBは、ケースAタイプと対照的だ。慎重確実で社会的順応もあり、特に「上司忠実」は魅力的だ。しかし「似て非なるもの弁別」は実行力の展開にある。実行は指示された事を型通り進めるだけで、しかもチーム・ワークはもっとも苦手とする。自発的な実行力の欠如は、「非なるもの」を弁別するポイントとなるであろう。特にチーム・ワークの欠如は重要だ。内向的順応性はストレスに結びつくことも予測できることに注意したい。
 このケースは、社会的出現率が多いだけに、面接官として惑わされる機会が多くなろう。特に上司忠実で慎重確実な対応のしかたは、「似て非なるもの」の弁別をいっそう難しいものとするであろう。判定の分かれるところでもある。
 ケースAは「行動力」を採用したいところだが、ボスとリーダーの違いは、まさに「似て非なるもの」の分岐点となる。特に似た者同士の連携は問題を生むことにもなる。
 さて、次回は「価値観」を問うことにしたい。価値判断の総体こそ面接のオメガとなるからである。

インサイト No.9
2006年1月10日