人事担当者のための「面接講座」〜掘り下げる質問〜

株式会社ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進

■ 連載 人事担当者のための「面接講座」

第6回. 掘り下げる質問 ―相手の本質に迫るために―

 採用面接にはいくつかの課題がある。企業の求める「行動のクオリティー」の把握。次に初対面というアウェイな状況、そして短時間の枠の中での交流がそれである。この3つの要件をクリアにするには「面接力」の強化しかない。面接力とは面接官の質問によって成り立っている問い方の力である。
 以上を図によって示してみよう。

(A)は3つの壁であり、(B)はそれをクリアする「力」である。その中にあって面接力「問う深さ」が成功の鍵となる。この力は単なる問い方の技術ではない。
 本質を突き、よりインスパイアする問いであるから、人間力をベースとした技術そのものである。
 さて質問の対象は多岐にわたるが、先ず「人間関係」から入ってみたい。前号で紹介したE.H.シャイン教授の「新入社員の大半は、人間関係で去って行く」という結論に沿って最初のテーマとしたい。
 人間関係を大きく分けると「上司、上長」というタテ、「同僚、先輩」というヨコの関係に二分される。先ずタテから具体的に問うことにする。

(1)で正面から問いを発してみる。やや価値的な重みもあるが、先ず応答のスタイルを見たい。(2)では180°転換して仕事から入ってみる。定型重視は上司との結びつきを強くする。非定型重視では必ずしもそうとはみられない。(3)で、以上の応答を確かめてみる。果して指示を待つタイプか自己決定を指向するタイプかが判定される。
 以上の応答の流れに矛盾がなければ一応問いをまとめてみたい。次のヨコの関係の質問で更に深めてみた上でまとめてみることもよいであろう。

ここでは主として学生時代の経験を中心としての問いになる。(4)の横に*印のつけてある質問は、この流れの問いと次元を異にするものだ。これは問いの流れによって、中間に入れたり或いはツメの質問として聞いてみる事もよい。それによってここから新しく掘り下げる問いが始まることにもなることが予想される。
 特に(4)で否定的応答があり、この*印で肯定的であるときは、ヨコの人間関係が十分でないことを示している。或いはタテの指向性の強さを考えてよい。
 このように「人間関係」を二分して問うことによって、相手の本質をつかむ手がかりが得られる。しかもその中に「仕事のやり方」のパターンを入れてみることで問いかけをインスパイヤ(刺激・誘発)することができる。特に後半の「(4 )と(*)」の問いは、より本質を突くクリエイティブなものとなるであろう。
 いずれにしても掘り下げる質問はこのような流れを核として、応答に応じて前半の(2)や後半の(4)、*印のように「縦横」に展開されるものだ。前号である応募者が数社の面接を経て最初の企業に「自分のことを一番理解してくれた」と言って戻ってきたエピソードを紹介したが、これも面接の力であろう。
 さて問いかけの言葉は簡潔にしてあるが、実際の面接では相手に応じて分かりやすい言葉に砕いて問うことはいうまでもない。又、問いの流れを例示したが、これはあらかじめテーマに沿って練り上げることの大切さを強調してみたものであることに留意してほしい。
 そのためには相手の「質的な情報」をよく勉強して、事前にそのキーワードを練りこんでおくことが不可欠である。短い問いかけによって、より本質的な長い応答を引き出すことである。

インサイト No.7
2005年6月1日