HCi-AS報告書から見た応募者の各国比較(日本、中国、タイ、ベトナム)

HCi-ASは中国で26年、タイとベトナムで9年のサービス実績があります。
蓄積されたデータから何が読み取れるか考察してみました。

【結論】

HCi-AS報告書の結論は、「業績をあげ得る人材能力」を総合的に評価し6段階で提示したものです。
ここでは、HCi-AS結論の説明はしませんが、詳しく知りたい方は当社ホームページをご覧いただき、お問い合わせください。
(当社ホームページ:https://hci-inc.co.jp

※報告書のサンプル

各国の9年間のデータをもとに結論の出現率をグラフにしました。

結論の「1是非採用したい」「2採用してよい」は、総合的にバランスのとれた能力の高い人材で、業績への貢献が大いに期待できる人材です。
各国の出現率をみると、以下となります。

  • ベトナム:「1是非採用したい 12.6%」「2採用してよい 19.9%」 合計 32.5%
  • タイ  :「1是非採用したい 4.5%」「2採用してよい 21.7%」 合計 26.2%
  • 中国  :「1是非採用したい 5.2%」「2採用してよい 15.4%」 合計 20.6%
  • 日本  :「1是非採用したい 3.3%」「2採用してよい 13.8%」 合計 17.1%

結果から見た人材の質は、ベトナム、タイ、中国、日本の順となりますが、この結果は応募者母集団の偏りに起因していると考えられます。ベトナム、タイは国を挙げて日系企業を誘致し日本語教育にも熱心で、日系企業は人気の的のようです。
この数字は、海外での日系企業の人気のバロメーターと言え、ベトナムやタイの日系企業には多数の優秀な人材が応募している証と言えましょう。
『企業は人なり』、今後とも日系企業が高い評価を受け続けることを願っています。

結論が「3適職あれば採用」は、一芸に秀でた能力の持ち主で貴重な人材です。各国とも大きな差は出ていません。出現率は10人に1人、適材適所で活躍の場を与えたいものです。

次に、応募者の職務適性が、国によってどうような違いがあるのか、見てみましょう。

【適性配置予測】

業務を遂行するうえで必要な能力を元に分類した6つの職務パターンから判定した適性配置予測を見てみましょう。

論理的、科学的能力を必要とする「I 専門研究的業務」の出現率が大きいこと、どの職務パターンにも合致しない「全縮小」の出現率が小さいことは、結論と同様、応募者の母集団の質の高さが推測されます。
一方、型にはまった定型業務や現状維持型が中心となる「C 維持的業務」の出現率は、タイ・ベトナムが大きく、国民性の一端が窺われ結果となりました。

【メンタルヘルス】

人事部の皆様の関心が高く、悩みの種でもあるメンタルヘルスについて各国の比較をしてみました。

メンタルヘルスの発症要因は多岐にわたり、「経済的な要因」「社会的・文化的な要因」「教育や職場環境のストレス要因」などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
言うまでもなく、メンタルヘルスと企業の生産性は密接に関係し、メンタルヘルスの不調により、以下のような障害が発生し企業活動の障害要因として大きな課題となっています。

  • 生産性の低下
  • 欠勤や退職の増加
  • チームワークやコミュニケーションの低下

合わせて、企業イメージの低下につながります。この課題は、どこの国でも共通です。
企業活動から発生する「職場環境のストレス」は、メンタルヘルス発症要因のひとつにすぎませんが、生産性向上のためにも取り組まなければならない喫緊の課題です。
職場環境でメンタルヘルスの問題を引き起こす要因は、いろいろありますが主なものとして以下のような要因が挙げられます。

  • 過剰な仕事量
  • 不十分なサポート
  • ワークライフバランスの不均衡
  • ハラスメントやいじめ
  • 不適切な働く環境

これらの要因も、濃淡の違いはあるものの、各国に共通する課題です。

企業では、生産性向上のために「職場環境の健康促進プログラム導入」「適切なワークバランスの促進」「サポート体制の強化」など、メンタルヘルスの改善に取り組んでおり成果も出ています。
一方、水際対策として、採用の採否にあたり判定要素のひとつであるメンタルヘルスは、ますます重要性を増しており、あらためて認識すべきでしょう。

各国のメンタルヘルスの出現率推移をグラフで提示しました。
ここで言う「メンタルヘルスの出現率」とは、応募者の中でストレス耐性の低い人の出現率を指します。

HCi-ASの「国別メンタルヘルスの出現率」グラフで、あらためて判ったことは以下です。

  • 日本と中国では2015年まで、メンタルヘルス出現率は右肩上がりで推移していた
  • 企業努力と社会環境の変化もあり、2016年以降は増加傾向が止まった
  • 国別でみると、北から南にいくほど出現率が高くなる傾向が見てとれる

今回はデータ件数が少ないので掲載していませんが、マレーシア、シンガポールなどのデータも同様な結果となっています。
南北の出現率の違いからみると、安定したメンタルを維持するためには、寒暖差など適度にストレスがかかったほうが、ストレス耐性が確保できると思われます。
中国の北京や上海を中心にした「北」と香港・広東省を中心とした「南」を比較すると、この仮説と一致します。

最後に、ベトナム・タイを中心に東南アジアへの企業進出の機運は高まるばかりです。
このコラムが海外進出している企業活動の役立つ情報となれば幸いです。
引き続き、HCi-ASをご愛顧いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2024年4月8日
文責:ヒューマンキャピタル研究所 松田繁雄