第59回 ブランドアンバサダー

「ブランドアンバサダー」という言葉を耳にしたことがありますか?横文字で、日本人にはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ブランドを代表する人物というイメージで
す。特定のブランドに対して、自分たちの知名度でブランドのイメージを向上する役割を持ちます。有償または無償と区別され、どちらかというと大衆向けの商品の広告宣伝ではよく使われる手法だそうです。

この言葉に関連する話があります。私が日本で働いていた時に、社員一人一人は「会社の代表」だと散々教えられました。能動的に会社をPRするようなブランドアンバサダーの役割は、到底期待されてはいませんでしたが、顧客と接する、電話、メール、面談では、迅速に対応し、問題があれば的確に処理することが期待されました。どちらかというと会社のブランド向上というより、会社のブランドに傷をつけない、当たり前のことを当たり前にやる、というレベルでした。

その後に、会計コンサルティング会社に転職して、クライアントへ助言する仕事に就きました。一生懸命リサーチして、クライアントの問題解決を通じて知見を増やし、それを活かして、クライアントへ助言したり、各種専門レポートを寄稿したり、セミナーを行ったりしました。その過程で専門家としての自分の知名度を高めると同時に、会社のブランドも高めていくことになりました。当たり前のことを行い、ブランドイメージを維持するレベルから、専門知識や知見を誰よりも的確にクライアントへ提供し、決まった顧客母体に対して、ブランドイメージの向上に努めたわけです。
その後、Facebookを筆頭にSNS時代が到来して、それらが徐々に強い情報発信プラットフォームとなりました。日系企業では会社ネタはFacebookなどのSNSには投稿してはいけないとルール化している、という話も聞いたことがありますが、ベトナムではそういう制限はなく、自由です。社員一人一人がライターになって、世の中に発信するという意味では、過去のように、電話やメール、セミナーでしかクライアントへの接点がなかった頃と比べ、非常にフラットなインターネット世界で大衆に向けて情報発信できるわけです。
つまり、時代の変化で、その気になれば、一人一人の社員がブランドアンバサダーになれるわけです。

一方で、どれほどのベトナム人スタッフが自分の会社を愛し、ブランドアンバサダーとしての意識を持っているでしょうか?自社のベトナム人スタッフについて考えてみると、基本的に愛社精神はとても弱いのではと言わざるを得ません。共産国家ならではの、「雇い主は悪で、社員を搾取しているんだ」とか、「転職できる人こそ優秀な人材」というような考え方になったりして、「会社を愛すべき、好きになるべき」とは教わっていない、または、教えるような文化ができていないわけです。
そのため、まずは意識を高めることから着手することにしました。弊社では2023年から「社内ブランドアンバサダー制度」を導入しています。アンバサダーを2名指名して、彼らを中心に、マンスリーミーティングにて社内環境改革をしっかり議論し、どんどん意識を浸透させつつ、情報発信をしてもらっています。「会社は何のために存在し、その存在価値はどこにあるか?」「どんな会社がよい会社なのか?」などに関して、私からアンバサダーに時間をかけて教えています。彼らが納得しなければ、真の愛社精神も生まれないでしょうから。

全社員が会社を大好きになる日を夢見ています。