第49回 宣言したら、実現できない
ベトナム人スタッフに、目標について聞いたことはありますか?
ほとんどは現状に満足していて、あまり目標を掲げません。目標があるとしても一般的なもので、あまり印象に残らないのではないでしょうか?何も考えていなくて目標のない子はもちろんいますが、中にはある理由で、敢えて目標を言わない子も少なくありません。
その理由というのはベトナムで根深く定着している「目標を宣言したら、クリアできない」という思想・考え方です。言い伝え的なものですね。日本的な言い方で例えると、「有言実行」のその逆で「不言実行」に近いと思います。しかし、日本語では「実行」というところに着目している代わりに、ベトナム語では目標宣言すれば、その目標は「達成できない(クリアできない)」という表現をしています。日本ではどうアクションをとって実現するか、一方で、ベトナムはどう失敗を回避するかといった考えで、この思想が大きく違うように感じています。ベトナム社会では古くから成し遂げることを妨げる要因があまりに多かったために、そういう表現になっているのだろうと私は考えます。国自体が貧しく、また封建制度のため、応援されるよりも抑圧されるばかりで、夢を語る方が損する訳です。まさに、「出る杭は打たれる」社会でした。
有言実行と不言実行について調べたら、面白いアンケートがありました。「有言実行と不言実行で、どちらがカッコイイか?」という調査で、現代の日本では66%は有言実行がカッコイイそうです。日本でも昔は不言実行が主流でしたが、現代社会ではお互いを応援するようになり、目標を宣言して、リーダーシップを持って、周囲を巻き込んで困難を乗り越えて、目標を実現させることがカッコイイとされるようになりました。こう考えると、経済発展し続ければ、ベトナムもそのうちに日本のように有言実行という考え方に変わっていくだろうと期待しています。
(※参照:【意外な結果!?】不言実行の意味 有言実行と不言実行、どちらがかっこいい? | 社会人生活・ライフ | 社会人ライフ | フレッシャーズ マイナビ 学生の窓口)
しかし、そうは言っても時代の流れを待つには時間がかかり過ぎます。自社の社員育成は急ぐ必要があります。同じ会社の社員というのは仲間であり、お互いを応援し、支えるものですので、目標を宣言したら、損するということはなく、応援され、得するんだということを教える必要があります。その上で定期的にコーチングセッションを行い、みんなの目標を問い続けていけば、そのうちに自信を持って打ち明けてくれるはずです。その時点で単なる社員同士ではなく、仲間同士という風に考え方が変わっています。幹部社員(中間管理職)がそう変われば、そのうちに末端の社員までその考え方が浸透し、会社としての一体感が出来上がります。
日系企業の強みはこの社員同士の仲間意識だと私は考えています。しかしながら、この仲間意識を実現できている会社さんはとても少ないのではないでしょうか?欧米企業のようにシステマティックにロジカルに社員を捉えて経営するスタイルに対して、仲間のために努力する日系企業のスタイルは対照的に思います。欧米企業のようなスタイルも取れないですし、日本本土のようなスタイルも取れず、中途半端な立ち位置の日系現地法人が多いのではないでしょうか。今一度、社員の夢(目標)をしっかり聞き入れて、みんなで応援する社風を作り、強い組織を創造していただければ嬉しい限りです。