第44回 話がやたらに長いスタッフ
ベトナム人に限った話ではありませんが、話がやたらに長いスタッフはいませんか?
ベトナム語では thì là bị được (「ティ・ラ・ビ・ドック」と読み、「だから・は・された・させた」の意)と言い、他責で話の長い人のことを指しています。本人たちは伝えようと一所懸命伝えたいことを考えながら、言葉を選び、しゃべり続けます。長い話が終わり、肩の荷が下りたと思ったら、今度、まわりから「何が言いたいの?まったく意図が分からない」などと責められ、頭が真っ白になり、ますます混乱に落ちいってしまいます。こういう悪循環から抜けられないスタッフもしばしばおり、いつまで経ってもワンランク上の仕事ができません。
「なぜ話が長いのだろうか」と考えてみました。いろいろなパターンがあると思います。
- サルでもわかるように丁寧に説明したい
- よくわからないが、黙るわけにもいかないので、適当にしゃべってその場をしのぎたい
- あいまいにしか分かっておらず、一応伝えたいことはあるが、明確ではないためよく伝わっていない
①のパターンではベトナム人よりは日本人の方が多く見られます。国会答弁は最たる例ですが、背景やいきさつを説明したり、曖昧な表現が多いのです。日本語特有の曖昧な表現や接続詞が多いことも関係するかもしれません。しかし、このパターンでは要点はしっかり持っているので、話の最後には何を言いたいかわかります。一方で②や③は何を言いたいか、よくわかりません。ポイントはあるようなないような、焦点がぼやけいていることが多いので、何回か確認を繰り返さないと真意を捉えることができません。
私が日本で働いていた時に、記憶に残る出来事がありました。
それは新入社員として入社して約半年の時に、部署内の社員満足度調査を依頼された時のことです。アンケートをとり、資料にして、本部長が出席している全体会議に発表させてもらう機会を頂きました。結果については省きますが、発表後に喫煙室かどこかのアンオフィシャルな場所で、課長に言われたことを今でも鮮明に覚えています。「○○先輩をよく真似てください。彼はいつも簡潔で少ない言葉で話し、なおかつ、とても芯が通っているよ。」でした。自分の発表はそれほどよくなかったし、助長だったと気づかされました。その後、どんな場面でも、なるべく簡潔な言葉遣いをするように心掛けました。
上記の②や③も含めて、簡潔に物事を伝えるためには、「まず現状を体系的にしっかりと捉え、その上に伝えたいことの位置づけを確認し、結論から話す」というロジックが最良です。このロジックは簡単に説明できて、スタッフも頭では理解できているのですが、そう簡単に実践できないのが常で、困ったものです。
私も、これといった教育方法があるわけではありませんが、スタッフのロジカルシンキング思考を鍛えつつ、簡潔に意見を述べることを意識してもらうように徹しています。いつくかヒントがありますので、ご参考までに。
- 口頭よりも文書でのレポーティングを増やす。書くものになると、慎重になり、考えて書くので、思考が働く。
- 意見を求める際に、結論をポイントに絞って先に伝えるのと同じように、こちらの期待を先に伝えることで、思考を刺激し、意識させる。
- 機会があれば、問題の構造を解説してあげて、どういうソリューションが考えられ、またどれが一番良いかという一連の思考プロセスを見本として見せてあげる。スタッフもだんだんと深い思考ができるようになる。
私の経験では上記のプロセスを半年ほど細かく見てあげると無駄な口数が減り、要所要所で物事を伝えられるようになり、そこからはある程度安心して仕事も任せられるようになります。何といっても、上司の細かいフォローが不可欠のプロセスなので、とても忍耐力が必要ですが、そうでもしなければ、よいスタッフは育ちませんので、頑張ってほしいと思います。