第43回 日系企業には合わない
ベトナム人スタッフが仕事を辞める様々な理由の中で、「やはり日系企業は合わない」、「欧米企業がよい」という理由がたまにあります。私は生まれはベトナム、育ちが日本みたいなもので、しかも日系企業で経験を積んでおり、日系企業を相手に商売しているので、欧米企業は残念ながらわかっておらず、「欧米企業は○○」と説教したくてもできません。
ただ、一つだけ日系企業と欧米企業の思想は全く違う、ということは説明できます。
欧米企業の思想は簡単に言うと「Go Big Or Go Home」で、つまり「大きく育てられないなら、やらない」という考え方です。ですので、欧米は大きな多国籍企業に集約されており、あまり小さな企業が少ないわけです。言い換えると小さな企業は独立して存続しにくいため、大企業に吸収されることが日常茶飯事でしょう。一方で、国土の狭いアジアでは与えられた土地(商圏、商材)に対して、一生懸命働き、差別化して、何とか存続するのが日本を含むアジアの思想です。端的に言うと個人商店の延長ですね。
その二つの思想の大きな違いは、人材に対しての投資の仕方にあります。
欧米の多国籍企業だと、知名度も資金もあるので、最高に優秀な人材を獲得するにはお金を惜しみません。最高に優秀な人材を獲得できれば、何をやったって他社より優れるので、さらに独占状態が確固たるものになり、その分、営業利益も増えて、どんどん優秀な人材を獲得できる好循環が生まれるわけです。言い換えると、最高に優秀な人材を獲得できることは間接的に競合他社を弱体化することと同じです。しかし、こういった企業は常に最優秀であることを社員に求めています。業績を達成できなかったら、すぐリプレイスされます。
それに対して、日系の現地法人のほとんどは知名度がありませんし、マーケットを独占的に取れているわけではないため、売上利益もそこまで爆発的に伸びるなんてことは一定のニッチ産業を除いて聞いたことありませんし、採用する予算も決まっているので、最高に優秀な人間はとれない傾向にあると経験上で思います。その範囲内で確保できる人材に長期的に投資して、最後に一流に負けないぐらい力をもってもらい、会社を支えてもらうイメージではないでしょうか。
「自分に自信がない」、つまり「現時点で優秀人材ではない」と自覚していれば、時間をかけてでも会社環境がしっかりした日系企業でゆっくりと成長させてもらうのがベストでしょう。また、自分が一流だと自負している人であっても、私の考え方になりますが、日系企業で活躍するのも良いと思っています。なぜならば、優秀な人材の多い欧米企業よりは日系企業の中での方が出世するチャンスが大いにあるからです。