第42回 仕事をしていない上司

日本人はとても勤勉であることは、疑う余地がありません。

日本での留学を終えた後、ある日系企業で3年近く働いたことがあります。それなりに大手企業であったので、いろいろとマネジメントもしっかりしていました。面白かったのは、みんなが無意識的になるべく早く出社し、事務所をきれいにするために、全員で楽しく毎日掃除をしていました。帰るのも遅めで、午後8時でも半分ぐらいは会社に残っていました。仕事の内容はともかく、みんなが勤勉であることは確かです。マネジメント層もそうです。「始発で出社し、終電で帰る」という生活をしている部長さんもいました。日本人の価値観では「最前線でバリバリ仕事している上司はカッコイイ」とみて、そういうリーダーについていくと思っているようですね。もちろん、「暇な上司はだめな上司」というふうに思われているはずです。

私もそういう価値観に共感して、ベトナムに戻って、マネジメントの立場で実践しました。早めに出社して、どんな問題でもすべて最前線に立って、率先して、取り組みました。事業規模が大きくないので、それなりにビジネスも問題なく回っていますが、気づいたら、頑張っている上司について行くところか、「頑張りすぎている上司には誰もついてこられない」、そんな風になっている感じがします。一方で、会社経営している地場の友人をみると、出社は遅く、それほど、会社にいません。就業時間中にゴルフを遊んだりしているのは常で、宴会もとても多いです。あまりまじめに仕事しているように思えない人たちが少なくありません。とても羨ましく思います。

よくよく話を聞くと、やり方の違いが少し見えてきました。ベトナムでは「私はよくできる上司なので、仕事を教えるからついてきなさい」ではなく、「私は仕事はできませんが、責任は引き受けますので、思うように仕事してください」なのです。前者では上司次第で、やや受け身的な姿勢ですが、後者では積極的に出るしかないでしょう。実際に、日系企業の多くをみていると、日本的なやり方では、あまり積極性のあるスタッフは生まれづらいのが分かります。ローカルも含めて、非日系ではアグレッシブで自主性の高いスタッフは比較的に育てられているように思います。

さて、では仕事ができる人とはどんな人でしょうか?

  • ある一定の知能がある
  • 基本的なスキル教育を受けていること
  • 学習し続ける姿勢

私は、この3点に尽きると思います。知能に関してはある種遺伝なので、教育というより才能の問題であると考えます。基礎スキルに関しては、しっかり教育すれば、身に付きます。学習し続ける姿勢は、

  • 機会
  • やり方を与える

ことだと思います。仕事を任せるのは、機会を与えることになります。「問題があるときには必ずリーダー2名と相談した上で、私と相談してください」というのがやり方に当たります。インターネットがなかった時代には、リーダーがスタッフに知識を与える役割も持っていましたが、今の時代ではやる気さえあれば、スタッフもリーダー同等、場合によってはリーダーを超える知識を持つこともあり得ます。つまり、どんどん任せてよいという結論になります。

「よいスタッフを採用し、基礎的な研修を受けさせたうえで、チャレンジする場を与え、自分が相談相手に徹する。後は遊んでよい!」
そういう上司像が理想かもしれません。