第41回 信頼関係の構築
私は2006年に日本からベトナムに戻り、ベトナムで仕事を始めました。次第にベトナム人の友人もできて、彼らのほとんどがエリート層の人材であったことから、いろいろなことを教わりました。しかし、一点だけ違和感を感じたのは、「彼らは(私の基準では)あまりにも自分のことを語りすぎているのではないか?」ということです。謙遜どころか、ものごとを大きくして話すわけです。一方の日本人は、謙虚で、もの静かながらも、やることはやるので、個人的には日本人の控えめなコミュニケーションが好きです。
しかし、ローカル経営者あるいは管理者の会話をよくよく聞いてみると、すべてが自分を大きく見せようとするための会話ではないことに気づきました。
ある人は、自分のリーダー観を常に語っていました。
「私はチームの面倒見がよいリーダーですよ。何があっても言ってきてね。他のマネージャーや上層部から我々のチームに文句言わせないから、安心して頂戴!」
ある人は、仕事感を語りました。
「私は、嘘つきは大嫌いです。やるなら、やる。やらないなら、やらないでよろしい。私は挑戦するスタッフが好きです。みんな失敗して成長するので、失敗を隠したり、嘘をついたりするのは弱虫で、とてもじゃないけど、そういう人とは一緒に仕事をしたくない。」
他にも様々な表現で、自分のスタイルを常に発信しています。
考えてみると、日本のカルチャーでは、コミュニケーションが控えめではあるものの、それをしっかりと補うために「飲みニケーション」があります。お酒の場で、お互いを語り合って、相互理解及び信頼関係を構築するわけですが、飲みニケーションの文化がそれほどできていない(女性がほとんどお酒を飲まない)ベトナムのようなところでは、リーダーが常に語ることが求められます。
「そう簡単に、控えめの自分から、大々的に語れる自分にはなれないだろう」と感じます。多くの日本人も、そう感じているのではないでしょうか。語り上手になり、スタッフ教育をしつつ、組織づくりをしていく、そういうことがこのベトナムで組織づくりを成功させるための秘訣ではないでしょうか。
次回は「仕事をしない上司」について、考えたいと思います。