第32回 期待して採用を任せたのに、全く採用が進んでいない

本業の人材紹介サービスのでは、数多くの日系企業を採用支援させていただいています。事業立ち上げ期、成長期、そして、安定期ともにお付き合いさせていただいている会社さんもたくさんあります。ある程度、組織ができあがってきているところでは、日本人経営管理者主体の採用活動から、ベトナム人幹部主体にシフトしていくことがよく見られます。しかし、その途端に採用プロセスが一気に滞り、採用活動自体が長引き、いつまで待っても採用が決まらない、また、決められない理由もよくわからない(フィードバックがない)状況がよく起きています。確認すると、日本人経営管理者も採用活動が遅れて、困っているといいます。

そもそも、「なぜ、ベトナム人幹部に採用を任せるのか?」について聞くと、以下のような理由が上がってきます。

  • 採用することで人間の見る目を養ってほしい
  • 自分が採用したスタッフだと責任をもって育成するであろう
  • ベトナム人同士の方が外国人である自分よりきっとうまく採用できるはず
  • ベトナム人ネットワークで良い人材を連れてきてほしい
  • 一次面接である程度人材を絞ってもらい、最終の採用決定まで時間短縮したい

上記の期待は立派ですが、我々プロから見て、そう簡単にはいきません。逆に失敗する可能性の方が多いように思います。ここに期待と現実のギャップを解説します。

  • 見る目を養うなら、複数人で面接して、みんなの評価軸を共有して、お互いから学びあうほうが良いです。任せきりにすると、いくら優秀なベトナム人幹部でも極端に厳しかったり、逆で優しかったり、評価が偏りがちです。そして、さらに強調したい点があります。日本人の経営管理者だと売り手市場であった当時の日本での採用を経験しているので、候補者を肯定的にみて入社を促す。一方で、買い手市場のイメージしか持たないベトナム人幹部は候補者をやや否定的にみて、いろいろ難しいことを言って、候補者を試練を与える傾向があります。技術系のベトナム幹部では特にこういう傾向が強いですね。
  • 「信頼できる担当者が採用したスタッフだから、責任をもって育成する」という意味においては、採用に携わるのは効果的でしょう。しかし、本人の主体性を養うというより、採用後はその新人を放っておいても不平不満が出ないように力でコントロールしていることも多いにあるように思います。ベトナム人は基本的にスタッフ育成が下手だし、そもそも育成が好きではない性質であるということを忘れてはいけません。
  • ベトナム人同士の方が見る目が厳しいのは間違いありません(日本人同士もそうですよね?)。候補者がたくさんいて、ベトナム人幹部の方でフィルターをかける場面では有効です。逆に、採用条件が厳しく、候補者が少ないときは、厳しいベトナム人幹部だと、全員を落として、いつまで待っても採用が実現しないことも起こりえます。
  • 確かにたまには優秀な友人を連れてくることがあります。この場合も、よほど現在の会社のことが好き、あるいは、会社から奨励金をもらえるから率先してやってるんです。一般論でいえばあまり期待できません。
  • 上記の①や③のように、しっかりと採用スキルを身に着けていないと、一次面接で極端に全員が落とされる可能性が多くあります。合格率が低いときには注意を払うべきで、経緯をしっかり調査しましょう。

日系の現法企業を本当の意味で現地化するためには、ベトナム人幹部の能力開発はとても重要で、その中に採用力が最も重要と言って過言ではありません。能力のある人なので、採用任せても大丈夫!そのうちに慣れて完璧にできるようになるでしょうと安易に期待するのは、とても危険です。企業の生命線である採用が狂ってくる上、任せているベトナム人幹部も何も成長しない可能性もあります。コーチングしながら、徐々に採用を任せたり、専門家コンサルタントによりレクチャーを受けさせることをお勧めします。