第31回 チームリーダーの宣言
先日、ある日系大手企業の現法法人に対して、リーダー研修を企画しました。対象は管理者クラスで、彼らに向けて、講師が以下の質問をしました。
「ある日突然、あなたは、今まで全く知らないチームのチームリーダーになると告げられました。
さて、チームメンバーに対して、最初にあなたがやることは何でしょうか?」
こう言われると、何となく、昔見た日本のドラマを思い出します。指名された新部長は、部員一人ずつと話し込んで、場合によっては一緒にお酒を飲んだり、しっかりとお互い分かり合おうとした上で、「さあ、これから一緒に頑張ろうね」という感じではないでしょうか。ベトナムバージョンに置き換えると、士気を高めるためにすぐに食事会を開き、2次会はカラオケと決まっています。そうやって、2日目からはみんなとも仲良くなり、部全体が明るくなり、「業績が悪いことはみんな分かっているから、言わなくても、きっと頑張ってくれるでしょう」と思っていても言わない、という感じになるでしょう。
やり方はみんなそれぞれで、正解はありません。しかし上記のやり方だと、ベトナムではかなり誤解されやすいです。なぜなら、「この部長は成果よりも人間関係を大切にしているから、楽しく仕事すればよい」と思われるからです。そうなると、今までトップランナーであった部員はやる気をなくし、成果が下がり、そのうちに退職してしまうことさえありえます。一方で、成果の上がらない問題部員はさらに安心して、仕事をしないで遊んでばかりになり、周りに悪影響を与え続けます。そして、部長と部員の距離が近くなったがために、業績が悪いからといって、部員にとても怒りづらいです。部員からしても、それまで仲良かったのに、突然態度が変わり、いきなり怒られることはどうしても理解できず、反感を抱いてしまうわけです。
ですので、「初日はリーダーとして、どうチームを運営するかをみんなに決意表明したほうが良い」というのが講師の意見でした。
一方で、採用のコンサルタントとして、新メンバー受け入れる時にも、このリーダーの決意表明もとても大事と私は考えています。はっきり伝えていないがために、メンバーは事の断片からしか、リーダーのことを理解できないので、誤解も生まれやすいですし、誤解を解きにくいわけです。とくに転職やキャリア、人間関係についても啓蒙を兼ねて伝えるべきです。
例えば
- 転職に関して
「よい転職を応援するので、隠さないで、正々堂々転職活動をしてもらたい」または、
「転職は重大な決定なので、私(リーダー)を含めて、メンバーに対する怒りから、転職してはならない。落ち着いて考えてほしい」 - キャリアに関して
「あなたのキャリアを伸ばすのはリーダーの責任です。時にはきついことも言うが、それはあなたのキャリアを考えてやっているだけです。」 - 人間関係に関して
「このチームではOne For All、All For Oneをモットーにしています。メンバーを誹謗中傷するなどは絶対許しません」
上記の例はごく一部で、自由に工夫すればよいのですが、長いスピーチだけはポイントがぼやけるのでやめましょう(笑)。かと言って、弊社の中間管理職がしっかりとリーダーの決意表明ができているかというと微妙ですが、まずは必要性を理解してもらって、そのうちに自信が付いたら、やってくれることを期待しています。
※御社のローカル幹部に対して、レクチャーすることは可能です。必要な際にはぜひ、ご相談ください。