第30回 断らない従順な社員
以前、日本人の友人に、とある質問をしたことがあります。
「ベトナム人スタッフにもっとも持ってほしいスキルは何ですか?」
予想通り、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」だと答えてくれました。スタッフに仕事を任せたら、できるかどうか、その進捗と結果をタイムリーにフィードバックしてほしいところです。とくにマルチタスクが求められる環境では細かいタスクが多くて、スタッフから能動的にフィードバックがなければ、管理者の負担が多いわけです。
そのフィードバックの種類を考えるとき、そう複雑なものではありません。
- 「できました、確認してください。」
- 「期限を延ばさせてください。」
- 「わからないことがあるので、教えてください。」
- 「もういっぱいいっぱいなので、引き受けられません。」
そのぐらいでしょうね。その中でベトナム人スタッフが圧倒的に不足しているのは、断る能力だと思います。
ベトナム人は、実はあまり断らない性格で、サービス業において、日本よりもはるかによかったりするサービスも多くあります。例えば、長距離バスだと、巡回して拾ってくれたり、決められた場所ではないところに降ろしてくれたりします。ネット通販ではチャットが主流(問い合わせしたら、すぐ返事もらえる)で、デリバリーなどを個別に対応してくれます。市場でも行くと、野菜、肉などをいくら少量でもこころよく売ってくれます。そして、路上駐車しておいて、そこら辺の守衛さんにお金を払うから、見張っておいてくださいと頼めれることなどなどです(笑)。ルールが多すぎて、融通の利かない日本も異常ですが、ベトナムのように、こちらから言って、土壇場で特急サービスをしてくれるのも嬉しいですが、もしキャパオーバーになるくらいだったら、安定なサービス提供を考えて、最初から断ってほしいところです。
そもそも人間は断る能力は自然と備わっていると考えています。
子供の頃は、「肉が好きで、野菜が嫌い」や、「音楽好きで、スポーツが嫌い」というように、嫌いなものは断れるものです。しかし、ベトナム社会(特に私が小中学校の80年代ごろ)では親が絶対な存在で、基本的に親の好みに合わせられます。学校へ行ったら、今度は先生が絶対であり、逆らえません。出る杭が打たれるような環境に長くいると自分で判断する力が弱って、すべての判断は上司任せになり、溺れそうになっても仕事を引き受け続けることが起こり得ます。最後には本当に溺れて、自信喪失に陥って、職場から離れるケースは少なくないように思います。
ベトナムに戻って、仕事したときのことを思い出すと、当時の日本人上司はとても仕事のできる人で、アイデアマンだし、結果追及も半端なくきついわけです。自分はあっという間に仕事で溺れる状況に陥りそうになったため、当時の私は必死に仕事を断りましたね。当然、怒られないように論理武装して、断りました。次第に自分も仕事に慣れて、キャパも大きくなり、だんだんと期待された通りの仕事ができるようになりました。部下がパンクする寸前まで仕事を与えて、一気に部下を成長させる。溺れるか泳げるかが日本的な育成方法かもしれませんね。この育成方法が機能するためには二つの前提があります。
- 辞めないこと(泳げるまで頑張る)
- 断れること(溺れそうになったら、助けを求める)
だと思います。
上記の前提に、ベトナム人スタッフはまったく当てはまりません。
まず、プロ(泳げること)になりたいか?というと、90%はどうでもよいと考えているはずです。相応しい労働対価をもらえば、良いぐらいの感覚なので、どちらかというと仕事を辞める前提です。そして、断る能力も低いわけなので、仕事を断れない、相談もしない前提です。
だったら、ベトナム人スタッフとよりうまくやりましょう。
- スタッフに、「仕事は与えます。できればたくさん挑戦してほしいので断らない方がよいが、大変と思ったら断ってね」とレクチャーします。
(おそらくスタッフはうんうんと頷きますが、半分しか理解していないはずです。) - 成果が上がらない、あるいは期日に遅れそうになったら、すぐタスクリストを出させて確認し、必要だったら、仕事量を減らしてあげます。
- たまに、日本人のやり方に耐えれるような精神的にタフで優秀な子もいます。幹部あるいは幹部候補として、信頼される存在です。 ところが、人 材育成方法を知らないので、本人は自分と同じようなタフな人材を求め続けてしまいます。そのせいで、なかなか採用できません。優秀な幹部ほど、この傾向が強いので、留意が必要です。
従順な社員はわりと会社のことが好きですので、うまく育成することを願っています。