第29回 早い定年を迎えたい
社内交流会の中の会話について、ベトナム人同士はどんな会話をしているか注意して、聞いてみました。
時事的な話題、趣味、政治、スポーツなどなど様々です。もう一歩踏み込んで、人生設計(将来何を実現したいか?)について、尋ねると、とくに何も考えていない人を除き、目的意識を持つ人の中で、とても印象的な共通項がありました。それは、
「将来、十分な資産をもって、定年をできるだけ早めに迎えたい!!」
ある有名な日系企業現法のマネージャーがいます。彼は会社から能力を認められ、何度もGeneral Manager(管理部長)になるように勧められてきましたが、「責任が重く、自由時間も減り、おそらく旅行も今のようにはできなくなるから昇進を断ってきた」といいます。
また、別の日系企業の現法代表を務めているとても優秀なベトナム人社長は「40歳での定年を目指しています」と打ち明けてくれました。「40歳以降は、持っている財産でベンチャー投資や不動産投資などをして、ゆっくり人生を過ごしたい」と。
そして同様に、「社長の座を退いたら、家にいて、お庭をきれいにして、毎日ヨガを満喫したい」という、別の日系企業の現法代表ベトナム人社長もいます。
ベトナムで経営管理をされていれば、中間管理職が少ない(シリーズ第26号:中間管理職ができない理由をご参照ください)ことは感じておられるかと思います。ボスがプロの管理者ではないから、部下を育成できていないほか、ボスが早期に定年してしまうのももう一つの理由でしょうね。
自分もベトナムで、経営管理している身として、(当たり前ですが)仕事は楽ではありません。計画的に進められないことも多く、ストレスをためやすいです。年を取っていき、体力が残った期間が少なくなるほど、必然的にストレスから避ける方法の一つとして、早期定年が考えられます。有名なTrung Nguyenコーヒー創業者のVu社長が山奥へ行き、禅を極める話がとても話題になっていたが、これもストレスから解放したいかもしれませんね。
日本人は早期定年どころか、定年後も仕事したい人たちが圧倒的に多いように見受けられます。そういう日本から見て、早期定年を目指すベトナム人はどう見えているのでしょうか?「もっと活躍して、大きなことをすべき」とか、「暇で、何が楽しいのか」とか、いろいろ突っ込みどころがあろうと思います。しかし、(私がベトナム人だからかもしれませんが)早期定年を目指すのはとても良いことだと思います。世間一般より何倍も何十倍も資産を蓄えられて、資産運用もできるとなると、とても立派です。早期退職することで、後輩に活躍するチャンスを渡せる機会となり、組織の新陳代謝としても良いことです(少なくとも、活力のない年配社員がたくさんいる職場よりはきっと良いはずです)。ただ、成功したベトナム人の多くが退職後はどこかに静かに消えていき、早期定年を実現したノウハウなどを伝承していません。自信をもって、書籍という形でも残し、後輩たちに夢を与えてほしいと思います。それができたら、若くして仕事がスーパーできるベトナム人後輩達がたくさん出てくるでしょう。それは人材リソースという面でも、とても良いことですし、嬉しいです。