第24回 思い込みに関して

※「こうなりたいので、投資してほしい」というテーマで書く予定でしたが、今号は思い込みに関して考えることにします。

ベトナム人も日本人も程度の差はあるものの思い込みはします。コミュニケーションの失敗を経験するたびに、思い込みを発見して、解いていくわけですが、とても時間がかかります。とくに思い込みの強い新卒者は最初の職場でかなりの思い込みを正すことになるので、採用サイドはできれば、未経験者を避けて、経験者を採用することになります。何かしらの方法でこの思い込みを短時間で正せれば、会社に早く貢献できるようになり、新卒者の採用もしやすくなることは容易に考えられます。

弊社のような、ヘッドハンティング業という専門的な職業では、マルチタスクスキルを育てる意味で、新人に対してでもかなりのタスクを投げます。ポイントはやや粗い投げ方と本人の力量を超えての量を投げることです。やや粗いインプットを自分なりに整理すること、そして、自分の力量を認識し、上手に調整するスキルを身に着けてほしいという狙いです。一部狙い通りの結果を得られますが、多くはパフォーマンス低下し、マイナススパイラルに落ちてしまいます。そこで、下記の会話のようになります。

  • Q:何で結果がないの?
  • A:仕事が多すぎます
  • Q:なんで断らないの?
  • A:ええ?断れるもんですか?・・・

ホウレンソウができていないと言ったら、そうですが、そもそも、断れないと思い込んでいるので、ホウレンソウの相談は生まれないわけです。上記の会話が起きて、それから、考え方を教えたりするのは入社半年ごろでしょうか?これを入社研修で済ませると半年の短縮になります。

この思い込みは英語ではAssumptionと言い、心理学博士のAlbert Ellis氏はABCD理論を提唱してくれました。現象(Activating Event)はある信念(Belief)によって結果(Consequence)を生むわけです。果たしてその信念が正しいか?疑問を持って、反証(Dispute)して考えると違うことが見えるのです。

  • 現象:たくさんの仕事を依頼される
  • 信念:上司の指示は断ってはいけない
  • 結果:パフォーマンス低下・相談なし・思考停止
  • 反証:本当に断ったらダメですか?
    断らないでパフォーマンスが低下するのと、断ってパフォーマンスを出すのと、どちらが会社にとって良いことでしょうか?
    「やりません」という断り方ではなく、「現状だとすぐやれませんが、○○日後まで待ってもらっていいですか?」あるいは「自分ではなく○○さんに頼んだ方が早くできますよ」というように返し方をいくらでも工夫できます。

上記のようにことを細かく砕いて、議論させて、気づかせる必要がありました(私は幸いなことに、大学院の時に研修室の先輩が教えてくれました)。ほかにも10個ほど、新人ではよく引っかかる思い込みを棚卸しして、一緒に考えていくのが弊社の新人研修の最も大事な部分です。彼らの成長を大変楽しみにしています。

次回は、「社長は私のことを信用してくれていないんじゃないか?」について、考えたいと思います。