第18回 「若いのでいろいろな経験がしたい」とは?

よく若い社員に「現在の仕事を続けていくと、3年後にどんな仕事ができますか?」と質問されます。
あれ?どういう意味?今の仕事を継続すればいいじゃないか?と思って、尋ねたら、「私は若いので、いろいろな経験をしたいです」というのです。どうも今の若い世代では転職することは経験を積むためのものと理解しているらしく、逆に、一つの仕事では経験を積めれないとでも考えているかもしれないということに気づきました。

皆さんとの解釈の違いがないように、そもそも経験とは?について辞書で調べることにしました。

経験[名](スル)
出典:デジタル大辞泉(小学館)

  • 実際に見たり、聞いたり、行ったりすること。また、それによって得られた知識や技能など。「経験を積む」「経験が浅い」「いろいろな部署を経験する」
  • 哲学で、感覚や知覚によって直接与えられるもの。

日本人感覚で言うと、経験とはまさに「仕事によって得られた知識や技能など」として捉えます。一方で弊社のような若いベトナム人の子らはおそらく「感覚や知覚によって直接与えられるもの」として、考えているかもしれません。

少なくとも、私は知識や技能を体得しようと思うと、自分の限界に挑戦し続けて、努力しなければ得られないものと考えています。仕事の中で、そのような苦労があるから、体に染みつきスキルが身につくわけです。そういう意味で、経験したければ自分に対して挑戦し続ければよく、「新しい経験を求める=転職」はまったく見当違いのように感じてしまいます。言い換えると、私にとって、経験=挑戦というややストイック的な捉え方になっています。営業担当者として全うできたら、それより高いターゲットを挑戦するか、人材育成に挑戦したり、会社幹部、業界KOL(※1)になったり、自分次第で挑戦できることはいくらでもあります。

それに対して、弊社の若い子たちは新しい体験、新しい感覚を味わったら、それはそれで経験ととらえているでしょうね。なので、どんな仕事でも表面的に分かっていればすぐマンネリ化し、違う職場、違う環境を求めて、新しい体験、新しい感覚を追い求めているように思います。当然ながら、転職先も即戦力を求めているので、過去の経験を活かせる形での転職になるため、表面的には合理的な転職に見えます。本人もキャリアアップしていると捉えて安心しているが、大した挑戦もなく、大したスキルアップもありません。

こう考えると、組織の仕組みとして、どうやって外向き的な体験を求める体質から内向き的な挑戦へ目を向けさせることがとても重要と感じています。

そうは言っても、各社では何らかの形で実施しているはずです。目標、KPI(※2)、MBO(※3)などがそういったような挑戦を促すものにほかなりません。しかしながら、目標を楽しく挑戦するか、後ろ向き的でいやいや挑戦させるかで、大きく結果が違います。ここにはかなり工夫する余地があるように思います。

そういう意味で、弊社では現在、努力賞という制度を新たに導入しようと計画しています。上記のようにKPIやMBOなどで評価すれば良く、一所懸命努力して、実績ベースで成果がでてきている社員を評価対象とした制度になります。努力すれば、ちゃんと評価される会社になっていれば、社員も努力し続けるでしょう。挑戦を楽しんでもらえる会社でありたいですね。

次回は「家族と一緒にいたいので、仕事をやめます」について、考えたいと思います。

(注記)
※1)KOL(Key Opinion Leaderの略)
※2)KPI(Key Performance Indicatorの略)
※3)MBO(Management By Objectivesの略)