第8回 責任を取るのは仕事を辞めるの?

日本人からして、ベトナムスタッフはよく簡単に仕事を辞めているという印象を受けているのはいうまでもない。様々な理由の中には、よく「会社に貢献できていないので、責任を取って、辞める」言い方がよく耳にする。パフォーマンスがどうしても上がらないスタッフは仕方ないが、中にポテンシャルの高いスタッフまで辞めるのは非常にもったいない。もう少し、努力していれば、成果をあげられるので、長期的な観点に立って、頑張ってほしかった。

思えば、自分が20代のときに、会社のオーナーでもある日本人上司に対して、このことを議論したことがあった。辞めるつもりはまったくなかったが、責任を取って、辞めるのは立派な考え方ではないかを言いたく、議論をぶつけたわけで。すると、日本人上司はネットで文献を調べたり、知り合いの日本人経営者から意見を収集したりして、それを参考に提供してくれた。辞めるか否かは会社にとって、良いかどうかという判断軸を持つことを教わった。今すぐ辞める選択肢以外に、成長して、会社に貢献して、よい功績を残した上で、去ることも考えられるようになった。

今すぐ辞めるというのは自分の能力を固定的にみて、今の環境でパフォーマンスが上がらなければ、パフォーマンスがあがる会社を探す。どちらかというと出来上がっているプロの考え方である。一方で、辞めないで仕事を継続する選択は、パフォーマンスがあがるまで、自己否定しつづけて、試行錯誤して、自分を変えようと成長意欲の高い人材と言える。ベトナムスタッフは決して、自分がプロであるとは思っていない、成長意欲も高いように感じられるが、責任を取って、仕事を辞めるという考え方が強く持っていることに対して不思議に感じる。

  • 借りを嫌っている考え方:”Của biếu là của lo của cho là của nợ”「他人からの贈り物は借りだ」という言い方はベトナム人は誰一人知らない人はない。これを対人関係の信条にしている人も多いように感じる。そのように、極端に借りを嫌っているので、会社から投資してもらって、そのうちに会社に恩返しするという考え方を最初から否定している。
  • 一心同体の考え方を持っていない:戦争の歴史が長いかお互いはそう簡単に信じ合えない。そうすると、自分は自分、相手は相手というように、無意識的に壁を作っている。自分のキャリアと会社の成長は一心同体ではなく、部分最適化を考えているため、会社が教育に投資してくれたのを返す思いは薄い。
  • 長期的なキャリア感を持たない:士業以外の一般職はなかなかキャリア感を持つのは難しい。日本であれば、本を出版したり、講演会したり、努力することによって、業界のドンになる道がある。しかし、ベトナムではこのような道は一般的ではないため、キャリアの一貫性を意識しない若いスタッフも多い。お給料さえ高ければ、キャリアの一貫性を無視してでも、転職してしまうわけ。

パフォーマンスが上がらない時に、責任を取って、仕事を辞めるという考え方自体はプロとして、立派な考え方である。まだプロではなければ、上記のことを含めて、丁寧に啓蒙する必要がある。長期的なキャリアを示し、一心同体の気持ちを持っていれば、スタッフも成長し続けて、そのうちパフォーマンスが出せるようになると考えている。