第4回 節約志向のスタッフがリーダーになる
弊社では、社員が自分でパソコンを用意し、会社から月額50万ドンの補助を受けるという制度を採用しています。この制度のメリットは、社員は自分のパソコンを大切に使えることや、会社は固定資産を持たなくて済むことです。また、パソコンの購入費用がないスタッフには、無利子でお金を貸し出しています。この場合、ローンの返済はPC補助金から差し引かれますので、3年ほどで自分のパソコンを手に入れることができます。これは非常にお得な制度だと私は思います。
この制度を導入しても、意外なことに多くのスタッフが古いパソコンを使い続けていることが分かりました。理由を聞くと、みんな口を揃えて「まだ使えるから捨てるのはもったいない」と言います。しかし、実際には充電が15分しか持たないものや、壊れたキーがあるもの、処理速度が非常に遅いものなど、ハイパフォーマンスとは程遠いパソコンばかりです。
彼らはパフォーマンスや利便性を犠牲にしてまで、お金を節約することに慣れています。これは節約というより、我慢というべきでしょう。
私は21年前に日本に留学した経験があります。そのときは奨学金をもらっていましたが、一生懸命お金を貯めて家族に送っていました。当時のベトナムはとても貧しく、家族を助けたかったからです。田舎を出て家族へ仕送りをする社員も同じ気持ちでしょう。しかし、仕送りしないでお小遣いをもらっている社員でも、節約一辺倒で生活水準を下げる社員が多いのです。これはベトナムに安くて質の悪いサービスが多く、節約できる環境があるからだと思います。
そのような従業員がマネージャーになると、多くの問題が生じます。最初の問題は、有名なレストランで食事をしたり、高級なサービスを楽しんだり、快適で美しいホテルで休んだりするなどの楽しさを、マネージャーがスタッフへ提案できないことです。よりよい生活水準へ引き上げるのは、マネージャーの役割の一つです。次の問題は、マネージャーの支出が収入に見合わないことです。つまり、このマネージャーは多くのお金を貯めるでしょう。マネージャーがお金を持っていても、そのお金を使う動機がなければ、やがてより高い目標に向かって動く動機も失います。これは、マネージャーがキャリアチェンジしたり、あるいは仕事を辞めて別の会社に行ったりするリスクを高めることにも繋がります。
そのため、従業員をマネージャーのポジションに昇格させる際、報酬を上げて動機付けを高めるだけでなく、収入に見合った楽しみのある生活スタイルを持つように導くことも、非常に重要な注意点であると言えます。
男性の場合、趣味の範囲が狭くて選択肢が少ないことが多いです。一番簡単な方法は、自分の趣味にマネージャーを参加させることです。例えば、一緒にスポーツをしたり(サッカー、バドミントン、ゴルフなど)、他にも特殊な趣味があれば(バイクで旅行する、釣りをする、絵や写真を集めるなど)、それに誘ってみるといいでしょう。マネージャーが自分の趣味を見つけると、必ずもっと好きになり、その趣味にお金を投資することにも積極的になります。趣味に投資するための財政的なニーズは、このマネージャーが仕事で努力する動機になります。
女性については、身だしなみを整えたり、何らかのサービスを利用したりなど、基本的には男性よりも収入を維持する動機が常にあります。ただし、ある程度の収入を超えると、独身女性のマネージャー(ベトナムの習慣に従えば、独身女性は外食や旅行時に彼氏に支払ってもらうことが多い)は、自分の貯えを使用する目標が全くない可能性が高いです。私は従業員に対し、機会があれば、みんなの財政計画について話します。これを話すことで、私は彼らのお金を稼ぐ目的を想像することができます。例えば、ある者は将来の投資のために貯金する必要があるとし、退職後に安定した生活を送りたいと考えています。別の者は、家を建てるために、両親を助けるために貯金したいと思っています。従業員の財政計画を把握することで、より大きな財政目標を持つ従業員にアドバイスを提供することができ、そこから発展する働く動機を維持することができると考えます。