第3回 ベトナム人の金銭感覚
先日、日本出張に行ってきました。日中の仕事を終えて、銭湯にも行き、最後には居酒屋で一杯しようと思い、新宿にある居酒屋の「天狗」に覗いてみました。名前がタオとカタカナで書かれている女性店員に迎えられ、ふとベトナム人なの?と聞いたら、案の定ベトナム人でした。席について、さらに聞くと、どうも店長は日本人ですが、それ以外は厨房も含めて、全員ベトナム人でした。自分の留学時代を思い出して、嬉しかったです。勘定後に、サービスしてくれた女性店員に「ほんの気持ちだけですが、これでみんなで飲みに行きなよ」と少しだけのお金を渡しました。すると・・・
店員:「お気持ちだけ嬉しくいただきます。しかし、お金は受け取れません」
よく確認すると、お店でお客さんからお金を受け取ったらだめというわけでなく、単に遠慮している様子でした。いくら言っても受け取ってくれなかったので、仕方がないので、コンビニでおにぎりなどを多めに買って、店員の子たちに渡しました。日本人であれば、素直にありがとうと受け取ってくれるはず。なのに、なぜこのベトナム人の女性店員は受け取らなかったのだろうと思います。
仕事上でも、お給料が上がる、またはインセンティブももらえたりした場合、相手に対して良かったねと言うと、「いや、私はお金をあまり意識していませんよ」と答えます。しかし、いろいろな会話を勘案するとそれなりにベトナム人も所得を意識しているはずです。なぜ、お金に対して、素直にならず、避けたがっているのでしょうか?
いろいろ観察している中で、ベトナム人の金銭に対するコンセプトは下記の3点にまとめれます。
-
1.金欲をみせたらいけない!
今こそ近代化しているベトナムですが、もう少し前ではほとんどの町が村社会でした。基本、大家族で生活したりするので、お金ではなくご近所さんとお互いに非金銭的なやり取りをしてきました。その中で、お金、お金を主張する人はいけないと小さいころから教育されてきたため、「お金」を主張しない方が多いように思います。ちなみに余談ですがお金というものに意識が低いことから、お互いに無利息で期限をつけず貸し借りするということも日常よくある話です。これも上記のタオさんが遠慮して、お金を受け取らない理由になります。
※ベトナム人同士の感覚で、ベトナム人と外国人ではまた別です。 -
2.大ぴらに自分がお金を持っていることを振る舞ったら良くない!
お金の大小で上下関係ができてしまうことが多く、純粋な友情を害する場合もある。よって、割り勘しないで、お金のある人は全部清算して、その金額すら他に知らせない。それも当たり前なので、払わせてもらえている感覚で、感謝を期待しない。女性とデートする時も、自分がすべて払うという感覚を常にもち、それを嬉しく思うべきであるということです。
-
3.お金よりも友情、家族愛、愛国心、自己犠牲を優先する!
お金よりも友達や親族が大事。ベトナム人の考え方としてお金はまた稼げるが人間関係は一生のものだという考え方の方が非常に多いです。従って、友情、家族愛を表現する方法として、いかにたくさんその人たちにお金を使うかという事を意識しています。ビジネスでいえば長時間にわたる接待、超一流レストランやプライベートクラブもこの考え方の一つで、いかに世話になった人にお金を投資するかという精神、また気持ちの現れと思われます。
私は日本人と長く仕事してきているので、金銭感覚はどちらかというと日本人っぽいと思います。すると上記のように、お金をあげても受け取ってくれない、昇給しても素直に喜んでもらえない、友人など一時的にお金を貸しても返済に関して、こっちから言わなければ相手から何も言ってこないなど、とても違和感を感じますが、コンセプトを理解すれば、納得できます。
組織作りにおいて、とくに弊社のように営業色の強い仕事ではお金に対して、素直になってもらう必要があります。素直に喜ばなければ、思い切った取り組みが中々できないのがその理由です。弊社で、まずはMVP(Most Valuable Person)賞を設けて、成績の良いスタッフを表彰することにしました。表彰状と賞金を渡すだけではなく、全社朝礼にて褒め、さらに外部にも公開する写真入り掲示板に写真を飾ります。写真を飾るのはいやだというスタッフもいましたが、何とか納得して、協力してもらうことになりました。このMVPを通じて、努力すれば、良い結果を得られ、正当な評価を受けられる。稼げる力がプライドとなったりします。そして、「後悔しない社会人の一年目の働き方」という著書を教材にして、会社の備品における価値観・大切さや休憩時間は時に会社にとってコストになる等という考え方を長い時間かけて社員に浸透させています。
そして、リーダーとしての自分には上記の3のように、金銭を超えた愛情を部下に示すのが今までもこれからも課題だと思います。それが感じれる部下は今度、他のメンバーのために、一所懸命になり、まさしく、ONE FOR ALL、ALL FOR ONEで組織全体が活性化していくのです。逆にこれができない組織は衰退していくかもしれません。
お金を稼ぐのはそう簡単ではないのですが、使うのがさらに難しい気がします(笑)。
次号では節約好き、我慢好き?について、考えたいと思います。