第19回 年末賞与とAWS(13ヵ月目給与)の違いと制度設計のポイント
〜年始に見直したい「支給基準」と「就業規則」の整備〜
あけましておめでとうございます。
新年を迎え、経営者の皆さまにとっては、本年の目標や体制づくりを考える時期となりました。昨年の成果を振り返りながら、社員一人ひとりの働きや貢献度をあらためて見つめ直す良い機会でもあります。シンガポールにおいては、通常年末に後述するAWSと別に業績連動ボーナスを決算利益が確定した1,2か月後に原資から各社員のパフォーマンスにおいて分配します。
AWSとは?
一般的にはAWS (Annual Wage Supplement)と呼ばれるいわゆる「13ヵ月目の給与」として位置づけられ、Supplement(生活給の一部としてに補助金)として定義付けされます。そのため、Variable Bonus (業績連動ボーナス) のように会社の利益や個人の業績・評価に応じて支払われる「真のボーナス」とは分けて考える必要があります。
支給義務と就業規則上の注意点
AWSについては、法的には支給の義務はありません。ただし、雇用契約書の中に「12月に支給する」と明記した場合、必ず支給しなければならず、支給を怠り労使紛争に発展した企業もあります。そのため雇用契約書や従業員就業規則の中には、「当社には、いわゆる”13ヶ月目の給与”と呼ばれるAWSを支払う法的責務はないが、社員に12月に給与と共にAWSを支払うこととする。但し、途中入社の正社員に対しては、按分で支給される。」とあくまでも支払う義務はないが、(慣行により)支給すると一文を添えることが一般的です。
弊社の顧客の中で業績好調な企業は、AWSを1.3か月分支給することを検討していると言われましたが、AWSは業績連動ボーナスではなく、あくまでもSupplementであり、会社の利益や個人の評価に応じた業績連動ボーナスとは明確に区別する必要があります。MOM(シンガポール労働省)も、AWSは給与の1か月分を超えてはならないと明言しています。この企業の場合、AWSを給与の1か月分(フル)に加え、業績連動ボーナスを個人ごとに支給する形を採用しています。
一方、業績の悪い企業では、フルの1か月で支給することが困難なケースもあります。前年度1か月分支給している場合、減額すると従業員のモチベーション低下に直結し、支給後退職されてしまうリスクがあります。とある飲食業ではキッチンスタッフには支給、ホールスタッフには支給なしといった、同一職場内での「ダブル・スタンダード」が発生しているケースも見受けられます。限られた原資の中で重要な社員に工面する必要があり、キッチンスタッフ数名に、0.5か月分を支給するなどの調整も行われています。
支給対象者の定義と日割り計算の基準
支給対象者は通例、
1)
3ヶ月以上継続して勤務し、試用期間を終えた正社員
2)
12月31日時点で在籍している者
3)
従業員が12月中に退職を申し出た場合は支給なし
と定義する必要があります。
特に10月1日以前に試用期間を終了した従業員に関しては、起算日を入社日とするのか、試用期間終了後とするかを明確にする必要があります。通例は、12月31日までの在籍期間を基に日割りで計算する方法が一般的です。
業績好調な企業では、AWSに加え業績連動ボーナスを合わせて支給するケースもあり、特に日系企業に多く見られます。中華系企業は旧正月前に支給するケースもあり、支給月に関しては特に決まりはありません。
AWSは年間の賃金体系の一部として社員の生活補填金の位置づけですので、1年間頑張ってきた社員への労いとして、少なくとも半月分は支給することが望ましいとされています。