第14回 履歴書・職務経歴書の詐称を見抜くには

最近、日本のニュースで静岡県の伊東市長の「学歴詐称疑惑」が取り沙汰されています。市長本人は自身の学歴について「記憶が曖昧」とのことで、これまで「卒業」したことになっていましたが、実際には「除籍」であり、卒業していないことが判明しました。
議員たちに卒業証書をチラッと見せる様子も映像で残っていますが、そもそも大学を卒業していなかったことをひた隠し、大卒として市長に就任していたということになります。このため市長は、「改めて市民の皆様のご判断を仰ぐ」として辞任・再立候補の意思を表明しましたが、現在は保留状態となっています。

弊社では顧客企業から人材採用のご依頼を受ける際、まずはポジション、業務内容、雇用条件、ベネフィット等の要件を元に募集広告を掲載します。募集広告は、求められている役職に応じた人材プラットフォームに掲載します。釣りに例えると、求める「魚」がいそうな「漁場」を選び、「餌」を仕掛け釣り上げるといったところでしょうか。

次にレジュメや職務経歴書を選別していきます。人間が一人ずつ違うようにレジュメもまさに千差万別で違っています。また自己申告なため、どこまで真実かは分かりかねます。1枚でシンプルにまとめ上げているのもあれば、文字が多く読み手の事を考えていないような自己主張が強いものがあります。求職者から見れば、自分に興味のある案件に応募をしてきていますので、なんとか求人企業の担当者の目に留まってほしいという思いから、そのような表現になってしまうことも理解できます。

一方求人企業側は、「書類選考」でいかに求めるポジションに見合った人材かどうかを見極める必要があります。レジュメ・職務経歴書は上述の通り、自己申告がベースであり、書いてあることが真実かどうかを書面上で判断するのはかなり難しいです。しかし、まずは書いてあることを信じようという性善説で選考をしていき、数名の中から企業面接を実施していきます。

人材紹介会社を通す場合、所定の「登録フォーム」が用意されていることが多く、基本は「手書き」で書かせることにより、「嘘」を書くことはまずないと、ある程度確認が可能になります。これが、提出されたレジュメ・職務経歴書以外の内容をチェックすることにもつながります。

職歴に関しては過去に遡る必要があり、職歴が短い場合、退職理由と次の仕事へのつながり(転職理由)を重点的に聞くことで、職務耐性を知ることができます。ただし、実際に本人から辞めたのか、雇用主から辞めさせられたのかについても自己申告なので、レファレンスがあれば前職の方に聞くことはできますが、まずは本人を信じる必要があります。

学歴に関しては、大学であれば卒業証明書をチェックする必要があります。上述市長のようにチラッと卒業証書ではなく、そのコピーを十分にチェックする必要がありますが、その証書自体が「偽物」である場合、正直見抜くことは困難です。

学歴詐称を防ぐ手段として、シンガポール政府は学歴証明書を検証・審査する専門業者を指定しています。以前同国では詐称が多かった中国とインドの大学の卒業証明書をチェックしていましたが、今は全ての外国人が高技能労働者向けビザ(EP)を取得・更新時に真偽を証明する必要があります。裏を返せば、それだけ学歴詐称のケースが多いとのことでしょう。採用したあとに詐称が発覚されることがないように、全方位でチェックを行う事が肝要です。