第13回 即レスが評価されるケース

世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している世界各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」が先月発表されました。政治、経済、教育、健康の4分野での平等度を指数化したものであり、日本は女性の政治参加や閣僚の数の低さ等のマイナス要因が重なり、前回と同じ148カ国中で118位という結果になりました。一方シンガポールでは、東南アジア諸国の中で20位であるフィリピンの次の47位という結果となり、比較的男女のギャップは少ない傾向が見られます。
筆者は東南アジアのタイ、インドネシア、シンガポールで日系企業を中心に「人材紹介」を行っておりますが、昨今企業側からの要望として「できれば女性で」と男性を敬遠する傾向が見られます。
その理由として、とある企業の経営者は男性も女性と同じポジションで面接を重ねていく中で、男性には「決め手」に欠けるところが多いことが挙げられます。性差別はしていないものの、結果的に女性社員の採用になってしまっている傾向があり、当社は10名以上の社員全員が女性社員で構成されています。
こうした背景の一つとして挙げられるのが、「即レス(即時レスポンス)」の重要性です。ビジネスの場では、メールやチャットを早く返信する「即レス」が重要だといわれます。弊社の顧客の中で、寄せられる苦情の大半が「返事が遅い」「無視されている」「相手にされていない」といったレスポンスの遅さに関するものになります。
ある弊社のクライアントからは、弊社担当の男性社員に送った依頼に関するメッセージに対して、レス(ポンス)が遅いとのことで、弊社全体のイメージ低下につながり、先般はその会社に「謝罪」と今後の「即レス」する解決策(男性社員から女性社員に変更)を提案、実行していくことになりました。
上述したシンガポールのジェンダーギャップ指数が世界的に見て高い傾向であることも影響しているのかもしれませんが、ある女性経営者から、土日でも深夜でも弊社男性社員にメールを送り、そのレスが遅いと不平を言われる時がありました。時間外でのレスをすることは「時間外労働」に当たることから、予め週末に送られたメッセージは翌月曜日に対応することを相手に伝えることにより、「レスが遅い、レスがない」という不満も回避することができます。
「即レス」は質問をしている側の視点からだと、すぐに回答を得ることによって、「ちゃんと見てくれている」「放置されていない」と信頼や安心感を生み出し、心理的安全を得ることができます。

また、「即レス」ができる人は常にビジネス上のアンテナを張っており、仕事もできる印象を相手にもたらせます。「ワッツアップ(WhatsApp)」といったメッセージアプリでは、文字だけでなく絵文字もあるので、絵文字を返すだけでも「即レス」で反応したとみてもらえます。そのような対応をすることで「完了」として機能し、双方が「次」に行けることにもつながります。
メッセージアプリはいつでもどこでもメッセージを送れる利便性があります。しかし、経営者同士の場合であればまだ理解できますが、上司から部下に「業務時間外」にメッセージを送る場合、今の時代パワハラやカスハラ(カスタマーハラスメント)と認定されるかもしれないので要注意です。
また、病気や家族の不幸等緊急の場合、「<至急>」とタイトル付けをし、忘れない内に部下に業務内容を伝達したい場合は、「<返信不要>」と前置きし、「目を通しておいてください」程度であれば相手にも理解されると思います。
「即レス」は基本的に評価されますが、それが双方にとってストレスにならないよう、組織として適切なルールのもとで運用されることが肝要です。