第12回 シンガポールにおける休暇申請の種類

シンガポールでは先月3日に総選挙が実施されました。全97議席のうち、与党・人民行動党(PAP)が87議席を獲得し圧勝となりました。トランプ関税による世界経済の先行き不透明感や、物価高などの国民生活に直結する懸念が争点となり、安定を求める国民の心理的要素もあったことから、結果として与党を信任した形となりました。残りの10議席は最大野党の労働者党(WP)が獲得しました。

シンガポールでは義務投票制が導入されており、今回の投票日は土曜日だったということで、国民全員に投票を促していました。この日を「祝日」とし、この「祝日」の取り扱いについて、各方面から弊社に疑問・質問が寄せられました。

結論から申し上げますと、3日を「祝日」とした結果、土曜日を非勤務日としている企業(Non-Working Days)の場合、従業員に一日分の給与を付与しなければならないという制度があります。

各所から寄せられた質問としては、「総選挙に関係ない外国人になぜ一日付与しなければならないのか」「流通業でその日(5月3日)に勤務している場合はどうしたらいいのか」といった内容がありました。政府の公式サイトによると、とにかく一日付与しなければならないとありますが「いつ」までに取得してもらうかは具体的に明記されていません。

弊社の中では5月中に取得する社員、6月の友人の結婚式に参加する為、母国に帰るマレーシア人社員など、自由に「追加の祝日」を各自設定してもらいました。会社としてはPublic Holiday in lieu(祝日の代休)として記録を取り、通常の有給休暇とは分けることが必要になってきます。

このほか、ある日系企業のケースでは、今年の1月に赴任されてきた方が、シンガポールにおける休暇の一種としてSICK LEAVE(傷病休暇、MCとも呼ばれます)に疑問を持たれていました。「日本ではSICK LEAVEの制度がないため、なぜ有給休暇とは別にSICK LEAVEがあるのか」といった内容でした。

こちらの方が勤めている日系企業において、組織的な問題があるのかもしれませんが、社員がほぼ毎週月曜日に「病気」になり、出社せずSICK LEAVEの申請がありました。傷病休暇制度があるのは分かりますが、「忙しい時に限って病気にかかるのは疑問が残る」と仰ってました。

疑問が残るものの、SICK LEAVE制度は、正当な医師の診断書(MC:Medical Certificate)がある場合<のみ>認められるもので、企業はMCが社員より提出された場合SICK LEAVEを無条件で認可しなければなりません。

また別のとある企業では、SICK LEAVEの取得をできるだけ防ぐために、「Attendance Allowance(皆勤手当)」を支給する制度を導入していました。従業員が3か月連続、6か月間連続で取得しなかった場合、さらに皆勤手当の金額を2倍、4倍と引き上げており、その制度がモチベーションにつながっていた従業員もいました。

ある商社では、1月1日を起算日とし、毎年14日間付与されるSICK LEAVEを年に7日以上取らなかった従業員にSPECIAL BONUSとして数百ドル(1シンガポールドル=約110円)を支給していました。

しかし、MOM(シンガポール人材開発省)の見解によりますと、SICK LEAVEを金銭で取得の制限を設けることは認めないとのことで、上述2社の各制度は結果的に「廃止」となりました。

弊社は、とある飲食業の経営者から、「従業員がSICK LEAVEを頻繁に取得するため、解雇したい」との相談を受けました。しかしSICK LEAVEの取得が多いことを解雇理由にすることも違法となります。

この場合、あくまでも業務のパフォーマンスに問題があることを口頭で伝え、解雇通達書では、雇用契約書の通達期間に基づいて、最終日を明記するだけです。

SICK LEAVEを従業員が取得できる権利をMOMから規定されている以上、従業員の健康管理にも目を配り、傷病休暇の取得をできるだけ減らしてもらうことが重要です。