第7回 最新の人口統計からの人事戦略

2024年6月末時点での人口統計では、総人口は604万人になり、2023年までに人口を650万人から690万人にするという2013年1月末に発表された「人口白書」の目標値に対して、この時点で600万人台に到達していることから、着々と近づいてきています。

その604万人の内訳で特出すべき点が2点あります。
1点目は「外国人」の構成比が40%を超えそうな数字(実際は39.73%)になったということです。
逆にシンガポール国籍(いわゆるシンガポール・シチズン)は60%台前半で、昨年同時期との比較では0.8%の微増で今後も外国人比率が高まることが予測できます。

その「外国人」の内訳の中にシンガポール永住権者(SPR)が54万人(約9%)含まれています。
国籍の内訳は発表されていませんが、他の「外国人」とシンガポール・シチズンの間に位置しているような形です。
時には動物の仲間、時には鳥の仲間のような蝙蝠(こうもり)に例えられることもあります。

日系企業が「日本人」を雇用したい場合、新規でのEPを雇用するには、ほぼ毎年申請基準が見直しされます。
その際、給与・学歴・シンガポール人雇用比率などの条件をクリアしなければならず、ハードルが年々高くなってきています。昨年と同時期を比べると、約3000件の減少(率にして98.5%)、またEPの代替として位置づけられているS-Passも約2100件の減少(率にして98.8%)とアフターコロナで増加傾向にあった数は減少に転じました。

その中で、EPとS-Passの規制に制限されないシンガポール永住権者(SPR)は日系企業で重宝される傾向があります。高齢化しているものの、経験値が高いことから給与水準は現地スタッフと同様として雇用できるメリットはあります。

但し、CPFの会社負担分を55歳以下であれば総支給額の17%を別途人件費の一部として拠出しなければならないので、その点は留意する必要があります。

2点目は、65歳以上の人口比率がほぼ20%(実際は19.9%)つまり5人に1人となり労働人口の減少に直結していることです。
また平均年齢は43.4歳となり、急激に少子高齢化が進行していることが伺えます。その中で、再雇用契約の年齢制限を67歳、68歳と上げてきており、2026年7月1日からは69歳となります。

ただ、企業としてはパフォーマンスが明らかに落ちていく高齢者よりは、若手を採用したいのは当然のことで、再雇用制度は制度としてあるものの、弊社の顧客では今のところ法定定年(現在63歳)を迎える方で再雇用されたケースは、残念ながらありません。
政府は再雇用できなかった時の救済策として、「雇用支援金」を雇用主は月額基本給の3.5ヶ月上限1万4750ドルを支給することを定めています。

弊社の顧客では、現在月額給与を10,000ドル以上の62歳の社員の再雇用をしない方針で動いています。社歴が長い分、日系企業独特の年功序列制度で現地スタッフにも適用している製造業の管理職は50代から60代の社員の人件費比率が高くなっており、逆に若手が育ちにくい環境下、真のリストラを計画している企業が増加してきています。

今後は「外国人」「SPR」「シンガポール・シチズンの高齢者」とのバランスを保ちつつ企業の組織運営をしていくことが急務になっていきます。