第6回 シンガポール人のエンジニアを雇いたい

「シンガポール人は油を触る職業に就こうとしない」という話を、弊社の顧客である船舶メンテナンス会社の社長がしておりました。
同社は船舶部品の修理・メンテナンスを主業務としており、当然ながら「油」を使用します。
従業員構成は大半がフィリピン人やマレーシア人といった外国人労働力で、シンガポール人は1人もいない状態です
単純労働者向け就労ビザ(ワークパーミット=WP)を取得するにはシンガポール人も雇用する必要があります。
同社では営業職や事務職でシンガポール人を雇用し、割り当て(全従業員に占めるWP保有者の割合を規定する措置)を確保しています。
シンガポール人エンジニアの雇用に関しては、募集広告を出しても応募数が少ない状況です。
その中から面接を設定しても当日にキャンセルする人や、希望給与が予算を超えている人も多く、なかなか採用に至ることができず、結局は外国人労働力に頼らざるを得ない状況が続いています。
雇用主は外国人のWPを取得する際に5,000Sドル(約57万円)のセキュリティーデポジット(保証金)を用意する必要があります。
しかし、マレーシア人は対象外で支払う必要がありません。
それ以外の国籍の外国人労働者(中国、フィリピン、ミャンマー、バングラデシュなど)には同デポジットを納めることが求められ、雇用主に負担がかかってしまいます。
最近は外国人労働者の出身国で経済成長や賃金上昇がみられます。
中東地域でも人材確保の勢いが増している現状下で、シンガポールへの「出稼ぎ」は以前のように魅力的ではなくなってきています。
またインドネシア人は、メイドを除いてWPを取得できない状況となっており、インドネシア人エンジニアをWPで雇うことはできなくなっている現状があります。
WPは年齢制限もあり、18歳以上でマレーシア人は58歳未満、その他の国籍は50歳未満の人のみ新規申請ができるようになっています。
世界的に高齢化が進む昨今では、年齢制限によりさらに外国人労働者が逼迫(ひっぱく)することも考えられています。

WP以外では中技能の熟練労働者向け就労ビザ(Sパス)を取得する方法もありますが、取得要件となる給与水準が年々上昇しています。
昨年9月からは月額3,150Sドルが最低ラインとなりましたが、45歳程度であれば4,650Sドルまで引き上げないと認可されない可能性もあるのが現状です。
前述した船舶メンテナンス会社では、フィリピン人とスリランカ人にSパスを発行していますが、更新する際に賃金上昇が発生する場合は、更新をせず解雇も視野に入れているとのことでした。
シンガポール人を雇用するために必要なこととしては、当然ながら魅力的な「報酬」「福利厚生」を用意する必要があります。
福利厚生の1つとして出勤時に7~10Sドルの「食事手当」を支給することや、有給休暇以外にも「誕生日休暇」や「特別休暇」といった休暇を付けることで報酬以外の待遇を改善していけば、新規の応募が増えリテンション(人材の確保)にもつながっています。