第5回 MICEビジネスの活性化

昨年の8月中旬に、東部の大型展示場シンガポール・エキスポでシンガポール全国旅行代理店協会(NATAS)主催の旅行フェア「NATASホリデーズ」が開催されました。初日は金曜日でしたが、会場はシニア層の夫婦を中心に旅行を計画する人が多く詰め寄せました。シンガポールの大手銀行も多数出展しており、銀行のクレジットカードで旅行ツアーを申し込むと、スーツケースが無料でもらえるといったプロモーションには長蛇の列ができていました。
日本政府観光局(JNTO)も日本館を設置し、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のプロモーションに注力していました。万博の他にも、日本の地方にも興味を持つ方も増えており、シンガポールから日本への訪日外国人客もさらに増えてくることが予測できます。
シンガポールを観光で訪れる外国人も多くいます。その中で政府は観光以外でもMICE(会議、視察、国際会議、展示会・見本市)ビジネスをさらに盛り上げようと、国内経済の活性化につなげる方針を示しています。

MICEのうち、「M(Meeting)」は、企業や政府機関などが開催する会議やセミナーで、最近では「〇〇研究会」「〇〇相談会」といったイベントや、地方自治体と民間企業による「官民協働研修」などが活発化しています。世界競争力ランキングで上位の常連であるシンガポールで、グローバルな視点から会議を行うことは一種の風潮になっています。東南アジア各国の拠点長が集まる会議の場として利用する時も多くあります。
「I(Incentive)」はインセンティブ(報奨)旅行です。来年には、グローバル展開している日本のマーケティング会社がインセンティブ旅行として、日本各地から計2,000人を分散的にシンガポールに入国させるとのことで、弊社が手配を担当しています。受注した手配には空港での案内係、バスへの誘導係、ホテル到着時の案内係の人員などが含まれています。約2,000人がシンガポールを訪れることで宿泊、飲食、交通などかなりの「お金」が動きます。
「C(Convention/Conference)」は大規模な会議で、シンガポールの地の利(中立・安全)を活かし、世界各国・地域の国防関係者の長が集まるような安全保障会議も行われています。要人が動くため、ここでも大きな「お金」が動きます。
最後に「E(Exhibition/Event)」は、NATASの旅行フェアのような大規模な展示会です。各パビリオンの施工、パンフレットの作成などに携わる人も新型コロナウイルス禍では収入が激減しましたが、ようやく需要が伸びてきました。
しかし、日本から訪れる出展者は関連コストを「円」で計算しているところもあります。昨今の円安シンガポールドル高の影響で予算をかなり抑えているケースも見受けられ、その中で最大限の宣伝効果を出すよう努力をしています。
シンガポール側では天然資源がない分、観光以外でもMICEビジネスを広げることにより雇用を創出することも可能ですし、国内経済の活性化に結び付けていくことができます。コロナ禍のような外的要因がない限り、今後伸びていくことが予測されます。