第2回 日系企業で働きたくない理由
現在、日本に観光に行くシンガポール人は増加傾向にありますが、最近は日系企業で働きたいと思うシンガポール人が減ってきている感じがします。人手不足なのはどこの先進国も同じですが、逆に買い手市場(企業が人を選ぶ)から売り手市場(人が企業を選ぶ)になりつつある状況において、求職者はより良い待遇、将来性を見込んで仕事を選ぶ傾向が続いています。
弊社の顧客はほとんど日系企業で、常に求人の依頼を頂いております。ジョブポータル(求人サイト)に募集を出しておりますが、応募する実数が少ないことと、書類選考後、こちらからアプローチしても面接にも来ないケースが増えています。

その理由の一つとして「募集給与の低さ」です。とある日系企業は、求人マネージャー職で2500ドルから4000ドルの範囲で募集をしましたが、上限も下限もマネージャー職のポジションに見合った給与額でないことと、仕事の職務分掌、いわゆるジョブ・ディスクリプションがマルチタスクになっており、求職者サイドから見てみれば「安月給でこき使われる」印象があり、実際に応募してきた方は、マネージャー職でない方と職務案件に見合っていな応募者が目立っていました。
その中でもマッチ度の高い候補者を当該企業に紹介をしましたが、「年齢が担当者より上」という理由で面接すら行きませんでした。その年齢も3歳上の43歳でした。これも日系企業独特の「年功序列」の企業文化からくるものです。「年功序列」も日本経済が右肩上がりの時は長く働ければ働くほど給与が能力に関わらず上がっていく、いわば「理想のモデル」でした。その「理想のモデル」も少子高齢化社会では企業にとって重荷になっており、普通解雇のできない日本では早期退職制度を設け、40代から50代の年功者を退職させ、組織の活性化を促していますが、なかなか新陳代謝が進んでいないのが現状です。その一方で、シンガポールでは普通解雇権は契約書上の通告期間に基づき「契約解除」をすることができます。

また日系企業の良くないイメージの一つとして、性差別があります。以前シンガポール国立大学の日本語を学んでいる生徒に日系企業に就職したいかをアンケートをしたところ、NOという回答が半数近く占めていました。その理由の一つに、主に女生徒からの意見だったと思いますが、日系企業には性差別が存在し、能力のある女性でも男性の上に行けない企業文化があるとありました。残念ながらその傾向は現在でもあり、世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」の2024年の順位は146か国中118位と悪化の一途をたどっています。
もちろん日系企業に魅力を感じ働いている人も実際にいますが、男性第一主義やシニアリティが優先される企業文化が続いていると求人を出しても、日系企業を敬遠する人が増加することが予測されます。