「HCiキャリア適性」開発の背景
2025年1月、私たちは新たな適性検査「HCiキャリア適性」をリリースしました。本稿では、その開発に至るまでの背景、改良点、そしてこの検査に込めた想いついてお伝えしたいと思います。
40年の歩み
当社が適性検査の提供を始めてから、今年で40年を迎えます。1985年、まだ適性検査が一般的でなかった時代に登場したのが、わずか30問・10分で人材の本質を見抜く「適性検査 HCi-AS」でした。当時すでに適性検査はありましたが、500問を60分かけて回答する性格テストのような、大企業でなければ現実的に導入は難しいものでした。そこで、「大企業はもちろん、人事にまで十分に手が回らない中小企業にも使ってもらえる、優れた採用支援ツールが必要だ」という信念から生まれたのが、採用支援のための「適性検査 HCi-AS」です。
その後、採用後の人材の配置や昇進・異動の際に活用されるべく開発されたのが「管理職適性HCi-OPCS」です。多くの企業で管理職候補者の可能性や成長性を客観的に把握するためのツールとして活用されてきました。
もちろんこの40年の間、当社の適性検査は、常に時代にニーズに応えるためのアップデートを続けてきました。
キーワード分析
そして今回、より現代的なニーズに応える検査へと進化させるべく、今回の大幅な改良に取り組みました。それが「管理職適性HCi-OPCS」から「HCiキャリア適性」への変更です。私たちが提供する適性検査の特徴として、その人を表す「キーワード」があります。受検者を理解するためには、数値化された適性や能力の大小を把握するだけでは不十分と考え、その人をよりイメージしやすい「キーワード」が報告書には散りばめられています。長年の運用で蓄積された膨大な受検データをもとに、そのキーワードを再分析し、表現の精度と信頼性を高めました。
「適性検査 HCi-AS」との違い
皆さまの中には、「適性検査 HCi-AS」との違いが気になる方もいらっしゃると思います。「適性検査 HCi-AS」は、採用時の面接前に受検していただくことで、その人の持つ本質的な性格や行動傾向を把握するためのツールです。
一方、「HCiキャリア適性」は、すでに採用された社員を対象とし、その特性がビジネスの現場でどのように現れるかをより具体的に捉えるものです。報告書には、人間関係上のクセや、どのような方面で力を発揮しやすいか、逆に注意が必要な行動傾向は何か、等について実務に即したアドバイスを記載しています。
社会の変化
適性検査が誕生した当時は、「同じ会社で長く勤める」ことが一般的であった時代です。いわゆる終身雇用制度が前提となっており、長い目で社員を育成し、組織内で登用していくことが想定されていました。しかし、現在は状況が大きく変わっています。この40年の間に、働き方や価値観には大きな変化が訪れました。女性の社会進出が進み、転職は当たり前になり、定年は延長され、定年後も働きたいという希望を持つ人が増えました。さらに、コロナ禍を経て、在宅勤務や遠隔地勤務といった、場所にしばられない働き方も広がりました。
こうした変化は、個人のキャリア志向にも大きな影響を与えています。「一つの会社で出世を目指す」から「自分の専門性を磨いてどこでも通用する力を身につける」へと、価値観が移り変わっているのです。中には、管理職になることに魅力を感じない人も少なくありません。「責任が重い」、「自由度の低さ」「専門性を活かしにくい」といったイメージが、その背景にはあるようです。
しかし、企業にとって「管理職がいない組織」は成立しません。むしろ、企業の競争力を支えるのは、有能な管理職の存在です。ここでいう有能さとは、単なる知識やスキルではなく、組織全体を見渡す想像力や、異なる価値観を受け入れる柔軟性、長期的視点で判断できる経営者的思考といった、極めて人間的な力を指します。
「管理職適性HCi-OPCS」から「HCiキャリア適性」へ
こうした社会の変化を受け、私たちは「管理職適性HCi-OPCS」の名称と内容を見直し、「HCiキャリア適性」へと刷新しました。
もはや「管理職」という役職にこだわる時代ではありません。重要なのは、その人が将来どのような役割を担えるのか、どう成長できるのか、そしてどのような支援が必要なのかを見極めることです。専門職やスタッフ職に適性を持ち、そうしたキャリアを望む人もいます。それぞれが自身の強みを発揮し、成長しながら協力することで、組織として最良のパフォーマンスが生まれます。
適材適所の考えはそのままに、より幅広いキャリアへの支援を目的としている「HCiキャリア適性」。この検査は、管理職に必要な資質だけでなく、受検者のキャリア志向や心理的傾向も含めて多面的に分析します。昇進・配置転換に加え、面談やメンタルヘルスケアにも幅広く活用できます。もちろん、管理職以外の専門職、営業職、スタッフ職等に適性がある人についても、どのような環境やサポートが成長に繋がるかを明示しています。
「HCiキャリア適性」ができること
「HCiキャリア適性」の最大の特長は、2種類の報告書が作成される点です。
人事担当者・上司向けの報告書:
適性の全体像や注意点が詳細に記載されています
受検者本人向けの報告書 :
本人が直接読むことを想定し、メンタルの状態や受け入れやすい表現に配慮した構成となっています
これにより、人事担当者及び上司の方が内容をかみ砕いて伝える負担を減らすだけでなく、受検者が自らの特性を客観的に、素直に受け止めることができ、今後のキャリアに活かすことが可能になります。
さらにこの検査では、対人関係のズレやトラブルの予兆を早期にキャッチすることもできます。特に最近では、世代間の価値観の違いや、部下とのコミュニケーションの難しさが、上司のストレス要因になっているという声も多く聞かれます。こうした悩みに対しても、具体的な対応策や心構えを提示できるのが、「HCiキャリア適性」の強みなのです。
最後に、現在の心理学では、「性格は成長する」とされています。この検査は一度の受検でももちろん有用ですが、定期的に受検することで、成長の過程や今後の方向性をより的確に捉えることができます。
「HCiキャリア適性」について 詳しくはこちらから2025年6月2日
文責:取締役 梶山彩子