採用するべき人の性格はこれだ!

「適性検査(HCi-AS) 」と最近読んだ心理学の本から
株式会社ヒューマンキャピタル研究所
代表取締役 梶山 桂


皆さんに質問です。
あなたは、ある企業の人事部に所属し、今年の採用担当を任されたと仮定しましょう。今年は個人営業に力を入れるので、個人宅の飛び込み営業で好成績を上げられそうな人材を採用せよ、と上司から命じられたとします。あなたはどういう人を採用しようと思いますか?またどのように候補者を判断するつもりですか?

当社の「適性検査(HCi-AS)」は、わかりやすいアドバイスをあなたに提供することができます。性格の詳細がわかるので、職種にとって長所となる性格を持つ候補者を採用することができるのです。

 一体どういうことなのか、これから説明していきましょう。

会社で採るべき人とは?

2020年3月23日付の日本経済新聞に、日本電産の創業者会長で永守学園の理事長でもある永守重信さんの「日本の教育 風穴を開ける」と題したインタビユー記事が載っていました。
そこには永守学園が経営する京都先端科学大学(旧京都学園大学)が世界大学ランキングで、2025年に関関同立(関西大学、関西学院大学,同志社大学、立命館大学)を抜き、2030年には京都大学を抜くことを宣言するとともに、人間の評価にはIQとEQ(感情指数)があるが、会社が採るべきはEQの高い人(やる気のある人)だと話されています。

HCi-ASの思想と会社で採るべき人材の見極め

我が意を得たり、と読ませていただきました。当社の「適性検査(HCi-AS)」も全く同じ基準で人材を診断しているからです。

当社の「適性検査(HCi-AS)」は発売を開始して33年になります。海外でも20年の販売キャリアがあります。
一人一人をじっくりと観察し、質問し、個人としてどのようなビジネス行動をするかを予測し、経験値をフィードバックし、データベース化したものです。帰納法的に作り上げました。発売後も、異常値を見つけてはフィードバックを続けています。あくまでも実証データありきで開発してきました。
「適性検査(HCi-AS)」では、企業が個人を採用するとき、「目標追求力」が何よりも重要な基準であるとしています。「目標追求力」というのは、「目標達成力」を中心として、バイタリティ、実践力と言った行動パワーをプラスしたものと考えています。

33年の実績から、多くのことがわかってきました。

開発当初は、性格は一生変わらないという説が主流でしたが、最近の心理学でも、当社の33年間の観察データからも性格は変化することが分かっています。年齢とともに、性格は成長していくのです。ですので、採用時だけでなく、3~5年ごとに適性検査を受け、性格の成長を確かめながら、ゴール(理想の性格)を目指していくのが各個人のキャリアの中で大切なプロセスになるでしょう。当社の「自己開発支援(HCi-CFM)」がそれにあたります。

採るべきポジション・職業毎に異なる人の長所と短所

例えば、管理職、営業職では外向性は長所になるが、研究職には弊害になることも多いです。協調性は日本のビジネス社会では長所ですが、中国(除く日系会社)のビジネス社会の管理職では逆に短所になることがあります。
これら以外にも、思いもつかない事実に出会ったりもします。
個人宅への飛び込み営業では「計画性のない人」が好成績を挙げています。建物や道路の安全チェックの仕事では「ビジネス視野の狭い人」が高い評価を得ていることも分かっています。外食チェーンの成功している店長に「わがままな人」が多いという事実もありました。
興味深いですね。

一方で、精神的安定性に問題のある人の出現割合が急激に増えています。33年前は、当社の「適性検査(HCi-AS)」を受検した者のうちわずか7.5%の出現率であったものが、近年では20%近くまで増加しています。日本人が精神的に弱くなったのでしょうか?あるいは仕事が難しくなったのでしょうか?

採用にもつながる心理学のおすすめ本

私が最近読んだ心理学関係の本の中で、次の5冊が印象に残っています。
「性格スキル」 鶴光太郎著 祥伝社 2018年
「性格がいい人、悪い人の科学」 小塩真司著 新曜社 2018年
「GRIT やり抜く力」 アンジェラ ダックワース著 神崎朗子訳 2016年
「性格を科学する心理学の話」 小塩真司著 日本経済新聞出版社 2011年
「パーソナリティ心理学」 小塩真司著 ミネルヴァ書房 2010年

これらを読んで得た知識ですが、性格研究の歴史を振り返ると、古くはギリシャ時代にまで遡り、ヒポクラテス、ガレノスの「四体液説」、「四気質説」があります。多血質、粘液質と言う言葉を聞いたことはありますか?この説から出てきた言葉です。

体液 気質 季節 元素 特徴
血液 多血質 空気 快活,明朗、社交的など
黄胆汁 胆汁質 せっかち、短期、積極的など
黒胆汁 黒胆汁(憂うつ質) 用心深い、心配性、不安定など
粘液 粘液質 冷静、堅実、勤勉など

この説は、実に2000年以上信じられてきました。※1

また、20世紀に入ってからは「体格説」、「血液型説」等性格を分類する研究が行われてきました。20世紀前半までは人間の性格を考えるとき、体格、血液型等を基準にして、そのタイプはこういう性格であると分類していました。
 「体格説」については、次の表のように分類された研究があります。※2

体格 対応する病理 気質名称 気質の特徴 備考
細長型 統合失調症 分裂気質
  1. 非社交的、静か、内気、真面目
  2. 臆病,恥ずかしがり、気の小さい、神経質、自然と書物が好き
  3. 従順、善良、正直、鈍感、愚直
過敏と鈍感の2極を採る。
最初は細長型と闘士型とともに分裂気質に対応していた。
肥満型 躁うつ病 循環気質
  1. 社交的、善良、親切、温厚
  2. 明朗、ユーモア、活発、熱烈
  3. 冷静、安静、うつになりやすい、気が弱い
快活と悲哀の2種をとる。
闘士型 てんかん 粘着気質 執着する、変化動揺が少ない、几帳面、秩序を好む、融通が利かない。 あとで追加された気質

上記の表のように体格で性格を決めた場合、真面目で、温かみのある人の体格は何型に分類されるのでしょうか?

次の表は各血液型の長所を表にしたものです(必ずしも当たっているわけではありません)。※3

A型 O型 B型 AB型
要領をつかむ
骨身を惜しまない
可愛げがある
ビジネスで有能
しっかりしている
野心がない
曲がった事が嫌い
夢がある
理解力がある
涙もろい
高ぶらない
飾り気がない
アイディアに富む
ユーモアに富む
判断に幅がある
庶民的
面倒見がいい
実行力がある
競争心が強い
夢や理想がある
交際を大切にする
油断しない
信念が強い
教育熱心
聞き上手
人にだまされない
プライドが高い
注意深い
筋が通っている
折り目正しい
思いやりがある
常識がある

上記の表のように血液型で性格を決めた場合、曲がったことが嫌いで、面倒見がよく、思いやりのある人は何型になるのでしょうか?

結果として、両説とも説明できない事柄が多く、今ではこれらの説の研究はあまりされていません。

その後誕生した現代の心理学では、性格をほぼ「5つの特性」に分解しています。人間一人ひとりが5つの特性を備え、その一つひとつの特性に高低が有り、その組み合わせが性格を形成すると考えられています。

性格を形成する「5つの特性」とは、
「真面目さ(誠実さ、勤勉さ)」
「精神的安定性」
「協調性」
「外向性」
「開放性」
を指し、ビッグファイブといわれています。

定義 定義 側面
開放性 新たな美的、文化的、知的な経験に開放的な傾向 好奇心、想像力、審美眼
真面目さ 計画性、責任感、勤勉性の傾向 自己規律、粘り強さ、熟慮
外向性 自分の関心や精力が、外の人や物に向けられる傾向 積極的、社交性、明るさ
協調性 利己的ではなく、強調的に行動できる傾向 思いやり、やさしさ
精神的安定性 感情的反応の予測性と整合性の傾向 不安、いらいら、衝動が少ない
出所)Heckman and Kautz(2013) ※4

ここで言う「真面目さ」の意味は、世間で言う”真面目な人”とはチョット違います。世間の”真面目な人”は”融通がきかない”との揶揄が含まれている時もあります。しかし、ここでいう「真面目さ」にそのようなニュアンスは一切ありません。

鶴光太郎氏は、「真面目さ」とは「野心を持ち目標に向かって自分を律しながら、どんな困難があっても粘り強く責任感を持って努力していく資質」としています。
そしてビッグファイブの中で、この「真面目さ」は職業人生(サラリーマン人生)で成功するためにもっとも貢献する性格特性であるということが、多くの研究で明らかになっております。これらは私の50年に渡る職業人生でも感じるところです。

どういうことかと言いますと、私の周りには多くの起業家がいます。起業後30年以上も勝ち残った成功者たち(1000人に3人くらいの割合、まさにセンミツ)を観察すると、例外なく彼らは真面目で精神的安定性が高いといえます。サラリーマンとして職業人生に成功した人たちと全く同じです。
そして、起業家の起業家たる所以は、サラリーマンの成功者と比べ、「真面目さ」の中のGRIT(やり抜く力)と、自分を律する力、特に満足遅延の能力(将来より多くの果実を得るために今は我慢する能力)、そして自尊心の高さ(辟易することもある)であると、個人的に確信しています。

逆に、30年を待たず倒産した人たちをみてみると(その多くは5,6年以内に倒産しておりますが)、事業内容を頻繁に変えていたり、遊びすぎて、事業に誠実に向き合ってなかったり、自分の利益ファーストであったりで、真面目さに欠ける例が多く思い出されます。真面目さやGRITの前提となる目的の設定の間違いがあった人たちもいます。また精神的安定性も欠いていた人も少なからずいました。

採るべき「真面目な人」「やる気のある人」を見極めるHCi-AS

永守さんも、最近の心理学の本も、当社の「適性検査(HCi-AS)」も、職業人生における勝利者は、「真面目な人」、「やる気のある人」であると結論づけています。
永守さんは 「やる気」、心理学関連の本は 「真面目さ(勤勉さ、誠実さ)」、GRIT (やり抜く力)、当社の「適性検査(HCi-AS)」では 「目標追求力」と異なる言葉を使ってはいますが、ほぼ同じ事を意味しています。
ビッグファイブ説が世に出るよりずっと前に開発された「適性検査(HCi-AS)」が、名経営者の永守さんや現代の心理学と同じ結論になるのは納得できますし、大いなる感動も覚えます。

では、実際に真面目な人をどのように採用したら良いのでしょうか?

私はある時期IT会社の経営者でした。毎年20~30人を採用するために、300~500人を面接していました。残念ながら、その会社では超有名大学の卒業生はそう簡単には採用できませんでした。大学名で判断せず、企業に貢献してくれる人を採用するにはどうしたらよいのか? これをいつも考えていました。
その解の一つとして、旧制県立一中だった高校を中心に、いわゆる各地元の名門高校出身者に注目しました。彼らの多くは地頭が良いだけでなく、家庭的にも問題はなく、真面目で自尊心も高く、結果としてやり抜く力がありました。面接時にさりげなく雑談風に、“高校時代、遅刻したことはありますか?”と聞いたこともありました。もちろん、真面目さをチェックするためです。

追記)このコラムを書いていて、思い出したことがあります。
「適性検査(HCi-AS)」が完成した直後(バブル真っ最中でした)、営業マンがうなだれて帰社してきました。準大手の証券会社の会社に売込みをかけたが、人事部の担当者から“当社は血液型で判定している。営業マン採用はB型に限る。”との理由で断られた、と。今では到底考えられないことですよね。

なお、活用場面、実施対象、活用の目的、測定領域など、詳細は次をクリックしてください。
「適性検査(HCi-AS)紹介ページ」はこちらへ
「適性検査(HCi-AS)特集ページ」も合せてご覧ください

※1、※2、※3 :「パーソナリティ心理学」小塩真司著 ミネルヴァ書房 2010年
※4 :「性格スキル」 鶴光太郎著 祥伝社 2018年