「HCi-AS」内容解説と昨年統計発表
本年第一回のお客様向け勉強会を、さる2月20日に開催いたしました。
講師をお招きする通常の会と違い、「HCi-AS」をより理解して頂くために弊社取締役の甲野文彦より、
内容解説と昨年のデータからの傾向をお話させて頂きました。
更にお客様より2社の事例発表がありました。
以下当日の報告をいたします。
株式会社ヒューマンキャピタル研究所 取締役 甲野文彦
■ 解 説
1.はじめに
当社で年4回開催します、HCi適性検査のお客様向け勉強会は、人事関連のテーマに沿った講師をお招きして、その講師より講演会形式でおこなっています。参加の皆様から、「講演も良いが利用しているHCi-AS検査(以下AS)の内容を、もっと詳しく知りたい、そんな機会が欲しい」と多くの声を頂きました。そこで、今年の第1回は「HCi-AS検査内容勉強会」として開催させて頂きました。当社の一方的解説だけでなく、本日は長くASをご利用頂いていますお客様からも、活用の方法として事例発表をお願いしました。より具体的にご理解頂けることと思います。
① 開発目的
もうこれは言うまでもなく、「面接支援」です。皆様の採用場面で一番大切な面接の捕捉ツールとして開発しました。応募者の一人一人の個性が、ASで捕捉する事によってより分かり易くなってくれることを期待します。なお、最終的には採否の意思決定の支援が目的です。
逆にASは組織診断や階層別の傾向分析にはなじみません。万能ではないことをご理解下さい。
②妥当性は80%
大きな期待を頂いているお客様から、時折診断結果と対象者の印象が「合わない」という意見を寄せられます。今回の勉強会のアンケートにもお願いしていますが、検査の妥当性(的中率)はまったく外れない100%では決してありません。今までのアンケートや、利用後のヒアリングから言えるお客様の生の評価は、辛い採点で60%(10名で6名が的確)、高評価は95%を頂いています。平均は概ね80%です。この80%という数字は、利用する際に意識して頂きたいのです。
2.結論の解説
ASで診断報告書の一番最初に表記されるのが1.結論です。これも説明会で毎回解説していますので今回は詳細は省きますが、図1と図2に示しましたように、仕事ができる、要するに業務能力として必要とされる3つ
のコンピテンシー(能力)を、弊社では「目標追求力」「組織構成力」「主体性」と規定しています。お願いしたいのは、この3つの要件と皆様の会社の採用基準が、同じなのか、はたまた全く違うのか、をまずは確認して頂くことです。
2点目は、結論の「1.是非採用したい」から「5.再面接の上検討する(+)(-)」は、採用評価の順番ではありません。5.再面接の上検討するは、出現率も60%強あり、最下段にありますが、個性的にバラエティー
に富んでいて、なかなかの逸材もこの中に存在します。
3.メンタルヘルス
ASの診断報告書の12番目が、メンタルヘルスの欄です。毎回解説していますように「特記なし」でなく、文章記述があるケースがメンタルヘルス不全等になる可能性を示唆しています。ASの基礎データでは、その
可能性(文章が記述されるケース)を7%(1985年開発当初)としましたが、図3に示すように昨年はまた0.5上がり平均で17.4となっています。お客様から、「最近入社後、ちょっとしたことで直ぐ傷つく社員が増え
た。どんな甘やかされた家庭に育ったんだ」などの声を聞きます。心療内科に通うケースも当然増えています。厳しいかもしれませんが、利用される企業からは、ASのメンタルヘルスの文章がでたら、「採用見合わ
せる」の声が多いのが実状です。
4.昨年の傾向から
今年の新卒採用ももう直ぐ始まります(開催は2月20日でした)ので、昨年の傾向をご参考までに発表させて頂きます。冒頭申し上げましたように、ASは傾向分析にはなじみません。ただ、その中から多少の変化なり見えてくるものもありますので解説致します。
①結論
まずは、各結論の当社の標準出現率(基礎となる出現率)は下記となります。
1. 是非採用したい(6%) 2. 採用して良い(16%) 3. 適職があれば採用(8%)4. なるべく避けたい(9%)5. 再面接の上検討+(25%) 5. 再面接の上検討-(36%)
開発時より、この標準出現率の極端な変化が起るとは考えられません。利用するお客様の応募の層によって変化することは、想定されます。昨年より当社では、業界毎の統計を始めました。その中で、図4にありますように、医療業界の結果が少し昨年の平均より悪くなっています。今後、医療業界だけでなく、他業界も含め様々な情報を入手して調査していきます。
②メンタルヘルス
前項で解説しましたように、メンタルヘルスの基礎出現率は7%から、2012年平均17.4%に変化しています。図5を参照してもらうとはっきりするのが、2011年より2012年が全体的な悪化が見られます。性別でいくと、男子が18.0%→18.9%・女子が14.0%→15.2%です。男子が20%に迫っているのが気になります。企業の「最近の男子学生は、ひ弱で大人しすぎる」という声を物語る数字ではないでしょうか。
図6で、中途が 18.7と新卒より2.6悪化しているのは、中途の受検層がどうしても転職常連組を含んでいることが原因のひとつと考えられます。今年度が、このまま上昇傾向が続くのかどうか、注意深く見守っていきます。
5.まとめ
最後にまとめとして少々お話させていただきます。妥当性が約80%という話をしました。この数字の意味するものは、逆に言うと20%の不一致(印象と違う・入社したら違った)が発生する、ということです。
それなら、「面接の役に立たない」という意見も頂く場合がありますが、これは人間の心を見極めることの難しさを物語ります。ASは白旗をあげるつもりはありませんが、不一致の場合はより慎重に面接を再度して頂いたり、シチュエーションを変える、例えば、一緒に食事会をしてみるとか、工夫して頂くようお願いします。
その上に、ASを採用面接時にやりっぱなしでなく、入社後も保存して、逐次働き具合と照合をお願い致します。
いずれにしろ、人間の心(行動傾向・仕事の仕方)は本当に不確定で予測しにくいものです。せっかく入社してくれた社員です。ほったらかしにせず、自分の子供のように、ずっと気にかけ・声かけ、長いフォローをお願いします。ASの妥当性の検証にもなるはずです。
本日は、ASを通して「人財」というテーマで解説させて頂きました。勉強会だけでなくお使い頂く日々何か不明点・疑問点等、何なりと当研究所までご連絡してください。
末永いご活用よろしくお願い致します。ご静聴ありがとうございました。
最後に、本日事例発表頂きました、株式会社TCJの紅林専務ならびに株式会社アングローバルの竹内マネージャー、貴重な事例発表ありがとうございました。
インサイト No.34
2013年5月22日