マネジメントとは
組織の成長を促す原動力はマネジメントです。
マネジメントとは、辞書をひもとくと「経営」や「管理」を意味します。
マネジメントの対象となる組織は、発展途上のベンチャー企業もあれば安定経営指向の成熟企業、また部門では新規事業開発 もあれば総務・人事などのバックヤードを担う部門など、千差万別です。
これらの組織に求められる課題・目標は大きく異なることは容易に想像できます。
組織を成長させるマネジメント能力も、また大きく異なるのです。
前者はリーダー的管理職を、後者はマネージャー的管理職が求められます。
ここでは、リーダーとマネージャーの違いを論じた上で、圧倒的にニーズの高いマネージャーについて解説します。
以降、「管理職=マネージャー」と読み替えてください。
そもそもマネジメントとは?本来の意味って?リーダーとマネージャーとの違いは?
そもそもマネジメントとは?本来の意味って?
「マネジメント」とは、企業が保有する「ヒト」・「モノ」・「カネ」のリソースを効率よく活用し、組織としての目標達成
に向けて運営することです。
リーダーもマネージャーも、ある組織集団を率いる立場であることに変わりはありませんが、違いもあります。
違いを考える時、どのような組織がリーダーを求め、どのような組織がマネージャーを求めるかを考えると分かり易いと思い
ます。
ベンチャー企業の商品開発責任者や大企業の新規事業開発責任者は、間違いなく強いリーダーを求めます。革新的変化に強い
リーダーが必要となるからです。
一方、バックヤードを支える総務・人事などの管理部門や大企業の製造部門責任者は、リーダー的人材よりマネージャー的人
材を求めます。生産性の向上や業務改善には組織の規律や調和をコントロールできる人材が向いているからに他なりません。
リーダーとマネージャーとの違いは?
新製品の開発などを実現するリーダーはただ指示をするだけではなく、リーダー自身が率先して行動しなくてはなりません。
規定のルールや、ましてや成功体験などないのです。
では、リーダーに求められる能力と役割とは何でしょうか?
(1) 組織としての方向性や構想(ビジョン)を示す
(2) 掲げた構想を全員が共感し同じ方向を目指すよう一体化を図る
(3) 目標に向かって、既成概念にとらわれることなく革新的な行動力を発揮し牽引する
(4) 勇気とパワーで失敗や困難に立ち向かう
マネージャーに求められる能力と役割とは何でしょうか?
(1) 組織の規律や秩序を守り組織に課せられた業務遂行に導く
(2) 部下のスキルや資質を把握し業務分担を割り振る
(3) 部下のモチベーションを上げると同時に管理する
(4) 根気よく部下を指導し育成する
リーダーとマネージャーの違いをまとめると、次のようになります。
(1) リーダーは将来の構想(ビジョン)を描くが、マネージャーは目標(ゴール)を示す
(2) リーダーは革新的変化をもたらすが、マネージャーは現状の改善に努める
(3) リーダーは長期的視点を持つが、マネージャーは短期的な視点となる
(4) リーダーはリスクを恐れずいとわないが、マネージャーはリスクを制御する
(5) リーダーは自らの背中を見せることで道筋を示し、マネージャーは達成方法を指南し部下の成長を見守る
リーダーとマネージャーの違い、ご理解いただけたでしょうか?
経済界の重鎮であった土光敏夫氏はリーダーの心構えとして、次のような言葉を残しています。
『やるべきことが決まったならば執念をもってとことんまで押しつめよ。問題は能力の限界ではなく、執念の欠如である。』
リーダーとしての志の高さとマインドの強さを求めているのだと思います。
一方、人との関わりが多いマネージャーに欠かせないのは「論理的思考とコミュニケーション能力」が必要不可欠となります。
マネージャー等の管理職がぶつかる壁
「名選手は必ずしも名監督にあらず」と、よく言われます。
仕事ができる有能な社員は、必ずしも優秀な管理職になれるとは限らないのです。
組織の長としての管理職になると、任命された日から役割が一変するのです。
(1) 目標達成の責任が重くなる
(2) 実務と管理で業務量が増える
(3) 上司と部下の板挟みになる
(4) ストレスが増える
管理職になると、担当する組織に対して課題設定や目標を明確に打ち出す必要があります。
しかし、これまで培ってきた業務を遂行する能力と、管理職で求められる能力は異なります。いざ管理職になっても自分なりの課題設定や目標が出せなかったり、組織全体を納得させる方針が打ち出せなかったりします。
最初に直面する課題です。
昇格前では、自分の成果や成長によって評価されますが、昇格した時点で自分の業務を遂行するだけでなく、組織としての期待度や、上下左右の人間関係、マネジメントスキルなどで評価されます。
実務とのバランスが難しく、壁にぶつかり悩むことになります。
仕事ができた有能な社員ほど、管理職に任命された時、ジレンマに陥り易いのです。
「一番仕事を分かっている私が、ノウハウを教えてやってるのに、なんで教えた通りできないんだ」
管理職の役割は、「部下が仕事をし易い環境を作り、部下のレベルに合った指導を行い成果を上げる」ことです。
優秀なプレイヤーであった人ほど、部下や周囲を動かすのに苦労するものです。
自社のマネジメント人材を強化するには?
「名選手、必ずしも名監督にあらず」というミスマッチ
前述した通り、マネジャーは組織の業績と部下の育成に責任を負い、マネジャー自身がいくら実績をあげたとしても「マネジャーとして」の評価にはなりません。部下が成果をあげて、始めて評価されるのです。
しかし、「部下に成果をあげさせるマネジャー」は、そんなに多くはいないのです。
経営者の多くは、「管理職に不足している能力」として、「部下や後継者の指導・育成力や組織の統率力不足」を挙げています。
背景として、多くのマネジャーは「プレイヤーとして」優秀だった社員がマネジャーに昇進したからです。
業績に貢献している社員なので、当然です。
そこで、「名選手、必ずしも名監督あらず」というミスマッチが発生してしまいます。
必要な能力とは?
マネージャーは、プレイヤーではなく監督なのです。
中でも、部下をその気にさせてスキルが身につくように指導することが最大のミッションです。
部下が育ち、パフォーマンスを発揮すれば組織の目標もおのずから達成できるのです。
では、部下を育てるには必要な能力とは何でしょうか?
(1) 組織としての課題・目標を部下が正しく理解できる言葉で伝える(コミニュケーション力)
(2) 部下の性格・スキル・マインドを知る(相手を正しく理解する観察力)
(3) 部下からのフィードバックを受取り改善に活かす(人の言葉に耳を傾ける受容力)
成長の心得とは?
「上司の背中を見てマネージャーとしての能力を身につけろ」と言っても限界があります。
自社で教育制度がある企業はほんの少しです。外部の講習会に参加するのも一法です。
ここでは、部下からのフィードバックを通して、自ら成長するための心得を述べます。
日々、自問自答することで成長できると思います。
(1) 部下に、組織としての目標を分かり易く伝えていますか?
(2) 周りから得た情報を、部下と共有していますか?
(3) 部下を指導するためのスキルは十分ですか?
(4) 部下が理解し役に立つアドバイスをしてますか?
(5) 必要以上に干渉していませんか?(自分で考えない部下になります)
(6) 悩んでいる部下はいませんか?(メンタルヘルスの把握は極めて重要です)
(7) 部下に敬意を払い、思い遣りをもって接していますか?
これらの事項を意識することで、マネジメントスキルの向上に間違いなく繋がります。
また、必要に応じて、部下に直接ヒアリングすることをお勧めします。
マネジメント人材を育成する前にまずメンバーのマネジメント適性を見極めよう
評価される人材の性格特徴とは?
管理職として評価された人の性格特徴の研究結果として、次のような特徴が挙がられています。
(1) 情緒的な適応性:「強靭性」
(2) リーダーシップの素となる主体性:「支配性」「統率力」
(3) 分析的合理性:「決断性」
(4) 対人適応性:「社交性」「外向的」
また、課題処理特徴としては、「変革」「大胆」が挙げられます。
これを全体を通して言うと、「社交的で臆せず意見を主張し、革新的で思いきった決断ができ、壁にぶつかってもめげない人
」となります。
これはリーダー的要素が強く、特徴がとんがっている必要があります。一方、マネージャーとしては、この特徴がマイルドに出てくるのです。
いずれにしても、管理職として成功するための特徴であることには違いありません。
これは、あくまでも標準的な管理職として求められる特徴であります。
個々の組織により、求められる特徴の度合いが異なります。
マネイジメント適性を見極める最もシンプルな方法は、チームの親睦会の幹事を任せてみることです。できれば、一泊の小旅行。
「何事も段取り八分」、想像力と気配りが試されます。
朝の集合から始まり翌日の解散まで、全てをイメージし必要な手配を施し、当日はメンバーを引率し楽しませる。
遊びも仕事も、その人の思考回路は同じで、向き不向きはかなり正確に分かります。
マネジメント・管理職人材の見極めはヒューマンキャピタル研究所の「HCi-OPCS」で
開発目的と活用場面
「管理職適性(HCi-OPCS)」は、中堅社員の管理職適性や最適配置を明確に診断する目的で開発されました。
業績達成力とリーダーシップを中心に全10項目で診断します。
マネジメントに必要な要件(リーダーシップ・目標追求力・主体性)を基に診断します。人事考課等と併せ、昇進・昇格の補足
資料として利用できるものです。
社員を適材適所に配属し、本人の資質・スキルに合ったキャリアプランを立てることは双方にとってとても重要です。
管理職選抜も含めて、キャリヤプランに資する次のような補足データが得られます。
(1) 管理・マネジメントが出来る人材か
(2) 新規店舗、新規開発を任せられる人の選抜
(3) 担当として成果を上げた人材を昇進させてもよいものかの判断
(4) 人事考課の補足情報
(5) 成果に結びつく人材の組み合わせ
(6) メンタルヘルスが分かる
(7) 本人の適性だけでなく多面評価
(8) ゼネラリストかスペシャリストか
役に立つには訳があります。
(1) 結論表示により、5段階13パターン分析で詳細な診断をします
(2) 拡散的、追求的等の組み合わせでタイプが読み取れます
(3) 担当と管理職では求められる素養は異なりそこを判定します
(4) 検査時間10分・診断結果提出30分 無駄を省いたシンプルな設計です
(5) 補足人材のチェックポイントを文章で提示します
(6) 回答を偽れない仕組み 診断報告は記述文中心の構成です
(7) 本人受検だけでなく他者観察にも対応できます
(8) 補完人材、専門研究人材などは勿論、リーダーシップの見取り図を表記します
管理職適性(HCi-OPCS)の特長
管理職適性(HCi-OPCS)の特長は、以下です。
1.管理職向きか否か明確に診断
管理職向きか否かを5段階で総合判断します。
2.問題の発生を予知
診断報告書では組織内で問題が発生しそうなケースをメンタルヘルスを含めて予測します。
事前に知る事で対策やケアが可能となります。
3.個性に合ったキャリアコースを表示
報告書はそれぞれの個性に合わせて細かく診断いたしますので、社員一人一人に合ったキャリアコース
を設計する事ができます。例えば、マネジメントが苦手で自分の得意分野を専門に追求したいといった、
人材には、専門職としてのキャリアを勧めます。
なお、活用場面、実施対象、活用の目的、測定領域など、詳細は次をクリックしてください。
「管理職適性(HCi-OPCS)紹介ページ」はこちらへ
「管理職適性(HCi-OPCS)特集ページ」も合せてご覧ください
マネジメント人材育成のまとめ
私ごとになりますが、35年前、家庭用製品でトップシェアのK社の設備更新プロジェクトにエンジニアとして参加しました。
担当者から「当社は、単純なスクラップ・アンド・ビルドはやらない。20年先30年先を見据えた革新的な設備を提案するよう
に。コストは二番目。」との話し、コストは二番目に驚いたものです。
その担当者から、トップの変革への強い意志と会社を挙げてビジョンを共有している姿に驚いたのです。
この会社は、成長すると実感しました。
今では、日本で洗剤部門で1位、化粧品で2位、世界でも7位の企業に成長しています。
マネジメントとは何か?
また、リーダーとマネージャーは似て非なるもので、求められる役割や能力は異なることを述べてきました。
生産性の高い組織を作るには、優秀なマネージャーが不可欠です。
少しでも読者のお役に立てたら幸甚です。
(2020/4/6 株式会社ヒューマンキャピタル研究所 顧問 松田繁雄)