社員のメンタル不調、
どう防ぐ?

適性検査でできる
「予防」と「気づき」

■はじめに 企業におけるメンタルヘルスの重要性

現代のビジネス環境において、社員のメンタルヘルス対策は経営課題のひとつとして急浮上しています。リモートワークの拡大や人間関係の希薄化、成果主義の強化など、職場環境は大きく変化し、個人にかかる心理的負担は年々増しています。

こうしたなかで、社員のメンタル不調による休職や離職、業務パフォーマンスの低下が企業に与える影響も深刻化。組織の生産性を左右する問題として、企業の人事部門や経営層が「心のケア」への取り組みを強化しています。

しかし、メンタルヘルスの問題は表面化しにくく、対策が後手になりやすいのが実情です。そこで注目されているのが、適性検査を活用した事前のリスク把握と予防的な対処です。

■日本におけるメンタルヘルスの現状

まずは、公的データに基づいた日本の労働者のメンタルヘルスの現状を確認してみましょう。

厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタル不調で1か月以上の休業をした社員がいた企業は10.2%、退職者がいた企業は6.2%という結果が出ています。いずれかに該当する企業は12.8%にのぼり、7~8社に1社は1年以内に深刻な状況を経験していることになります。
同調査では、労働者の68.3%が「仕事に強い不安・悩み・ストレスを感じている」といった調査結果もあり、職場で働く10人中およそ7人が、何らかのストレスに日常的にさらされていることを示しています。

こうした背景から、精神障害による労災も増加傾向にあります。厚生労働省の「令和6年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1055件と、いずれも過去最多となっており、今後の増加が懸念されています。

このような状況を踏まえると、企業規模や業種を問わず、メンタルヘルス不調への予防的な対策が不可欠であることがわかります。

■メンタルヘルス不調の兆候はなぜ見抜けないのか

メンタル不調は、本人の自覚がないまま進行するケースも多く、職場の上司や同僚が早期に気づくことは簡単ではありません。
たとえば、以下のような兆候があったとしても、それが一時的なものなのか、継続的なストレスによるものなのかは判断が難しい場合があります。

  • 業務スピードが落ちている
  • 口数が少なくなった
  • ミスが増えている
  • 朝の出勤が遅れがち
  • 人との接触を避けるようになった

また、組織内の人間関係や業務とのミスマッチによるストレスは、外からは見えにくく、対応が遅れやすい傾向があります。
このように、表面的な行動だけではメンタルリスクの兆候をつかみにくいことが、組織としての早期対応を難しくしているのです。

■適性検査によるメンタルヘルスリスクの可視化

そこで近年注目されているのが、適性検査を通じてメンタルヘルスの傾向を採用前に把握するというアプローチです。
たとえば、以下のような項目に着目した適性検査を導入することで、ストレスへの反応傾向や精神的な安定性、対人ストレスの抱えやすさなどを可視化できます。

  • ストレス耐性の強弱
  • 感情の起伏や安定性
  • 対人関係での緊張度合い

こうしたデータをもとにすれば、たとえば「この人はマルチタスクや変化の激しい業務において高いストレスを感じやすい」「一人で抱え込みやすく、SOSを出しにくい傾向がある」など、個々の社員に合った対応や配置の検討が可能になります。

■活用事例 適性検査を使った企業のメンタルヘルス対策

ここで、実際に適性検査HCi-ASをメンタルヘルス対策に活用している企業の事例をご紹介します。

事例①:入社前にストレス耐性を確認し、配属先を調整

ある中堅企業では、新卒社員のストレス耐性や対人関係の傾向を検査で把握し、初期配属先の職場風土や上司との相性を考慮して配置するようにしています。その結果、入社後1年以内の離職率が大きく改善されました。

事例②:採用段階でメンタルリスクの高い候補者を見極め、トラブルを予防

ある企業では、採用時の適性検査でストレス耐性が低く、感情の不安定さが見られる応募者に対し、選考段階で慎重な判断を行う運用をしています。過去のメンタルヘルス不調による問題をふまえた対応で、入社後のトラブル件数が減少しました。
※適性検査はあくまでも選考を補完する一指標として、他の情報とあわせて総合的に判断されています。

事例③:適性結果を活用して定期面談を実施

別の企業では、適性検査の結果をもとにした定期的な面談を実施。ストレスを抱えやすい社員には、上司との1on1ミーティングを増やす、業務配分を見直すなどのサポートを行っています。

このように、単に採用の可否を判断するだけでなく、入社後の支援・配置・育成にまで活用できるのが適性検査の強みです。

■まとめ 人事ができるメンタルヘルス対策の第一歩

メンタルヘルスの問題は、業務パフォーマンスや職場環境に深刻な影響を与える一方で、見えにくく、対応が後手に回りやすいという特徴があります。
しかし、適性検査を活用することで、その人の性格特徴やストレス耐性をあらかじめ把握し、予防的にアプローチすることが可能となります。これは人事にとって、メンタル不調による離職やパフォーマンス低下を防ぐための「見えないリスクへの備え」とも言えるでしょう。
社員一人ひとりの特性を理解し、対話の材料として適性結果を活用することで、信頼関係の構築や適材適所の実現にもつながります。
今後、ますます重視されるメンタルヘルス対策において、適性検査は有効なツールとなるのではないでしょうか。

参考資料リンク

面接で見えにくい性格特徴やストレス耐性をわかりやすく可視化
採用の失敗を防ぐ! 適性検査HCi-AS