第20回 『ボーナス後』の退職を防ぐ組織戦略

〜MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)で読み解く最適な人員配置〜

ボーナス後は人材が動く季節

日系企業のほとんどが12月末までにAWS(年間賃金補助)と業績連動賞与を支給しました。支給額は企業の業績によりますが、ボーナス受領後のこの時期は、転職先を探す行動を起こす従業員も少なからず出るタイミングでもあります。採用関連も、例年11月から12月にかけてはボーナス支給前のため募集広告を出しても流動性が低く、候補者がなかなか集まりません。

一方、2~3月は転職希望者が増加し、人材の流動性が高い時期となります。

従業員に転職をされないためには、もちろん賃金やその他ベネフィットも大切ですが、退職理由として「組織」の中での「人間関係」が多くあげられます。

人間関係のストレスと離職の関係

特にシンガポールでは、少子化により兄弟姉妹がいないことから兄弟喧嘩をする機会も少なく、両親や共働きをしている夫婦の場合、祖父母に甘やかされて育てられていることもあり、「人間関係」のストレス耐性が弱い傾向があります。その結果、上司から仕事のミスを怒られたり、シンガポールでは一番タブーとされている、他の社員の前で強く叱責されると心が折れ、退職に繋がることもあります。

組織行動学(Organizational Behavior)の視点

欧米では「組織行動学」という学問分野があり、組織内で働く従業員の行動や心理を体系的に理解し、職場内での生産性向上や組織力強化に活用するというものがあります。
一方で、日系企業の良いところでも悪いところでもありますが、

  • 「言いからやれ」
  • 「言わなくてもわかるだろ」

と言った、生産性より量的に仕事をこなす文化が残っている場合があります。
それが逆にストレスとなり、

  • 質問するのが怖い
  • 無意味な残業を強いられる
  • 心理的負担に繋がり

ストレス耐性が弱い分、退職に繋がりやすくなり、代替採用に「採用コスト」や採用後の「教育コスト」さらには、「時間的損失」という経営リスクに直結します。

MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)とは

組織行動学に基づき従業員の組織内の役割をチェックする簡単な手法の一つとして、スイスの心理学者カール・ユング理論をもとに開発された「MBTI」(Myers-Briggs Type Indicator)があります。近年では採用や人材配置の参考資料としてチェックする企業が増えています。

「MBTI」は下記の4つの指標からの組み合わせで16種類の性格のタイプ(傾向)に分類します。

  • E / I
    ・E:Extraversion(外向)
    ・I:Introversion(内向)
    → 興味やエネルギーの方向性
  • S / N
    ・S:Sensing(感覚)
    ・N:Intuition(直観)
    → 情報の捉え方
  • T / F
    ・T:Thinking(思考)
    ・F:Feeling(感情)
    → 意思決定の仕方
  • J / P
    ・J:Judging(判断)
    ・P:Perceiving(知覚)
    → 外界への接し方

タイプの違いは「衝突」か「戦力」か

ちなみに筆者のタイプはESTP(外向・感覚・思考・知覚)で「究極の現実主義者」です。過去や未来よりも「今」に意識を向けるとのことで、自身としても納得しています。

T(思考)が強いため、物事を論理で判断しがちですが、F(感情)が強い社員とは意見が衝突することもあります。
しかし、「違い」があるからこそ逆に相互補完・刺激となり会社の第一目標である「利益構築」に繋がります。
例えば、

  • ENFP(外向・直観・感情・知覚)
    このタイプの社員は対人感受性が高く、営業や渉外業務に適性を発揮します。
  • ISTJ(内向・感覚・思考・判断)
    このタイプの社員は分析力・管理能力に優れ、経理・内部統制向きです。

個性の補完関係を意識することで、「個性」は組織力に変わります。

適材適所が離職を防ぐ

自分の性格を論理的に理解することで、他者の性格を尊重することもできます。孫子の「己を知り、敵を知れば百選危うからず」という格言があるように、組織を率いる立場の人は、

  • まずは自分の特性を理解する
  • 次に、部下の特性を把握する

そのうえで、

  • 内向型(Introversion)は分析業務へ
  • 外向型(Extraversion)は対人業務へ
  • 思考型(Thinking)は戦略判断へ
  • 感情型(Feeling)は調整役へ

それぞれのパーソナルタイプで適「財」適「職」を見つけることが重要です。

ボーナス後の退職を減らすために

性格の違いは対立の原因にもなります。一方、お互いの性格の違いを理解し、尊重し、役割を最適化し潤沢な組織運営を行うことができれば、「ボーナスを貰ってすぐ退職」という行動は確実に減らせます。

人員配置は「感覚」ではなく「理論」で考える時代です。MBTIはその第一歩となる有効なツールと言えるでしょう。