7.評価制度(3)目標管理制度

はじめに

 目標管理制度とは、所定の期間(一般的には6か月あるいは12ヶ月)の期首に各社員が複数の業務に係る達成目標を設定し、期末にそれら達成目標の達成度を評価する制度です。年度業績評価とは異なり、目標達成度すなわち成果を中心に評価するものです。評価はパーセントで測定し、評価項目の合計値が設定水準を満たせば100%となり、水準を超えれば100%超又、水準を下回れば100%未満となります。本制度は、直接的には賞与の支給基準に使用され、又間接的に年度末の総合業績評価にも使用されます。

 目標管理評価表(営業職用及び管理部門職用)の例をここに添付します。

【目標管理評価表ダウンロード】

1.なぜ目標管理制度が必要か

 目標管理制度の重要性は全社の業務計画(方針や計画)が部門計画等に落と込まれ、以下同様に末端の社員に至るまで、全社の方針・計画が何らかの形で、各社員の目標に組み入れられることです。年度ごとに作成される全社の業務計画の一部が、各社員の達成目標に含まれることにより、会社から見て全社の業務計画が達成される可能性を高めることができ、又社員は自分の目標が会社、あるいは自部門の目標と一致することにより、会社と社員の一体感の強化に役立ちます。全社計画を持たない場合は、所属部門の計画を使用します。

2.目標管理評価の目的

 総合業績評価は昇級、昇格、昇給の基準となりますが、目標管理評価は第一に賞与支給基準となります。
又目標管理評価の結果は次期以降の社員の育成に繋げることができます。目標項目の重要な未達部分は翌期以降の目標項目として設定することが出来ます。目標管理制度は成果の測定と同時にそれと同じ位重要な人材育成に役立てるための制度です。

3.目標設定の仕方

 目標の設定は以下の要領によります。前述の通り、全社の方針や計画が部門計画等に落し込まれ、以下同様に末端の社員に至るまで、全社の方針・計画が何らかの形で、各社員の目標に組み入れられることが重要です。

  • ①部門長・部長の目標設定
    全社方針・計画を部門方針・計画に落し込みます。その計画等に沿って部門長・部長が目標を設定します。
  • ②部長・課長の目標設定
    部門方針・計画を部課の方針・計画に落し込みます。その計画及び上司の目標等に沿って部長・課長が目標を設定します。
  • ③課長未満の社員の目標設定
    課長未満の社員は上司の部長ないし課長の目標の一部をより詳細・現場レベルの目標に具体化して設定します。
  • ④目標には容易にできる項目は含めません。逆に到底実施不可能な内容も含めません。
  • ⑤特定の職種や部門で共通な目標を設定する事は可能です。
    例えば営業部門員には共通に、売上金額(数量)、粗利利益金額(利益率)などを設定し、残りの項目を個人固有の目標とすることができます。
  • ⑥目標項目は上司から提案しても部下から提案しても良いですが両者で合意する必要があります。社員が所属する部門や課の計画は上司の方が良く知っている場合が多いので、主要目標項目の設定には上司が積極的に関与する必要があります。

4.目標項目例

 企業で使用される目標項目例を以下に表示します。

  • ①営業・販売系
    売上高、売上数量、粗利益、粗利益率、対前年度売り上げ増加率、販売戦略、価格戦略、市場シェアー、販売費予算管理、苦情・クレーム件数削減率、1件当たり訪問時間の短縮等
  • ②生産系
    生産数量、不良品率の低下、標準生産時間の短縮、原価低減、原料歩留まり率の向上、工程管理の改善、新機械装置のスムースな導入、具体的なQC活動テーマの実施等
  • ③購買系
    購買価格の低減、在庫額(量)の削減、在庫回転率の向上、新規受発注システムの導入と安定的な操業、より効率的且つ低価格の代替製品(材料)の開拓、受け入れ制度の改善等
  • ④研究開発・製品開発系
    新製品開発数、試作品製作数、試験販売数、特定商品の市場調査、内製か外注化の分析調査、新製品開発日数の短縮、各種情報収集等
  • ⑤経理・財務系
    月次及び年次決算日数の短縮、予実決算分析日数の短縮、各種利益率の改善、流動比率関連指標の改善、売り上げ債権回収日数の短縮、支払い金利の削減、借入金額の削減等
  • ⑥人事・総務系
    新人事制度の導入、一人当たり採用費の低減、採用形態の多様化、新退職金制度の創設、コスト・パーフォーマンス改善のための福利厚生項目の見直し、階層別/職能別教育の充実、自己啓発援助制度の設置、旅費交通費の削減等
  • ⑦IT系
    在宅ワーク推進ソフトの導入、部門別データベースの創設、個別業務用ソフトの開発、システム維持費の削減、システムダウン回数の削減、ユーザーからのクレーム数の削減等

5.目標設定に付随する不可欠な要素

 個々の目標項目には、項目(何を)、達成基準(どの程度)、達成手段・方法(どのように)及び達成時期(いつまでに)等を出来る限り具体的に明記する必要があります。

6.目標数

 目標数は業績に係る項目で3-5程度、プロセス項目で2-3程度、合計では5-8程度が適正だと思います。多すぎると各項目の重み付けが小さくなり、成果が項目間で埋没してしまうことになりますし、逆に少なすぎると少数の項目にその期の成果を掛けることになり、達成リスクが高まります。

7.目標管理評価表の主要項目

 目標管理評価表は各々の会社で様々な形式で使用されていますが、添付資料-1に示しましたように、その主要項目は2つです。

(1)大項目分類及び目標項目例

  • ①業績・成果・改善・革新等にかかわる目標
    主たる業務の成果に直接結びつくような項目で、営業職なら売上額、利益率など、製造職なら歩留まり率や不良品率等、管理部門職なら月次決算期間の短縮、新しい勤怠システムの導入・移行、新人事データシステムの導入等です。
  • ②プロセス成果・自己啓発等にかかわる目標
    主たる業務の成果達成に間接的に貢献するような項目で、営業職なら新規販売ルートの開拓等、製造職なら新規導入機械の安定的操業化等、管理部門職なら諸申請書類の統合・削減等です。自己啓発項目は各職種で共通な項目も多いと思います。

(2)重み付け

目標項目には重みづけが必要です。各項目の重み付けは5-30%を目途とし、5%未満は目標項目として小さすぎるので避けます。逆に1項目で30%超は社員が特定の期間、特定の大プロジェクト等に専念する場合以外には適当ではありません。重みづけには上司が助言することが必要です。何故なら、上司は自分が責任を持つ部や課の業務計画を達成するために、どの項目に優先順位を付けるかを知っているからです。一般的に社員は重み付けの高い項目を達成しようとしますので、この点で会社の希望と社員の希望が一致します。

(3)難易度

目標項目には自ずと難易度に差異があります。元々容易に達成できる項目は含みませんので、通常の項目は1.0、難易度の高くなるにつれて1.1,1.2 などとします。1.0未満はありませんが、難易度が非常に高い項目も通常は設定しませんので、1.1-1.3位が標準かと思います。難易度はすべての会社で設定の必要はありませんので、目標管理評価表例では省きました。

8.評価を通じての人材育成

 評価結果を必ず人材育成につなげるために、目標管理評価項目の設定とは別に人材育成を目的とした育成プランを作成します。

  • ①育成プランは部下と共に作成します。
  • ②プランは理想的には、短期(1年)と中期(3年位)プランを作成するのが望ましいです。
  • ③プランの作成には、できるだけ部下の希望を取り入れますが、部下の言いなりにはなってはいけません。
  • ④1年に最低1回の中間レビューを実施し、項目が妥当か、評価の尺度や達成期間が妥当か等、当初設定したものと変わっていないかをチエッ
    クします(変わっている場合は適宜修正します)。
  • ⑤配置転換、OJT(業務を通じてのトレーニング),OffJT(業務外のトレーニング、研修等)、自己啓発等最適な項目を選択し、被評価者に対して可能な限り、経済的(費用会社負担)及び、時間的な配慮を行います。

9.総合業績評価制度とのリンク

 目標管理制度で行った評価の結果は単独では、賞与支給の基準として使用しますが、同時にそれを総合業績評価の業績評価欄に転記することによって、総合業績評価制度とのリンクが出来ます。これにより、業績(成果)評価を総合業績評価時に単独で行う必要がなくなり、評価実施の簡素化を達成できます。以下に具体的にその方法を説明します。
業績評価は1-5の5段階評価で得点は通常最低20(1X20)点から最高100(5X20)点ですが、目標管理はパーセント評価で評価得点は0以上で100%を超えることも可能です。従って目標管理のパーセントで評価された数値を5段階評価に換算する必要があります。その換算例を管理職用及び一般職用に分けて示します。役割の大きさや責任の重さを考慮に入れて両者に差を設けています。

目標管理パーセント評価結果の総合業績評価1-5段階への換算基準例

総合業績評価に使用される5段階評価 目標管理パーセント評価結果(管理職) 目標管理パーセント評価結果(一般職)
S 110%以上 105%以上
A 100%以上 100%以上
B 90%以上 85%以上
C 80%以上 75%以上
D 79%以下 74%以下